日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア17

お題「マイブーム」

f:id:oyayubiSAN:20190430231423p:plain

 

「ふっ……」

 

 

 ベルンは鼻で笑う。

 

「あなたが不老不死になったって、どうでもいい。僕の目的は歯車を回収することです」

 

「そうか」

 

 途端にバンの表情が曇り、大きなため息。

 

「僕様が気に食わないことその九。それは恩返しのできない人間だ。残念だがベルンくんは、僕様の気に食わない人間だったようだね」

 

 バンはカバンから鈍く黒光りする拳銃を取り出し、バレッタへと銃口を向けた。

 

「きみたち、その靴に触れるなよ。もし触れれば、この中学生の命はない」

 

「お前、さっきからホントにぶっ壊れてるな」

 

 あえてバンを挑発した。

 

それにはマセルの作戦があったからだ。

 

「なんだ? 無様に変身を解除したトレジャーハンター」

 

「不老不死になっていい気になってるかもしれんが、お前は所詮その程度なんだよ」

 

 バレッタがごくりとツバを飲み込む。

 

「マセルさん、あんまり挑発しないほうが……」

 

「いいや、こいつにバレッタは撃てない。そうだよな、盗賊」

 

 バンは答えず、バレッタ銃口を向けたまま撃鉄を起こした。

 

 表情は変わらない。

撃つ以外の選択肢はない。

 

「まずは俺から撃つか? トレジャーハンターが嫌いなんだろ? 撃てよ」

 

「ききき、貴様……」

「撃てよ!」

 

 ――銃声。

 引き金が引き絞られた直後、銃口から無骨な弾丸が射出され、銃口から煙が上った。

しかし、鉛玉の到達点はバレッタでもマセルでもない。

 

 マセルが挑発してバンが目を離した隙に、ベルンはアスンシオンに変身していた。

 

 銃を叩き落として、腕を捻りあげて地に伏せた。

不老不死でも圧倒的な力には敵わない。

 

「僕が気に食わないんでしょう? 奇遇ですね。僕もずっと気に食わなかったんです」

 

「ふ、はははは! 気に食わなくて結構だよ。でもね、きみたちはもうすぐ海の藻屑となる」

 

 ベオグラード遺跡全体が、小刻みに揺れ始めた。

 

 地震

 

 バン以外の全員が同じことを思う。

 

 次第に地震は大きくなり、天井から石の破片が崩れ落ちてくる。

 

「残念だったなぁ! 不老不死じゃないきみたちは、みんなここでお終いだ!」

 

「マズい! 逃げるぞみんな!」

 

 マセルはウイントフックに変身。

すぐにバレッタとソフィアの両手を掴む。

 

「マセルさん! どうするんですか!?」

 

「どうするって、遺跡の外に逃げるしかないだろ!」

 

「だから、どうやって外に出るんですかぁぁ!」

 

「走りながら考える!」

 

 急いで下ってきた階段をかけ上がる。

 

 盗賊のことはベルンがなんとかするだろう、と心配していなかったマセルだったが、ベルンたちはまだ逃げる準備すらしていなかった。

 

「おいなにやってんだ! 逃げないと遺跡に潰されるぞ!」

 

 しかしバンの耳には届かない。

 なぜなら、バンが胸を押さえてもがき苦しんでいたからだ。

 

「なぜだぁ……僕様は、不老不死……この程度のことでは……痛みなど……」

 

 呼吸が浅くなり、やがて地震のせいでバランスを崩して地面に倒れ伏した。次第に不老不死であるはずの肉体が、死に近づいてゆく。

 

 そんな苦しむバンなど気にもせず、ベルンは袋を拾って歯車の側へ走った。

まだバンが触れていないほうの、もう一つの歯車へ。

 

「これがあれば、アピアを助けられる……!」

 

 ソウル病など気にせず、立派に二十歳まで成長できる。

そのために、わざわざベオグラード遺跡などに来た。

 

 地震で崩壊寸前だろうとも、ここで引くわけにはいかない。

 

 だが歯車を袋に入れようとしたベルンは、ふとバンの異常に気付く。

 

 不老不死の輝きは失せ、代わりに命を失った静寂だけが残っている。

 

 ベルンは悟る。

おそらくバンの命は歯車に吸い尽くされ、不老不死の歯車など噂だけで、本当は命を吸う歯車なのだと。

 

「まさか……ニセモノ……? 

 

不老不死の歯車なんか、最初からなかったって言うのか?」

 

 それでも諦めきれず、歯車を確認する。

 

 もしかしたら、もう一つの残ったほうは本物かもしれない。

 

 もしかしたら、バンが欲望に塗(まみ)れていたから歯車が拒絶したのかもしれない。

 

 そんな期待もあり、ベルンは歯車に手を伸ばす。

 

「ダメだ!」

 

 叫んだのはマセル。

 

 これ以上遺跡に残りガレキの下敷きにされれば、靴があっても厳しい状況だ。

 

「そんなものはお宝でもなんでもない! お前も早く逃げろ!」

 

 その忠告が届いたのか否か定かではなかったが、マセルは一気に階段を駆け上がる。

 

 途中で天井から小さな石が落ちたがマセルが全て払いのける。

いつ潰されるかハラハラしながらも、なんとかベルンと戦った場所まで戻ることができた。

 

 が、問題はそこからだ。

 

「どうするんですかマセルさん!」

 

 バレッタがマセルにしがみつきながら叫ぶ。

 

「どうするって! 最初から出口なんてわかるもんか!」

 

 難攻不落のベオグラード遺跡のアタックがあまりにも無計画だったため、バレッタは「二度とあなたにはついていきません!」と声高々に宣言する。

 

 しかしそれはここで生き残れればの話だ。

ウイントフックの脚力でも落ちてきたところへは戻れそうもない。

都合よく道が歪んで出口まで案内されることもない。

 

「あっ! あれ!」

 

 ソフィアが壁の一方を指さした。

釣られて二人が見る。

 

「おいおいおいおいおいマジかよ!」

 

 壁にマンホールほどの穴が開いたと思いきや、チーズのように同じ穴が連続で開いていった。

それだけならまだしも穴からは海水が流れ込み、階段の下は洪水状態だ。

 

 すぐに階段の半分は水でいっぱいになり、どこにも移動はできない。

 

 絶体絶命という言葉がお似合いな状況に、バレッタの我慢は限界を超えた。

 

「マセルさん! なにが帰り道は後で探す、ですか! これのどこに帰り道があるっていうんですかバカぁぁぁああ! この無計画ぅぅぅ!」

 

「待て! こういうのは賭けだ!」

 

「さっきからずっと賭けじゃないですか! ギャンブラーにでもなればいいんですよ!」

 

 マセルはそれに答えず、メットの左にある歯車を外した。

 

 右は剣が収納されていたが、左にはなにがあるのかまだ誰も知らない。

 

「マセルさん? それが脱出のカギ、なんですか?」

 

「それは分からん!」

 

 キッパリと言い切り、とりあえず歯車を思い切り振ってみることにした。

 

 すると――。

 

 歯車から、先にフックのついた細いワイヤーが飛び出した。

 

「これだ!」

 

 クモの糸のように伸び、岩があればどこかに引っかけてよじ登るのも不可能ではない。

 

 のだが、

 

「マセルさん! それで引っかけたって外に出れないじゃないですか!」

 

 数は三人。

人数的にも無理はあり、外に出たとしてもけっきょくは海の中である。

 

 ワイヤーよりも、むしろ浮き輪の方が役立つ状況だった。

 

「オーライ、マジかよ」

 

 ワイヤー作戦は諦め、マセルはいっそのこと開き直ることにした。

 

「壁には穴が開いている。そして水が出ている。そして俺はカナヅチ」

 

「えっと、つまり?」

 

「ここに来たときもそうだったろう? ウイントフックがあれば流されてもなんとかなる」

 

「じゃあウイントフックがない私とソフィアちゃんはどうすればいいんですか!」

 

 ウイントフックがあっても、バレッタたちを抱えて海の中を流されて地上に戻るのは無謀以外のなんでもない。

 

 しかも、現在ベオグラード遺跡のマセルたちがいるエリアはすでに海の奥深く。

カナヅチが上に上がるのは厳しい。

 

 しかし、ここである助けがやってきた。

 

「僕がいます」

 

 階段を上ってきたのはベルンだった。

その手には、歯車もバンもいない。

 

「僕が一人を抱えます。僕は泳げますけど」

 

「本当か!」

 

「それでも、地上まで行くのはかなり厳しいと思います」

 

「でもこうなったら、イチかバチか行くしかないだろ!」

 

 マセルはバレッタを抱え、肩に乗せた。

前方にお尻が向き、かなり恥ずかしい体勢である。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「行くぞバレッタ!」

 

 ベルンも同じようにソフィアを抱えようと右手を出した。

 

 時間がないので急がねばならないが――。

 

「右手……は、ダメ」

 

「え?」

 

 ソフィアは差し出された右手を拒んだ。

だがソフィアを抱えて飛び込まねば、海にかき回されて溺れる可能性は跳ね上がる。

というより、まず無理だろう。

 

「左手じゃなきゃ、私は行かない」

 

「どういう意味だ?」

 

 アスンシオンの力があれば、ソフィアくらいの小柄は右でも左でも大して変わりないだろう。

 

 だが、文句も贅沢も言う暇がない。

モタモタと無駄に時間を浪費していれば、それだけ助かる見込みは下がる。

 

「分かった。じゃあ左手で」

 

 左手の脇に挟むような形でソフィアを抱える。

 

 ここから先はまさに大冒険――四人は体全体に空気を取り込み、バケモノのような海の中へ飛び込んでいった。

 

 

 

 ブロトピ:ブログ更新通知をどうぞ!ブロトピ:今日のブログ更新ブロトピ:ブログ更新しました!ブロトピ:ブログ更新しましたブロトピ:ブログ更新通知ブロトピ:今日の芸術・人文情報