日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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目が腐る小ネタと4コママンガを土日。ゲーム実況を月火。小説を水曜に更新!

敵意ー第19話 双肩銃ミスティ・ミラージュ マナビヤ特攻人

 

 ポン子に要件を伝え、俺はフィールドAにやってきた。

午前中ということもあって人は多い。

こんな時間に学校も会社もサボってゲームしてる俺みたいなのが多いっていうのは問題だろう。

 

 今はトレドたちもいない、完全に一人の状態。

でもゲームらしいことはする気なくて、ただぼうっとゲームに浸りたいだけだった。

 

「よう、友よ」

 

 後ろから肩を叩かれた。

見覚えのあるやつだと思ったら、例のスライムマンだった。

 

 今は誰にも会いたくなかった。

特にスライムマンは嫌だ。

 

 でも話し相手が欲しいという気持ちも少しはあって、こんな質問をしてしまった。

 

「なぁ、ちょっと訊きたいんだが。お前さ、姫とかと知り合いじゃない?」

 

「な、な、ななな何を言う」

 

 スライムマンは妙にうろたえた。

まさかと思って訊いてみたけど、そのまさかなのか?

 

「どうした、その反応は」

 

「い、いや、知り合いなわけないだろう。あんな美しい姫君たちと知り合いだなんて」

 

「そういや、同級生の妹が家に泊まったとか言ってたな。まるで姫みたいだったって。もしかしてあれって本当に姫だったのか?」

 

「ば、バカな。そんなものはものの例えだ」

 

 妙な反応をするスライムマンだけど、こんなやつが姫の知り合いなわけない。

そう思いたい。

 

「そんなことより、勝負をしろ」

 

「そういや言ってたな、カティオスの剣を課金して買ったって。九万八千ポイントだっけか」

 

 その魔剣札束ブレードはスライムマンの背中にくっついていた。

俺は勝負などしないから、おそらく永遠に使われることはないだろう。

 

「悪いけどパスだ」

 

「な、なにか理由があるのか? 勝負をしたくない理由が」

 

「その一。まずお前は鬱陶しい。その二、俺は姫と繋がりがあるかもしれないデルフィについて考えたい」

 

「姫と繋がりがある、だと?」

 

 しまった。こいつに姫の話題はタブーだった。

あまりにも予想が繋がりすぎてつい口にしてしまったことを後悔する。

でももう遅い。

 

「いや、それは例えだ気にするな。それより俺は一人になりたい。あっち行ってくれ頼むから」

 

「く、しょうがないな。今日のところは退く。また今度にしよう」

 

「永遠に退いてろ。今度はない」

 

 高価な剣を背負った寂しげな背中を向け、スライムは去った。

 

 やっぱり意味もなくこんなところ来るもんじゃないな、と後悔しつつ、俺はメニュー画面を開いて戻ろうとした。

の、だが。

 

「ん?」

 

 フィールドAの端っこ、気になる名前が目に入った。

偶然か必然か分からないけど、そこには確かに探し求めていた名前があった。

 

 全身が銀色のパワードスーツのキャラクター。

その頭上には、確かにアルベロと書いてある。

 

 アルベロ――俺は無我夢中で走りだした。

作戦もなにもなく、ただ一心不乱に。

蜃気楼のようにも見えたアルベロの背中に、たどり着いた。

 

「お前、こんなところでなにしてやがる」

 

 背中に声をかける。

アルベロはゆっくりと振り向いた。

 

「お、誰だきみは」

 

 若い男の声。

電話だと加工されていて男かどうか判別できなかったけど、今回は普通だ。

でもこれはあくまでゲーム内のキャラだ。

現実とは異なる。

 

「誰だじゃねぇ。俺は、お前が殺したあの子の友達だ」

 

「あの子、あぁデルフィ・ソルテアか。つまりきみは電話をかけたアトス・エオリアくんだね」

 

 アルベロはデルフィの携帯を見て俺の番号を知った。

だから名前を知っているのは当然だ。

 

「お前、なんでデルフィを殺した。ここで何やってやがる。どの面さげて呼吸してんだ、おい」

 

「どういうつもり、か」

 

「あいつが救急車で運ばれたあと、お前は電話をかけてきた。あれはなんだ」

 

「じゃあ逆に聞くけど、君の仲間が私のことを探っていたのはどういうことかな?」

 

 昨日のことだ。

それだって、俺にも訊きたいことはある。

 

「お前が殺人犯だからだ。デルフィが教えてくれたんだよ、アルベロっていうやつにやられたってな。だからお前を探すために仲間を集めた」

 

「くく……くくくくく……」

 

 アルベロは不気味に笑い出した。

ゲームキャラだし変身しているとはいえ、笑い方や動きから不気味さがにじみ出ている。

 

「な、なにがおかしい!?」

 

「殺した理由を教えろと、つまりそういうことだな」

 

当たりめぇだろ。なんで罪のないデルフィが殺されなきゃならなかったんだ。まだ高校生なんだぞ、どんな権利があって、お前なんかに……」

 

「じゃあ、勝負しようか」

 

「はぁ?」

 

「ここで勝負しよう。勝っても負けてもきみには理由を教えてやろう。私は遊びたいんだ。いいだろう? どうせヒマだろ?」

 

「ちっ……」

 

 喋り方、動き、声、どれもが腹立つ。

誰のせいで学校に行きたくなくなったと思ってるんだ。

 

 だがやらないわけにはいかない。

 

「さぁ、見せてくれよ、きみのミラージュ・コーティングを」

 

 すでにアルベロは変身している。

 

 俺は念じて、左の人差し指にダイヤの指輪を出現させた。

 

「ミラージュ……コーティング!」

 

 アルベロを殴りつけるように突き出した左腕はあっけなくキャッチされ、硬いメットを睨みつけながら、俺の体は俺じゃない体に変貌していく。

 

「威勢がいいねぇ。面白そうだ」

 

 目の前には“デュエルしますか?”のメッセージウィンドウ。俺は迷わず“はい”を選んだ。

 

 

 

 

 周囲を石が取り囲む遺跡のフィールドだ。

まるで数百年か数千年も時代が戻ったような雰囲気で、決闘するのに味がある場所だった

 

 ついに、アルベロとの決闘。

というより、まさか相手をこんな簡単に発見できるとは思わなかった。

ついに見つけた、という感じは微塵もない。

でもそんなことどうでもいい、俺はデルフィが死んだ理由を知りたい。

それなら、俺が死にそうな目にあったってかまわない。

 

 相手はレベル12。

対する俺はレベル10。

能力だけなら負けてるかもしれないけど、このゲームは能力だけじゃない。

 

 肩につけられた箱型のマシンガンを抜いて、アルベロに向けてがむしゃらな射撃をしながら特攻した。

作戦もへったくれもない。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

 アルベロとの距離は十数メートル。

適当に撃ったって弾がバラけてまともに命中しない。

命中したところでアルベロに対するダメージなんてたかがしれてる。

 

 接近して格闘に持ち込む。

直接この手で殴ってやらなくちゃ気がすまない。

着々と距離が詰まる。

その間にも何発か命中しているけど、おそらく意味はない。

 

「数を撃てば当たると思ったかい?」

 

 アルベロは大したダメージがないから余裕だ。

 

 腕を高々と上げ、魔法陣のようなものを三つ出した。

そこからひょっこりと槍が見切れててこちらに矛先が向けられている。

 

 あんなのものを見せられれば、これからあの槍がどう動くのか予想はつく。

 

「来るなら来いよ! アルベロ!」

 

 アルベロが腕を振ると、魔法陣から槍が射出された。

三つそれぞれが誤差のあるタイミングで撃ち出され、避ける隙を見失う。

 

 前方斜め上から一本――まずはこいつを――。

 

「あぶねぇ!」

 

 全身をバネにして飛ぶ。

真下の地面に槍がねじ込まれた。

もし飛んでいなければ串刺しは間違いない。

残り二本も左右斜め上から強襲する。

空中にいるいまの状況じゃ回避は無理だ。なら――。

 

 二本の槍に左右のマシンガンを向け、撃つ!

 バラついた弾丸たちがいくつか命中し、寸前で槍は爆散。

一本目を避けた勢いでアルベロへの特攻を続ける。

マシンガンを前方に構え、再び撃つ――だが、

 

 カチカチッという味気ない音が弾切れを知らせた。

武器に弾切れがあるなんて、そんな説明されたのか覚えてないけど、どちらにせよ役に立たない。

マシンガンは肩からチューブで繋がっているから、手を放せばメジャーみたいに勝手に戻る。

 

 こうなったら、やっぱり直接この拳で殴ってやるしかない。

 

 魔法陣から槍を出したところを見ると、相手は魔法タイプかなにかだ。

接近戦なら、どうせ大したことはないはずだ。

 

 このまま、行けるっ!

 

「さぁ来てくれよ、ここまで!」

 

 次にアルベロは腕を下に向けた。

地面から分厚い石壁が飛び出し、進行を阻む。

でもそんなものでは俺は止められやしない。

むしろ利用してやる――!

 

 あえて壁を避けずに一歩踏み出した。

トーストみたいに出てきた壁をトランポリン代わりにして、俺は空高く舞い上がった。

 

「おらぁぁぁぁぁ!」

 

 隕石のように落ちながら、アルベロ一点に向けて拳を向ける。

これで、終わりだ!

 

「うわっ!」

 

 アルベロから予想外な声が出た。

やつの銀色のメットに拳を叩き込み、そのまま地面にねじ伏せた。

俺が上、やつが下だ。

 

「アルベロ! いい加減に吐きやがれ! なぜデルフィをあんな目に!」

 

「答えてほしいか? じゃあ、こっちを先にプレゼントしよう」

 

 アルベロの右手が僅かに光った。

今度はどんな魔法を繰り出すのかと身構えたが、それらしいものはなかった。

代わりにアルベロの手には細身の剣が握られている。

 

「うぐっ!」

 

 アルベロはその場で瞬時に生成した剣を振り、俺のわき腹に命中させた。

もし現実世界で生身なら血だらけ間違いなしの一撃だ。

だが今は変身していて、これはゲーム。

多少の痛みはリアルに体感できるけど、血なんかは一滴も出やしない。

 

 衝撃で二、三メートルはふっ飛ばされ放り投げたエンピツみたいに転がった。

 

「どうしたどうした? 肩のそれは弾切れか?」

 

「お前を殴りたい気分になったんだよ」

 

「拳一つで立ち向かうのか、無謀だな」

 

 そうだ。

無謀だ。

拳一つだけで剣を握る相手に挑むなんて無謀にもほどがある。

でも今の俺には武器なんてない。

こんなことなら、安い剣の一本でも買っとくべきだった。

 

「さぁ行くよ、アトス・エオリアくん」

 

「うるせぇ……気安く呼ぶんじゃねぇ!」

 

 がむしゃらに正面突破で突っ込む。

これしかない。

 

「芸がない攻撃だ!」

 

 アルベロは余裕をかましながらの一撃を振る。

だが防いだところでふっ飛ばされる。

 

 めげずに地を蹴ってリベンジ。

それでも剣を持つ相手に接近できるわけもなく、再び拳を叩き込むこともできずふっ飛ばされた。

 

「どうしたアトス・エオリアくん。真実を知りたくないのかい?」

 

「黙れよ……これが現実なら、お前をズタズタに引き裂いてやりたいところだ」

 

 せめて言葉だけでも威勢を見せる。

アルベロには効果ないだろうけど。

 

 なにか、なにか武器さえあれば――!

 

「あ?」

 

 目の前にメッセージウィンドウが現れた。

 

『これを使え、ナスカ』

 

 メッセージの次には、石のような剣が出現した。

見たことがある。

これは、スライムマンの背中にあった高価な剣、九万八千ポイントの、失われしカティオスの剣だ。

 

 よく分からないけど、感謝する! スライマン・トウ!

 

 カティオスの剣を鷲掴みにして、スタートダッシュでアルベロと距離を詰める。

ターボエンジンみたいな爆発的スピードで加速して、今度こそアルベロに一発を叩き込んでやる。

 

「ほう、そんなものを隠し持ってたか! さぁ来い!」

 

「望むところだ!」

 

 弾かれたように剣を突き出しまくる。

アルベロの華麗なステップで回避され、まるで遊ばれているようで段々とムカっ腹が立ってきた。

 

「どうしたどうした。遅いぞ!」

 

「うるせぇ! うるせぇうるせぇうるせぇ!」

 

 力任せに剣を振り回す。

もうこれは戦いなんかじゃない、ただがむしゃらに暴れまわっているだけだ。

でもそれでいい。

一発でも叩き込んで、あの顔に傷を作れるのなら、少しでもデルフィのためにできるのなら、それでいい!

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

 気合のあまりムダに大きな一歩を踏み出して剣を振った。

俺の動きが予想外だったのか、アルベロのわき腹に、命中。

 

 剣は剣でも、高ポイントの強力な剣。

俺のレベル自体が低くたって、武器の強さがあればそれなりのダメージになるはずだ。

 

「アルベロぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 避けられないよう、チャンスの今、討つ!

 

 わき腹に叩き込まれた剣を、逃げられる前に押し込む。

出血しないのが俺にとって幸いだが、同時にデルフィと同じ目に合わせてやれないことに腹が立っていた。

 

 アルベロは剣を持つ俺の手を掴んで強引に引きはがそうとするけど、負けじと力を込めて黙らせる。

 

「き、貴様! どこでそんな強力な武器をぉぉぉ!」

 

 それがアルベロの最期の遠吠えになった。

 

 アルベロの体力は底をつき、俺に軍配が上がった。

これで、勝利だ。