日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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目が腐る小ネタと4コママンガを土日。ゲーム実況を月火。小説を水曜に更新!

不審ー第18話 双肩銃ミスティ・ミラージュ マナビヤ特攻人

 

「そういやお前、ソルテアがどうのこうのって言ってたな、でもデルフィってのも知らないし、そんな人物も俺には分からん」

 

「そう……」

 

「それがどうしたんだ?」

 

 私は母さんから聞いた情報をアルコにも伝えた。

 

 ミスティミラージュ・オンラインはゴレスターンの実験のためのゲームだということ。

これは正直、アルコに伝えてしまっていいものなのかと迷ったけど、アルコなら大丈夫だ。

 

 それと、デルフィ・ソルテアなる人物の年齢などなどと、ミスティミラージュ・オンラインの中で亡くなったという話。

デルフィ・ソルテアがセラードと無関係ではなさそうという話も。

 

「どう思うアルコ? それでも心当りはない?」

 

「分からんな。俺らも知らないってことは、きっとセラードが誰にも言わなかったことだろう」

 

「そ、そうだよね……」

 

 アルコが分からないのなら完全に手詰まりだ。

母さんに訊くのもイヤだし、セラードが母さんだけに教えているとも考えづらい。

 

 ただブローチにデルフィと書かれていたからブローチの名前なのかもしれないけど、それにしてもどうして同じ名前が、タイミングよく現れるんだろう。

 

「もしかしたら、ただの偶然かもな。セラードが考えた名前と、死んだ人間の名前が同じで、タイミングよく出てきたってだけかもしれん」

 

 その可能性もあるけど、姉としてそれは否定したい。

偶然だとしてもちょっと縁起が悪い。

 

「だが今は予想の範疇だ。心配なら、そのデルフィ・ソルテアって人の病院に行くか?」

 

「それもいいけど、でも今は作戦があるから」

 

「そうだな。片付いてからでもいいけど、あんまり遅いと葬式が始まっちまうかもしれん」

 

 確かにそれは近道だけど、セラードの残した文字だけを頼りに赤の他人を探るなんて、ちょっと失礼な気がする。

そういう強引な手もありかもしれないけど、死人に対しても礼儀はある。

 

「分かった。それは後で考えるよ。でも、それとは別にもう一つあるの」

 

「なんだ?」

 

「さっき食堂で、私のために泣いてくれていた人がいたけど……」

 

「あぁ。ブリッゲンのやつか。あいつは涙もろいし、何より人一倍メリダに敬意を評していた。男泣きってやつさ」

 

「私、嬉しかったの。母さんは私のことをどうでもいいって思ってたけど、あのブリッゲンって人は悲しんでくれた。悲しんでくれる人がいるって、凄く嬉しい」

 

「悲しんでるのはあいつだけじゃない。俺はメリダもセラードもいなくなったら悲しむ。今のお前はどっちも兼ね備えてるから安心だけどな」

 

「兼ね備えてるって」

 

「バニラとチョコのミックスみたいなもんさ。チワワとビーグルのミックスとも言えるか」

 

 きっと私はチョコレートでビーグルなんだろう。

セラードはバニラでチワワって感じだ。

 

「人ってよ、産まれたときは泣いてるもんさ。だから死んだ後くらいは、みんなに泣いてもらいたいよな」

 

「死んでから周囲の反応に気づくって、すごく皮肉だけど、死んだからこそ感じられることなんだよね。普通じゃ感じられない特別って感じがする」

 

「そうだな……」

 

 アルコの横顔には寂しさが混じっていた。

 

 そして、アルコはこんなことを口にする。

 

「俺も死んだら、誰か悲しんでくれるかな」

 

 あまりにもあっさりとした口調で、自然にそう言った。

だから私も自然に返す。

 

「私は悲しい。本当に」

 

「じゃあ、泣いてくれよ。枯れるくらいな」

 

 アルコはジンジャーエールを最後の一滴まで飲み干してから立ち上がった。

私の言葉のおかげか、寂しそうな顔はもうなかった。

 

「さて、休憩は終わりだ。お前はどうする?」

 

「特にやることがないなら、私はまだここにいる」

 

 母さんには会いたくなかったし、私が死んで悲しむ人たちも見たくなかった。

泣いてくれること自体は嬉しいけど、泣いている姿を見て幸せにはならないし。

 

「そういえば、ペルセポリスは大丈夫なの? 微弱な電波があるって言ってたから生存の確率はあると思うけど」

 

「まだ分からん。けど、捜索に行った連中もいる。きっと見つかるさ」

 

「……そっか」

 

「まぁ、くれぐれも飲みすぎるなよ」

 

「お酒じゃないんだから、大丈夫」

 

 アルコは大きな背を向けてバーを出た。

セラードの体のまま大人になったら、いつかアルコと一緒にお酒を飲みたい。

あと十年、か。

 

「セラード様、なんか食べますかい?」

 

 私たちの会話を聞かないよう配慮していたのか、離れていたマスターはこちらに顔を向けた。

 

 まだサンドイッチは残っている。

でもお腹は正直で、まだ食べ物を望んでいた。

 

「パフェ、出せますけど」

 

「そ、それください」

 

 瞬間的に反応してしまい、少しセラードらしくない言い方をしてしまった。

でもマスターは何も言わず頷き、カウンターの奥へ消えた。

 

 残ったサンドイッチを片付け、グレープジュースを飲み干した。

 

 パフェを待つ間、やっぱりデルフィ・ソルテアのことが頭から離れなかった。

 

 誰か、誰か知っている人はいないのだろうか。

 

 亡くなった人のことを家族に図々しく質問したくはないから、ちょっと知っている程度の知り合いでいい。

作戦にもシュトゥルーヴェとの戦いにも関係ないけど、セラードのためにもどうしても知りたい。

 

 誰かいないのかな、デルフィ・ソルテアのことをよく知っている友人とかは……。

 

 

 

           ――四日目 朝――

 

 

 

 今日は学校を休んだ。

トレド曰く、俺の他にミディとアニも学校に来ていないらしい。

昨日、ミディとアニがアルベロと戦闘した。

でもどれくらい戦闘してどうなったのかを知る前に、俺はデルフィの死を知ってゲームを抜けてしまった。

 

 朝から、トレドからのメールだ。

 

『アニとミディも来てない、お前も休むのか? どうしたんだ? 昨日はなにがあった?』

 

 二人が学校にいないということは、やっぱりゲームの中で何かあったんだろう。なんとか話を聞きたいけど、あいにく二人の家は知らない。

 

 いや、家なんか知らなくても問題ないじゃないか。

 

 ミディは声が出ないため電話はできない。

だからアニへ電話をかけた。

 

 数回の着信音の後、元気なさそうなミディの返事が来た。

 

『ええ? あんた、なに?』

 

「ミディか?」

 

『そりゃそうでしょ。私のなんだから』

 

 無事を確認できて安心した。デルフィと続けて死んでいたら、俺の心臓が止まるところだ。

 

『あんた、学校は?』

 

「いや……」

 

『そう……なんかさ。ぜんぜん行く気しない。もうあのゲームはやらない』

 

「お、おい、どうしたんだよ」

 

『昨日は大変だったんだから。ミディと一緒にアルベロと戦闘して……それで……』

 

「それで……?」

 

『ボコボコにやられた。大したレベルじゃなかったけど、なんか、凄い怖い戦い方するんだよ』

 

 精神をそのままにプレイしているから、心臓が弱い人はゲーム中にトラウマを抱える人もいるってポン子だかデュー子が説明してたな。

でもそんな危険なゲームで本当に大丈夫なのか。

まるで何かの実験みたいだ。

 

「こ、怖い戦い方って?」

 

『不気味なこと呟きながら、剣を目の前で寸止めしたりすんの。ミディなんて、もう耐えられなくて途中でやめちゃったくらいだし、私も……なんかもう嫌』

 

 実際にデルフィを殺害しているやつだ。

ゲームの中でも狡猾なことをしててもおかしくない。

肉体的に攻められないなら、精神的に追い詰めるってことか。

変態を通り越して異常だ。

 

「待ってくれよ。協力するって言ったじゃないか」

 

『ごめん。私もそうしたいけど、ちょっとアニと一緒に行くところがあるの』

 

「行くところ?」

 

『姫様のところだよ。メリダ・エーランド。知ってるでしょ、私の親父とミディのお兄さんって軍人だから、メリダ・エーランドとも繋がりがあるの。ちょっと訊きたいこともあるし』

 

 そうだ。

アニの父親とミディの兄は、ペルセポリスにも乗っていた軍人なんだ。生死も不明だし、無理させるわけにもいかない。

協力者を失うのは痛手だけど、どうにもならない。

 

『ごめん。頼ってくれたのに』

 

「いいよ。あとは俺らでなんとかする」

 

『ごめん』

 

「いいよ。じゃあ」

 

 と締めくくって電話を切ろうとしたとき、『待って』とアニに止められた。

 

「どうした?」

 

『あのアルベロってやつ、かなり危ないやつだから気を付けて。ゲームとはいえ、あいつは狂ってるよ。それだけ忠告しておく。じゃあね』

 

 アニから電話を切った。

おそらくもう、アニと会うことも電話することもないだろう。

でもそれでよかったのかもしれない。

二人をアルベロやデルフィの問題に関わらせないほうがいいんだ。

二人もアルベロに殺されたら、俺は償っても償いきれない。

 

 さて問題はここからだ。

デルフィが死んだ以上、返事を待つ必要はなくなった。

トレドは普通に学校。

アニとミディは戦線離脱。

俺には策はない。

 

 どうしたもんか。

 

 ……ここでダラダラしていても道は拓けない。

デルフィはもういないけど、俺はなぜデルフィが死ななきゃいけなかったのか解明したい。

犯人は誰で、いつ刺されて、どんな顔で最期を迎えたのか、俺はデルフィのことなんてほとんど知らないんだ。

 

 メリダ・エーランドなら、デルフィのこと分かるのかな。

いや、姫といえ全知全能の神じゃあるまいし、一人の市民のことなんて名前すら知らないはずだ。

 

 いや、待てよ。そうとも言い切れない。

 

 デルフィが刺されて駅で倒れてたとき、こんなことを言っていた。

 

「私、小さな部屋でマンガを読んでいる女の子を見た……近くにお姉さんみたいな人も……」

 

 あのときはデルフィを助けるために必死でいまいち考えてなかったけど、もしかしたらデルフィは姫のことをどこかで見ていたのかもしれない。

 

 メリダ・エーランドは十七歳で、十歳の妹がいる。

確か名前はセラードだ。

マンガを読んでいた小さな女の子がセラードだとすると、近くにいたお姉さんとはメリダということになる。

 

 それに小さな部屋と言っていた。

姫がマンガを読む小さな部屋と言ったら、娯楽室かなにかだと思う。姫が読みそうなマンガと言えば……貴族ものとか、王族もの、もしくは軍事ものか。

 

 ……軍事もの……デルフィと軍事もののマンガ……なにか引っかかる。

デルフィと交わしたマンガの話題と言えば……確か……。

 

 ゲーセンでシマウマとアルパカのぬいぐるみを取ったときのことだ。

あのマンガの名前、えらく長かった気がするけど……なんとかバッファロー

スマッシュってやつ……。

 

 答えが出なくてもどかしくなり、スマホに頼ることにした。

もし俺がもっと古い時代に産まれていたらここで手詰まりだっただろう。

 

 なんとなくそれっぽいワードを打ち込んで検索する。

 

 スマッシュ バッファロー シマウマ アルパカ マンガ……。

 

「おっ」

 

 ヒットした。

答えはウォータートン・グレイシャー原作の、ヘッドスマッシュ&イン・バッファロージャンプだ。

 

 デルフィがどうして姫姉妹のことを知っていてどこで見たのか定かではないけど、ここまで情報が収束したなら何かあるはずだ。

 

 でもデルフィはもういない。

それは揺るがない事実で覆せない真実だ。

答え合わせなんて永遠にできないだろうけど、答えに近づいている気がする。

 

 きっと、デルフィとセラードは繋がっている。

超常的ななにかかもしれない。

それでもいい。

まだ頭の中の話でしかないけど、一歩でも進めればそれでいい。

 

 さて……これからどうしよう。

今さら学校に行く気にもならないから、いっそ今日は休んでしまおう。

でもいざサボってみると何もやる気が起きない。

本当ならセラード・エーランドと連絡を取ってデルフィについて訊きたい気分だけど、俺みたいな庶民が姫と話せるわけもないし……アニとミディみたいに関係者に知り合いがいればいいんだけど。

 

 所詮、俺程度の力じゃ調べるなんてことできない。

ネット検索で解決することじゃないし。

 

「あーあ」

 

 やることもなかったから、俺はミスティミラージュ・オンラインを起動することにした。

なんとなくゲーム世界にいれば気が紛れると思ったし、情報も得られると思ったからだ。

 

 

 

 さっそくフィールドAに行こうと思ったけど、エントランスに行く前にやることがあったから、ポン子とデュー子を呼んだ。

 

「はいはい、呼んだ?」

 

 どこからかポン子が現れた。

相変わらず元気だけはある。

 

「ちょっと、頼みがあるんだが、デュー子はいないのか?」

 

「え? いないけど。データだけど休むときくらいあるよ」

 

 まるでOLだな。

 

「で、なに?」

 

「いや、重要なことでな。現実にも関わることだ」

 

「お?」