日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

目が腐る小ネタと4コママンガを土日。ゲーム実況を月火。小説を水曜に更新!

勝利の女神ー第15話 双肩銃ミスティ・ミラージュ マナビヤ特攻人

 

 そのプレイヤーがデルフィなら、それはつまり無事の報告になる。

これほどの吉報はない。

だが今はアニを待ってアルベロと会わなくてはならない。

それでも、デルフィを放っておくわけにもいかない。

少しでも情報が欲しい。

 

『デルフィはどこにいるんだ?』

 

『すぐ近くにいる。話しかけてみたんだが、返事がない』

 

『返事がない? デルフィが操作しているんじゃないのか?』

 

『そんなの知るかよ。本人じゃないことだってあるだろうし、ただ俺を無視してるだけかもしれないだろ。いいから早く来いよ。フィールドBだ』

 

『すまん。アニからメッセージがあった。アルベロを見つけたらしいが、返事がない。おそらくフィールドCにいると思うんだけど、見当たらない』

 

『マジか、いたのかよアルベロ』

 

 アルベロもデルフィも重要だ。

アニもデルフィもお互いに返事がないというのも気になる。

どうすればいいのか、どっちを優先すべきなんだろう。

 

 アニは一向に帰ってくる気配がない。

返事もないならデュエルの最中と考えてもいいだろうし、長くなるかもしれない……そうだ、電話だ。

きっとデルフィはログイン時のエラーかなにかで、キャラだけが残ったんだろう。

だとしたら、ログアウトした現実世界にいるはずだ。

 

『すまん、ちょっと出る』

 

 トレドにそれだけ伝え、念のためにアニにも送っておいた。

手術やらなにやらが終わったデルフィに電話をかけるため、俺はゲームの世界から外に出た。

ちょっと勝手だったかもしれないけど、デルフィの無事を確認する一番手っ取り早い方法だ。

 

 

 

 呼び出し音が鳴ること十回。

デルフィがそれに応じることはなかった。

病院だから携帯が使えないのかもしれない。

いや、ゲームの世界にキャラがいたってことはスマホを使用したということだ。

でも、ゲーム中なら電話に出ることはないか? いや、ゲームの中でも応答はなかったみたいだし、プレイ中じゃないのか……?

 

 ダメだ。

答え合わせができずに、どうにも焦ってしまう。

みんなはゲームの中だ。

そろそろ戻らないといけない。

しかしデルフィからの電話も待たないと。

このゲームの欠点はスマホを使えないという点だ。

ハイテクなゲームだからそういった問題はあるだろうけど、緊急事態とかに対応できないのは不便だ。

 

 仕方ない。

ゲームに戻るか。

なにか進展があるかもしれないし。

 

 俺は汗で濡れた手でスマホを握りしめ、再びゲームの世界へ戻った。

デルフィからの電話を密かに待ちながら。

 

 ゲームを再開してエントランスに戻ると、さっそくトレドからメッセージが届いていた。

 

『おい、デルフィが消えたぞ』

 

『デルフィが消えた? さっきまで目の前にいたのにか?』

 

『そうだ。いきなり消えた。たぶん、エラーかなんかが起きたから強制的に消えたんだろう』

 

 何も分かってないが、『分かった』とだけ返しておいた。

それよりも今は気になることがある。

 

 入口にいたポン・デュ・ガールズなら、デルフィのエラーについて説明してくれるかもしれない、と思ったのだ。

さっそくエントランスから戻り、例の二人を呼び出す。

 

「おい、どっちかいないのか?」

 

「はいはーい!」

 

 元気なポン子がどこからともなく現れた。

正直どちらでも構わないのだが。

 

「ちょっと訊きたいことがある」

 

「ご質問? どんな御用?」

 

「硬直したまま動かないキャラがいたんだ。声をかけてもダメでさ、エラーかなにかか?」

 

「さぁ。あまり個人の情報は教えられないんで」

 

 やっぱりプログラムだ。

頭は固い。

じゃあ質問を変えよう。

 

「最近、エラーはあったか?」

 

「ああ、そういえばさっき、一件だけエラー報告があったね」

 

 やっぱりそうか。

デルフィのあれはただのエラーだったんだ。

それなら運営側が軽くチェックすればすぐに直せるだろう。

 

「それ、訊いてもいいかな?」

 

「エラー報告に関しては直接私たちは取得できないので、ちょっと時間がかかるけど、いい?」

 

 ちょっとの時間くらいがなんだ。

俺はすぐに頷いた。

 

 しばらくポン子が情報を読み込み、数秒でまた動き出す。

 

「あれ、これ……かなり稀だなぁ、なんでこんな状態でゲームをやってるんだろう」

 

「どういう情報だ」

 

「いいの? プライバシーのために具体的に誰とは言えないんだけど」

 

 エラーといえばデルフィしかない。

そこはポン子もプログラムなのか、エラーが起きた一人イコール・デルフィという発想はないようだった。

 

「いいよ」

 

「死亡者が一名」

 

「死亡者……って、ゲームの中でやられたってことだよな?」

 

「いえ、ゲームをプレイ中にプレイヤ―自身が現実の世界で亡くなると起きるエラーだね」

 

「お、おい。どういうことだよ」

 

「死因に関しては情報がないし、プレイヤーに関しては話せないけど、とにかくゲームプレイ中に亡くなってるね」

 

「じゃ、じゃああの硬直したキャラは、プレイヤーが死んだってことかよ?」

 

「そういう特定の個人のことは教えられないなぁ」

 

「ええと、もしプレイ中にプレイヤーが死んだら、ゲームの中のキャラはどうなる?」

 

 俺は微妙に質問を変えた。

 

「ゲーム世界にキャラは残って、一切の操作も受け付けなくなるよ。精神は死んじゃってるから肉体に戻ることはないし、精神の意思がないから肉体に戻るぞっていう命令も出せなくなるよ。だからくれぐれも危篤状態でゲームはプレイしないほうがいいね」

 

 これで確定した。

デルフィは命からがらゲームをプレイして、プレイ中に死んだんだ。

 

 なんだろう。

ずっと気にしていたデルフィの安否を心配する必要がなくなったからなのか、急に力が抜けて来た。

なぜか分からないけど、今は安心している。

 

 そもそも友達の死なんてものが現実的じゃなかったんだ。

 

 デルフィが死んだからなんだ? 俺は無関係じゃないか。

デルフィ自身だって俺のことは気にしてなかっただろうし。

 

 自分の気持ちが制御できない。

急に悲しくなってきた。

どっちなんだろう。

悲しいのか安心しているのか、意味不明だ。

 

『ごめん。今日はやめる。また明日』

 

 三人にそれだけメッセージを残して、俺はゲームをやめた。

勝手な行動はみんなには迷惑だと分かっていたけど、今はどうしようもなく疲れた。

 

『おい、どうしたんだよ?』

 

 トレドからそんなメッセージが来た。

けれど俺はそれを無視してゲームの世界から出た。

 

 ―四日目 朝―

 

 気づいたらスマホを片手に眠って次の日に突入していた。

どうやらゲームをやめてからそのまま眠ってしまったらしい。

 

 トレドからの着信が十八件、メールも三つ。

一番古いものから順にメールを開いた。

 

『おい、返事しろ』

 

『アニとミディとアルベロはどうした?』

 

『なんか返事しろ』

 

 頭の半分が空っぽになってしまっていた。

それどころか世界の半分が消え去ってしまったような感覚だ。

頬を垂れた涙が乾いて変な感触がするし、汗も酷かった。

 

 適当に返事を返した。

学校で説明すれば大丈夫だろう。

 

 時間を見る。

すでに遅刻確定の時間だ。

学校に行く気力はあまりなかったけど、トレドたちを放ってはおけない。

ダルい頭を叩き起こし、億劫な身体のまま家を出た。

 

 道中、ムダとは分かりつつデルフィからの返事を確認した。

 

 ゼロ件。

 

 デルフィはもう死んだんだから当然だ。

この世にいないし、痛みを感じることも死の恐怖を感じることもない。

 

 電車が来たけれど俺は乗らなかった。

学校をサボってしまいたかったからだ。

けっきょく何もせず、俺は家に戻った。

制服を脱ぎ捨ててベッドに大の字になった。

 

 今日はなにもやる気がない。

食欲も眠気もない。

欲という欲がすっかり抜け落ちてしまった。

 

 スマホのランプが点滅した。

デルフィからの返事かと期待したけど、相手はトレドだった。

 

 届いたメールを開く。

歯車の回らない頭でそこに書いてある文章を読んだ。

 

『アニとミディも来てない、お前も休むのか? どうしたんだ? 昨日はなにがあった?』

 

 アニとミディも来ていない……? 昨日はアルベロを見つけたって言って、それきりだ。

まさか、二人はアルベロと何かあったのか? 俺が、勝手にゲームを抜けたあのときに、二人の身になにかがあったって言うのか……?

 

 

 ―三日目 朝―

 

 

 朝が来た。

 

 セラードの姿のまま、二日が経過している。

 

いつか効果が切れて私という精神そのものも死んでしまうのではないかと冷や冷やしたけど、精神も体も特に問題はない。

 

 億劫な身体でベッドから出た。

昨日、引き出しのノートから見つけたメモを握りしめながら眠っていたのか、紙はくしゃくしゃになっている。

 

 そういえば、なんだったんだろうあれ。

紙に書いてあった“ソルテア”という文字。

聞いたこともない。

誰かの名前か、セラードが勝手に考えた何かの名前か、どちらにせよそんな言葉は耳にしていない。

 

 分からない、と言えばペルセポリスが沈む前に娯楽室でセラードが「誰かに見られている」と言っていた。

もしかして、このソルテアなる人物――人物かどうかは定かではないが――と関係するのだろうか。

 

 コンコン。

 

 寝ぼけた頭を起こすように、扉がノックされた。

 

「はい」

 

メリダか? 俺だ、アルコだ」

 

 紙をポケットに入れた。

乱れた髪をなんとなく整えて扉を開いた。

 

「よーメリダ、よく寝れたか?」

 

「う、うん……ところでアルコ、ちょっと見てほしいものが……」

 

 もしかして、アルコならソルテアについて知っているかもしれない。

ポケットから、サイフに詰めたレシートのように変貌した紙を広げた。

 

「これ、セラードの部屋の引き出しに入っていたノートに挟まってたの、ソルテアって書いてあるけど、何か心当りは?」

 

 アルコは静かに首を横に振った。

 

「いいや知らないな。でも、なんとなく人の名前っぽいな」

 

 と言っても、私たちの知り合いにそんな人物はいない。

ソルテアに関しては手詰まりだ。

 

「それはいいとして、アルコはなにしに来たの?」

 

「お前がちゃんと起きてるか確かめに来たんだよ」

 

「冗談でしょ」

 

「冗談だ」

 

 大きなため息が出た。

アルコなりに私を元気づけようとしてくれているんだろうけど。

 

「で、どこに行くの?」

 

「俺についてこい、やるべきことがある」

 

「まさか、シュトルーヴェとやりあう気なの?」

 

「そうだ。お前が眠った後、さんざん話し合ったんだ。もう決定した。いちおうお前にも聞いておいてほしいことなんだ」

 

 セラードの姿である私は作戦に参加できないけど、そう言われたからには行くしかない。

 

 

 

 パジャマであることに気づいて、キャビネットから明るい色の服を選んで着た。

白に水色のラインが入った爽やかな色で、実にセラードに似合っている。

もし私が着たら、似合うのかな。

 

「どうしたメリダ

 

 長い廊下を歩きながら、アルコが言った。

私が服を気にし過ぎていたせいかもしれない。

 

「ちょっと派手かな? でも、セラードに似合ってるし……」

 

「いいんだよ。お前は姫なんだ。勝利の女神らしく綺麗な格好でいろ」

 

 勝利の女神

たしかにセラードはそうかもしれない。

でもそれって、私にはなにもできないってことかな。

ただアルコたちの無事を祈るだけで、他にはなにもできないのかな。