日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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目が腐る小ネタと4コママンガを土日。ゲーム実況を月火。小説を水曜に更新!

向かう道ー第14話 双肩銃ミスティ・ミラージュ マナビヤ特攻人

 

「一件の伝言を再生します――ヴェルサイユことトレドだ。予定より早い時間だが、もう俺らは集まってる。フィールドAにいるからな――伝言の再生を終了します」

 

 トレドのキャラクターなのか、声優のような綺麗な男の声で再生された。

先にいるなら待つ必要がないから、まぁいいか。

 

「分かった。さっそくエントランスに行く」

 

「はい。お気をつけて。くれぐれもプレイのしすぎと課金のしすぎには注意してくださいね」

 

 確かに。

プレイしすぎはともかく、俺には課金なんて別次元のことだから関係ないけど。

 

 目の前の扉を開き、再びエントランスに出た。

相変わらず人は少ない。

 

「あれ、あれって……」

 

 ふとショップの方を見ると、昨日のスライムマンが商品を舐めるように見ていた。

関わるだけ時間と体力のムダだから無視だ。

 

 そっーとフィールドAの扉まで行こう。

頼むから気づくなよスライムマン。

 

 抜き足差し足、ニンジャさながらの動きで気配を消し、扉に手をかけた。

 

「そこ! ナスカだな!」

 

 作戦失敗。

見事に見つかった。

 

 面倒なヤツが、逃げようとした俺の前までドカドカとわざとらしい足音をたてながら接近してきた。

クソ、みんなが待ってるのに。

 

「や、やぁスライムマン」

 

「スライマンだ。今日の俺はお前にリベンジを申し込む!」

 

「はぁ? なんだよ、へっぽこなクセに威勢だけは良いんだな」

 

「威勢だけだと? バカを言ってもらっちゃ困る。これを見よ!」

 

 スライムマンは背中から石のような素材の剣を引き抜いた。

超古代のものとかそういう設定だろう。

この威勢から察するにかなり強い武器に違いない。

 

「実は昨日、同級生の妹が家に泊まってな……嬉しくてつい買ってしまったよこの剣をな……」

 

「同級生の妹? それが関係あるのか?」

 

「あるに決まってるだろう! とっても可愛いんだぞ。十歳でキャスケットで姉想いの子で、とってもいい子なんだ。まるで姫だな、うん」

 

 まるで姫と褒めちぎられても、その同級生の妹とはどんな子なのか俺は知らない。

 

「そうか、でも俺は約束があるんだ。頼むから邪魔をするな」

 

「いや! リベンジを申し込む! せっかく買った剣を味わえ! ふふ……この剣は失われしカティオスの剣。九万八千ポイントで購入したんだぞ!」

 

 そういえば最初にここに来たときにショップで見た、えらい高価な武器だったはず。

 

「お前、レベルは?」

 

「変わっていないぞ」

 

「じゃあどうやって一日で九万八千も貯めたんだよ」

 

「どうやってだと? 決まってるだろう。買ったのだ」

 

「買った? だから、どうやってそんなポイントを――」

 

 そこでハっと気づいた。

こいつが買ったのはポイントだ。

百円で二百ポイントだったから、つまり九万八千の武器を買うために四万九千エンも課金したのだ。

 

「ふふふ、気づいたか。小遣いを貯めて、お前を負かすために買ったんだ! できればああいう手段には頼りたくなかったが、勝利へ繋がるのは金だ! さぁ勝負しろ!」

 

 俺の目の前に“デュエルしますか?”と書かれたメッセージが現れた。

このままYESを押せばデュエルが始まるだろうけど、無視。

 

「悪いな、ヒマじゃないんだ」

 

「な、な、勝負を受けないというのか! じゃあ、なんのために大金はたいてこんなものを買ったっていうんだよ!」

 

「お前が勝手に買ったんだろ。いい買い物したな」

 

 これ以上トレドたちを待たせるわけにもいかない。

今度こそスライムを無視して扉を開いた。

だが、ふっと思いついた言葉をどうしてもぶつけたくて、俺はスライムへ振り返る。

 

「海賊とかけまして、お金の無駄遣いととく」

 

「その心は?」

 

「どちらも、大航海(大後悔)」

 

 フィールドAの扉を潜り、すぐにばたりと閉めた。

最後の一撃が決まったのか、それからスライムの追跡はなかった。

どんな表情でショックを受けているのか予想はつく。

 

 さて。

トレドのキャラ名はヴェルサイユだった。

あいつのことだ。爽やかで王子様ルックの見た目だろう。

いや、あいつのことだから女のキャラということもあり得るか。

 

 人は少なめ。

多分どっかのダンジョンか町にいるんだろう。人ごみに揉まれるよりマシだが。

 

 すぐにそれっぽい三人組を見つけた。

きっとあれだ。

あっちが気づいて金髪ロングの男が手を振った。

 

「おーい、アトス、こっちこっち」

 

 あれがトレドだろう。

ここはゲームだから、頼むから本名で呼ばないでほしい。

 

「はは、遅かったな」

 

 トレド――ヴェルサイユの隣には、少し気弱そうな感じの金髪ショートの女キャラと、気の強そうな黒髪ロングの女キャラがいた。

きっと気弱そうなのがミディで強そうなのがアニだな。

頭上には“メクネス”と“レナ”と名前が書かれていた。

 

「こんばんは」

 

 ミディであるメクネスが、手話や筆記ではなく声であいさつした。

ゲームの中は声が出なくても関係ないから、ミディにとっては天国のような世界だろう。

 

 それとは正反対に、アニであるレナは腕を組んでそっぽを向いている。

学校で別れてからそう時間も経過してないから、あいさつくらいされなくても仕方ないけど。

 

「あんた、なにやってたの?」

 

 アニが言う。

現実とそう変わらない声だ。

 

「いや、面倒なヤツに巻き込まれて。遅れてすまなかった」

 

「別にいいけど」

 

 別にいいけど、と思っているように感じられないそっぽの向き方だ。

 

「あの、人を、探しに、行くんですよね、どうするんですか」

 

 ミディが口を開く。

発音とかが慣れていないのか少し口調や声を調節しながら話している。

 

「そうだな、アルベロについて手分けして聞き込みをするしかないだろう。適当に歩いて遭遇するわけもないし」

 

 それにはトレドが答えた。

 

「じゃあ、俺はフィールドB。ミディとレナは他のエリアを頼む。アトスはどうする?」

 

「えっと俺は……えっと、ダンジョンとかあったっけ?」

 

「フィールドAにあるだろ、ほらそこ」

 

 後ろを見ると、奥の方にそれっぽい扉があった。

俺のレベルで丁度いいくらいのヘボいダンジョンだ。

でも、あそこに目的の人物がいるかどうかは疑問だ。

 

 不安そうな面持ちの三人と別れ、俺は扉へ向かった。

みんながアルベロにやられたとしても、ここはゲームの世界だ。

デルフィみたいに死ぬことはない。

 

「あんた、本名はミディだっけ?」

 

 私はアトスたち男子メンバーから離れてミディと一緒にフィールドCに来た。

オレンジ屋根のヨーロッパ風の落ち着いた街並みで、敵もいないから気楽でいい。

 

 さっそく人探しをしないといけないけど、その前にどうしてもミディと話したいことがあったから、キラキラと輝く川の前のベンチに腰かけていた。

 

「そうですけど、あの、いいんですか、探さなくて」

 

「あんた、もしかして慣れないの? 声出すの」

 

「ちょっと難しいですけど、大丈夫です」

 

「そう。ならいいけど。ええと私が訊きたいのはさ、あんたの兄のこと」

 

「ラウマ兄さんが、どうしたんですか」

 

「私の親父と知り合いだったんだよ、知ってるでしょ。あんたはどう思う? 無事だと思う?」

 

 急に黙ってしまった。

声が出ないんじゃなくて、言葉が出ないんだ。

 

 何秒かの間を開けてミディは口を開いた。

 

「無事だと思いたいですけど、あの、ニュース見ました。あれを見る限りは、少し厳しいと思います。海に堕ちても沈むでしょうし、シュトゥルーヴェの陸地に堕ちても大破するでしょうし、もし生きててもシュトゥルーヴェにやられる可能性も……」

 

「なんであんたはそう思うわけ?」

 

「私、父親がいないんです。私が五歳の頃に死んじゃって、そのとき凄く悲しかったんです。だから、最初から兄は無事じゃないって思っていれば、落胆しなくて済むと思って」

 

 そこまで口にしてミディは口を押さえた。

私に気を遣っているんだ。

 

「ごめんなさい。他にもたくさん人が乗っているのに。他の人たちにも家族はいるのに……」

 

「私はいいよ。あんたがそう思ってるならそれで。私は無事だと思ってる。まぁそれは自分の希望でしかないけど、そう思った方が気楽だし」

 

 ベンチの上にあった小さな石を川に投げつける。

リアルなしぶきと波が見えた。

 

「あの、そろそろ探しに行きませんか?」

 

「まぁいいけど」

 

 ベンチから立ち上がり、とりあえず近くにいた人に訊いてみようと思い、二人そろって歩いた。

レベルとかレアアイテムとかには興味ないけど、現実とは違う世界っていうのは悪いものではない。

ミディも同じ気持ちかも。

こっちの世界なら自由に言葉を話せるだろうから。

 

「お前たち」

 

 背中から何者かが話かけてきた。

知らない男の声だった。

 

「誰?」

 

 私たちは同時に振り返り、その人物の頭上にある名前を見た。

そこには喜ぶべきか逃げるべきか、探していた名前があった。

 

「あんた、アルベロっていう名前なの……?」

 

 

 

 ダンジョン・アンコール遺跡。

 

 俺がトレドたちと別れて入ったダンジョンは、石で出来た地味な遺跡だった。

どこも黒い石でゴツゴツしていて、気味が悪い。

 

 変身して適当にモンスターを倒しながら進んでいると、レベルが10にまで上がっていた。

意外とすぐに上がってよかったと思いつつ、微かにゲーム世界を楽しんでいる自分がいた。

 

 デルフィからアルベロなる人物の名前を出されて、気づけば他の生徒を巻き込んでの捜索になってしまったけど、アルベロを見つけたからってどうするんだ? 逮捕するのか? そんなの無理だ。

所詮はゲームの中だ。

ゲームの中で犯人を見つけたからってなんだってんだ。

 

 肩から抜いたマシンガンを見る。

よくできた金属のようなものだけど、これだってプログラムで構成されたまがい物だ。

見える風景も倒す敵も、人が作ったプログラムでしかない。

そう考えると、なんだか空しくなってきた。

 

 俺、なにをやってるんだろう。

デルフィが死んだショックで自分でも何をやったらいいのか分かってないのかもしれない。

 

「デルフィ……どうしてるかな」

 

 そんな心配をしていると、メッセージが入って来た。

ミディからだ。

 

『ヤバい アルベロがいた』

 

 それだけだった。

 

「もう見つけたのか!?」

 

 急いで返事を返す。

 

『見つけた? どこにいる? いまそっちに行く』

 

 しかし数秒で返ってくると思った返事は来ない。

これではどこに向かえばいいのか分からない。

少なくともこっちのダンジョンにはいないだろうから、どこかを探すしかないのか……。

 

 フィールドBかCか、どこかの町かダンジョンか。

あまりにも選択肢は多すぎる。

 

「いや、考えるより先に進もう!」

 

 ダンジョンを出てフィールドAに戻った。

当然だが目を凝らしてもトレドたちの姿はない。

いや、とにかくどこかに入ろう。

フィールドBはトレドがいるはずだからフィールドCだ。

 

 

 

 ヨーロッパ風の街並みのフィールドC。

歩いている人たちにこれといった異常はない。

焦る気持ちでもう一度メッセージを送る。

『フィールドCにいる。どこだ?』さっき送ったのにも返事はない。こっちも返事は来ないだろう。

 

 もしも一対一の戦闘中ならば目視はできなくなるはず。そうなれば探すのは厳しい。

 

 どうする。どうする。どうする。どうする――?

 

 いや待て、なにを緊張しているんだ俺は。

こんなの所詮はゲームだ。

さっきも自分で思ってたじゃないか。

アニがアルベロに勝ってようが負けてようが関係はない。ただアルベロを見つけられればそれでいいんだ。

 

 メッセージが来た。

アニかと思ったら、トレドからだ。

 

『おいアトス。アルベロじゃないが凄いものを見つけた』

 

 凄い物――? まさか可愛いキャラクターがいたとかそんなことか。まさかとは思いつつも、俺はトレドに返事を返した。

 

『どうした。アルベロを探せ』

 

 アニとは違ってすぐに返事が来た。

 

『デルフィのキャラ名ってソルテアだよな? デルフィ・ソルテアだもんな?』

 

 なぜ急にデルフィの話なのか疑問に思いつつも、『そうだ』と返す。

 

『いたんだ。ソルテアってキャラ名のキャラがいる。デルフィだろあれ』

 

『え――?』