日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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目が腐る小ネタと4コママンガを土日。ゲーム実況を月火。小説を水曜に更新!

全ての始まりー第7話 双肩銃ミスティ・ミラージュ マナビヤ特攻人

 

 デュー子がパチンと指を鳴らすと、画面が右にスクロールして別のウィンドウが表示された。

 

 左に俺の姿の3Dモデルが表示されていて、その横にはパワードスーツのパーツらしき画像が出ている。

 

 俺のゲーム経験での直感で分かる。

 

これはキャラクターメイキング画面だ。

「まずこのミスティミラージュ・オンラインは、ゲーム空間に精神を移して楽しむゲームです。オブジェクトや他プレイヤーには実際に触れたりできますし、多少なら痛みもありますのでご了承ください。まずはあなたの大まかな見た目と、変身するパワードスーツのデザインや性能を選んでください。それと、名前もですね」

 

 目の前にキーボードらしき物が現れ、その上に『名前を決めてください』と表示されていた。

 

「名前か……」

 

 さすがにアトス・エオリアと本名でプレイするわけにいかないし、でも考えてなかったなぁ。

 

 ちら、とポン・デュ・ガールズの二人を見た。

急かす様子もなく笑顔で待機してくれている。

そこはまぁ、見た目リアルだけど中身はプログラムだから、文句を言わないのは当然だけど。

 

 いや、それよりも今は名前だ。

 

 なんとなく頭に浮かんだ言葉。

響きも良いし、これで決定だな。

 

 俺はキーボードに“ナスカ”と打ち込むと、メイキングは次に進んだ。

 

 パワードスーツの下の髪型、色、顔のパーツ、大体の体格、声を決め、次にパワードスーツのデザインを決めることになる。

だがメット、肩、プロテクター、手袋、ブーツと決められる部位が多く、種類も色も様々だ。

徹底的に決めるとなると小一時間はかかるだろう。

それではデルフィとの約束に遅れてしまう。

 

「ナスカ、決めるのが大変ならこっちで決めようか?」

 

 ポン子が明るい声で、なぜか呼び捨てタメ口でそう言った。

 

「おまかせってやつ? まぁ、ダサくなければいいけど」

 

「ほいほーい。じゃあ適当に決めるよー」

 

 画面に表示されているパワードスーツのパーツが高速で動き、ものの数秒でパワードスーツが完成した。

その下の容姿や声については、現実の自分と似たような無難な感じにしておいた。

 

「こんな感じでどう?」

 

 黒いラバースーツ、ダイヤモンドのような光り輝くプロテクター。

同じくダイヤのようなフルフェイスのメット。

両肩には銀色の四角いマシンガンが装備されてて、引っ張ればチューブに繋がれた状態で抜くことができるらしい。

 

 でも、一つだけ気になった。

 

「なぁ、武器は肩の銃しかないのか?」

 

「おまかせで決めた今はね。他にも剣やら斧やら槍やらに変えられるけど、バトルに勝ったポイントで購入することもできるよ」

 

 シンプルに剣にしたいところだけど、接近戦よりはまず銃で腕試ししたい。

 

「いや銃でいい、後で買うよ。それより、次にステータスとかについて訊きたい」

 

「このゲームは現実の肉体の運動能力はあまり関係ないよ。力も素早さも最初はほぼ同じだから、女の子でも斧とか使う人はいるよ」

 

「もしかして、レベルとか上がれば身体能力は上がるのか?」

 

「そうそうその通り。でも人間にはセンスってものがあるからね、何も身体的な運動能力だけじゃなくて、センスが良ければ補える、かも」

 

 あいにく俺には運動のセンスなんてない。

だからゲームの腕でカバーするしかないか。

 

「まぁ格闘ゲームとかと同じで、ダメージを与えてゼロにすれば勝ちってこと、簡単でしょ?」

 

「ゼロになったらどうなる?」

 

「勝ったほうは相手のレベルと同じ分のポイントと経験値が貰える。経験値が入ればレベルが上がって強くなるよ。負けたほうは特にこれといってペナルティはないけど、超リアルに殴る蹴る斬る叩き潰すで勝負するからね、怖くてトラウマ抱えてやめちゃう人もいるっぽいよ」

 

 やっぱり恐ろしい技術だ。

リアルすぎるのも考え物だな。

 

「ちなみに、このゲームのハイテクなところがもう一つ。同じ相手と連戦して経験値やポイントを不正に稼がないように、本気で勝負する意思のない人とは戦えないようになってるの」

 

「つまり、友人同士で結託してわざと負けるってことができないのか」

 

「その通り。各フィールドの外にモンスターも用意してあるから、地道に戦うしかないね。あ、ペナルティといえば、女の子とかに変なことしたらペナルティ食らうから覚悟してね」

 

「へ、変なこと?」

 

「やだな~ここは実際に触れた感覚になるんだよ。変なとこ触ったら変な風になるに決まってるじゃん。バッチリ監視してるから、変なことしちゃダメだよ?」

 

「あ、いや、そんなことしねぇよ」

 

「よくいるんだよねぇ。自分で女の子キャラになって変なことする人、そういうことばっかしてるとアクセス禁止にするからね。あと、これは世界と通信して勝負もできるよ。もちろんメッセージやボイスも翻訳されるから安心だね」

 

「いや、それは使わないだろうからいいや。細かい説明はともかく、始めたいんだけど」

 

「おっけー、じゃあエントランスにご案内~!」

 

 ポン子がパチンと指を鳴らすと、また画面が切り替わって木製のトビラが出現した。いやゲームの世界だから材質なんてないんだろうけど。

 

「じゃあ、ここから先がエントランスね。ショップは左、タイトルに戻るのなら右、対戦するなら正面の扉からよろしく」

 

「あ、あのさ、フィールドAってところで知り合いと待ち合わせしてるんだけど、どこかな?」

 

「正面の扉を見ればすぐ分かるから大丈夫」

 

 それなら安心だ。

 

 俺はいつもと違う姿の自分になり、エントランスへと続く扉を開いた。

 

「じゃあ快適なゲームライフを、ナスカ様」

 

 丁寧な性格のデュー子が、俺に向かって手を振ってくれた。

その笑顔に、ちょっと心臓が高鳴りそうになる。

いかん、あれはプログラムだ。

現実に飢えた人なら本気で心が揺さぶられるんだろうけど、俺はまだそこまでの段階には達していない。

 

 ――意外にもあっさりとエントランスに到着した。

 

 セレブの家みたいな大理石っぽい床に、ギリシャ神話の遺跡みたいなデザインのショップがある。

その周囲も大理石みたいな壁で囲まれていて、金持ち気分だ。

 

 入るときにもっと派手な演出が来るんじゃないかと身構えていたけど、シンプルで助かった。

なにぶん視点や感覚がリアルだから、あんまり激しい画面だと吐きそうになるし。

 

 今はパワードスーツを装着していない状態で、まさに村人Dみたいな服装だった。

といっても顔も体も俺のじゃないから、知り合いにバレる心配はないけど。

 

 エントランスにいた数人のプレイヤーがこちらを見た。

美少女におじさんに、その容姿は様々だ。

現実と同じく恥じを覚えて、慌ててショップに目線を切り替える。

見た目はああでも、実際のプレイヤーの姿はどうなんだろう……想像してちょっと怖くなった。

 

「らっしゃい」

 

 プレイヤーがいないキャラ、ノンプレイヤーキャラ――いわゆるNPCの商人が言う。

エプロン姿のおっさんだった。

 

 軽く並んでいる武器を見てみると、剣や槍は安くても五百ポイント。

高ければ十万を超えるものもあった。

もちろんそれに見合った能力はある。

 

 ザビードジャベリン――二千ポイント。

 

 セント・ギルダーライフル――二千ポイント。

 

 失われしカティオスの剣――九万八千ポイント。

 

 アル・アインエッジ――十二万ポイント。

 

 まるで高校生の俺には手が出ないような数字が並んでいた。

 

「金がないなら課金もできるぜ」

 

 どうやら現実のお金をポイントに変換できるらしく、百エンで二百ポイントだそうだ。

 

 と、いうことは……十二万のアル・アインエッジという武器を買うにしても、エンだと六万もかかるのか。

けどこれじゃ、まるで札束で殴るようなもんだ。

課金は恐ろしいものだと再確認しつつ、俺はショップを後にした。

 

「さて……」

 

 俺は小さなメニューウィンドウを呼び出した。

右上に表示されている時間を確認する。

 

「約束の九時まで、あと五分か……丁度いい時間だ、フィールドAまで進むとするか」

 

 正面に並んだ四つの扉――そのうちの左にあるフィールドAの扉を開いた。

とても広いエリアだった。

ライトが出ているような床に、時折色が変化する壁が眩しい。

ところどころに遺跡みたいな柱が埋まってたり木が生えてたり廃車が落ちてたりと、世界観もメチャクチャだ。

 

 他のプレイヤーはざっと見たところ五十人近くはいた。

こんな画期的なゲームにしては人が少なめだけど、少ないほうがいいか。

 

 すると、入ってきてすぐに面倒なやつに絡まれた。

 

「おい! お前、見ない名前だな、新人か?」

 

「あ?」

 

 男のキャラクターだった。

そいつの頭上には【正散(せいさん)のスライマン・トウ!】という名前が出ていた。

どうやら、トウ! までが名前らしい。

 

 胸にデっかいバツ印が描かれているプロテクターを着た、黒い姿だ。

メットの下はどんな顔なのか……気にならないけど。

 

「ナスカ? ほう、いい名前だな……俺は“正”義の拳をまき“散”らし、闇と悪魔を打ち払う、正散のスライマン・トウ! だ」

 

 と、スライマンとやらはカッコよさげなポーズを披露した。

意外にもキレがあって、不覚にもちょっとカッコいいと思ってしまった。

 

「ナスカとやら、キミもパワードスーツを装着して戦え! もっと俺を見習うんだ!」

 

「はいはい、凄い凄い」

 

「……きみ、レベルはいくつだ?」

 

 スライマンが唐突にそんなことを聞いてきた。

面倒だ。

デルフィとの待ち合わせもあるのに。

 

「レベルは1だ。まだ始めたばっかりなんだよ」

 

「そうか。で、年齢はいくつだ? ちなみに俺は三十三だ」

 

 こいつ、俺よりも十以上も上じゃないか。

でも年齢なんてそう晒していいものじゃないし、晒さなくちゃいけないルールもないし黙っておこう。

 

「言わねぇよ。あんたよりも下とは言っておくが」

 

「なんだと? なら敬語を使え、常識だろう?」

 

「はいはい、失礼いたしました」

 

 なんでゲームの中でも礼儀だのなんだの言われなくちゃいけないんだ。

自分だって俺の年齢を知らずにタメ口だったくせに。

 

 そろそろスライマンがウザくなったから、俺は無視して通り過ぎた。

 

「じゃあなスライムマン」

 

「スライマンだ! こら! 待て!」

 

 背中に怒鳴り散らしてくるスライマンに手を振り、俺はフィールドAの中心まで歩いてきた。

 

 しかし、広いな。

デルフィはどこにいるんだろう。

 

 そういえばデルフィは“ソルテア”というキャラ名でピンク髪だと言っていた。

すぐ見つけられるだろうと思ってたけど、これじゃ厳しいな。

 

 

 

 ――数分後、約束の時間である九時を過ぎた。

 

 その間に人の出入りはいくつかあったものの、デルフィの姿を見つけることはできなかった。

 

「まいったな……」

 

 デルフィだって都合はあるんだろう。

遅刻くらい仕方ない。

 

 ――と、何者かが背中に触れた感触があった。

 

「デルフィ?」

 

 振り向き、すぐに解答が誤っていたことに気づいて落胆する。

 

「ナスカ、勝負をしろ!」

 

 スライマンだった。

 

「またかお前」

 

「俺のレベルは2だ! きみはまだ1だろう? じゃあ、手ほどきをしてやろう」

 

 なんだこいつ、偉そうにしてたわりにはまだ初心者じゃないか。

 

 デルフィだって探さなくちゃならないのに……でも断ると面倒そうだな。

 

「なぁ、ソルテアってキャラを探してるんだ。訊いてもいいか?」

 

「俺に勝てたら、教えてやろう」

 

「……しょうがねぇな」

 

 面倒だが仕方がない。

 

 すると目の前に“デュエルしますか?”と書かれた画面が現れた。

 

「なんだこれ?」

 

「デュエルの申し込みだ。YESを押してくれ」

 

 言われたとおりにYESのボタンを押す。

 

 ……すると、まるで夜になったかのように周囲の風景は一瞬で真っ暗になった。

 

「おい、なんだこれ?」

 

バトルフィールドだ。人がいるとこでやると周囲に迷惑がかかるからな。瞬時に場所が切り替わる仕組みになっている」

 

 真っ暗な場所だったが、次第にぼんやりと荒野のような風景が現れ始めた。

 

「な、なんだこりゃ!?」

 

「ふふ、驚いたか。これがミスティミラージュ・オンラインの技術だ!」

 

 気づけば、まるで西部劇の決闘シーンみたいな場所に立っている。

周囲には木造の建物が並び、遠くには山もあってハニワみたいな形のサボテンもある。

あとは丸い草の塊(タンブルウィード)が転がっていて大きな夕日も出ている。

非常によく出来た雰囲気が演出されていた。

 

 つくづくこのゲームの技術には驚かされるもんだ。

 

「フィールドはデュエルを申し込んだ方が決められる。文句はないだろう?」

 

「いいけど」