日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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目が腐る小ネタと4コママンガを土日。ゲーム実況を月火。小説を水曜に更新!

大白熱決戦!第21話 暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

 

「信じても、信じなくても、どちらにしても、どちらにしても同じことよ。事実は事実。信じても信じなくても、ね」

 

「そうかい。じゃあてめぇの言葉は信じねぇことにするぜ」

 

「けっこう」

 

 グールドが玉座から降りると、鈍い音を立てながらエレベーターは下降していった。

 

「さて、真実を信じないまま、あの世へ行ってもらおうか」

 

 小さな木箱を持ったメイドがグールドの側まで近寄り、膝をついて箱を開く。

その中には、ドロドロした薬液が詰まった注射器が一本だけ納められていた。

 

 グールドはそれを手にし、自分の腕にっ!

 

 突き刺すっ!

 

 ぶっ刺すっ!

 

「おおお! これだ! これ! 快感! けっこう! 素晴らしいぞ!」

 

 もはや注射と呼べる動きではない! これは注入! いや、これは投与! それも違う。

これはまさしく、強引な摂取! 強引な摂取! 強引な摂取だ!

 

「おいてめぇ! まさか、それっ!?」

 

「その、まさかだ! これは真の四天王にも注入した強化薬と同じもの! 四天王四人の薬プラス、真の四天王の薬を打ち込み! さらに強さを得る!」

 

「て、てめぇ……そんなことしたら、人間じゃなくなっちまうぞ!」

 

「人間としての限界などもう超えている! 超えてっ! いるのだよっ!」

 

 薬を強引に摂取した数秒後、体中の筋肉がメキメキと盛り上がった。

 

 バキバキと木版を叩き割ったような音が響き渡り、鉄を越える強度の肉体が形成されていく。

これは単なる肉体強化ではない

そんな生易しい領域はすでに凌駕し、変貌の域にまで達している。

 

 例えるのならば人間から狼男への変身! サナギから進化する蝶! オーガニックさは微塵もないが、これだけは言える! まさに究極! これぞ、究極、なのだ!

 

 図体は五十パーセント増し! すでに身長は二メートルを余裕で超えた。

 

知能は幾分か落ちたが、モンスターと呼ぶには丁度いいだろう。

モンスターはモンスターらしく、脳みそを筋肉に変換するべきなのだ!

 

「限界突破だ! さぁ死ねい、小僧ども!」

 

「はっ! そんなバカみてぇな図体してよく言うぜ!」

 

「その偉そうな口! この死闘で閉じてやる!」

 

「死闘だぁ? バカ言え。俺はなぁ、てめぇみたいなモンスターだろうと、殺しはしねぇ。ただ、ちょいと黙ってもらうだけだっ!」

 

 

 

 七章 ストロング・ウィーク

 

 

 

 リンセンは手袋に触れた! その瞬間、全身が本来のそれとは異なる姿へ変身! だがそれはグールドのような邪悪で邪道な方向への進化ではない。

外側のカッコよさよりも内側の強さを追求する、それがリンセンという男!

 

 戦闘に備えて手袋に触れようとしたリョウを、すかさずリンセンは制する!

 

「おいリョウ。お前は戦わなくていい」

 

「え?」

 

「お前は、まだあいつのメシを食ってねぇ。手はキレイにしとけ」

 

「大丈夫……なり? あいつ、強敵」

 

「俺をナメんな。さっさと片づける。ま、晩飯までには終わんだろ」

 

「じゃあ、あのクローナっていう人を助ける?」

 

「いや、そっちも俺がやる。どうやらグールドは完璧主義らしくてな。俺を倒さずに戦争をおっ始める気はないらしい。……だから、待ってろ」

 

 リョウに部屋の端っこで待機するよう指示を出し、リンセンは自分の拳と拳をバスンとぶつけ体中に気合を充填する。

 

 グールドに対し、人差し指をクイクイとやり挑発。

 

 かかってきやがれ、クソ人類が!

 

 そういう意味の無言の挑発!

 

「ウシャァァァァァ!」

 

 ではさっそく、と言わんばかりに、グールドが丸太のような腕を振り下ろし、リンセンに襲い掛かる。

リンセンは余裕をかまし、不動を貫くっ!

 

「はっ! 大した攻撃だな! まるでガキのケンカだっ!」

 

 が、

 

「やっべぇぇ!」

 

 瞬時に本能でムリだと悟り、回避行動へ移行っ!

 

 ドン! 一瞬の攻防は、間違いなかった! リンセンがいた床に怪力の拳がめり込み、一撃で床を粉砕している。

こんなものをまともに食らえば、死亡間違いなし!

 

「へっ! ガラ空きだっ!」

 

 隙を見つけたリンセンは、すかさず踏み込んでグールドの胸に混を叩き込む! だが強靭な肉体の前では鋼鉄に石を投げつける行為とそう変わらない! これは無意味!

 

 つまり、通じない! 効かない! ダメージは、ないっ!

 

 これはどういうことかっ!?

 

 鼻先に止まったハエを振り払うように、グールドのフックが炸裂し風を切る! 刹那のタイミングでかわし、すかさずリンセンは混を首元に打ち込むが、同じく手ごたえナシっ!

 

 つまり、動じない! 動かない! 傷一つ、ないっ!

 

 これはどういうことかっ!?

 

「どうした? 威勢のいいニッポン人。もっと力を出してもいいんだぞ?」

 

「ちっ……うるせぇぞてめぇ! こっちだって本気出してんだよ!」

 

「あっちの小娘と二人がかりでも構わんぞ?」

 

「はっ。てめぇみたいな汚ねぇやつとやりあうのは、俺だけでいい!」

 

「そうか。一人で足りればいいがな……!」

 

 再度グールドが拳を振り上げたとき、リンセンは回避の構えをとった!

 

 だが見てしまった。

グールドの背後で動く人影を。

グールドの大柄すぎる体格に隠れるようにして、さっきのメイドが別の注射器を背中に打ち込んでいるではないか!

 

「てめぇ! コソコソとっ!」

 

 最後まで薬液が注入されるより早く、リンセンはグールドの背後へステップしメイドの手にあった注射器を叩き落とすっ! メイドはふてぶてしく、かつ冷たい笑みを浮かべてから一歩後退した!

 

「気づくのが遅かったな、ニッポン人」

 

 グールドが体を捻ってリンセンに暴力的なまでの拳をおみまい! 最初とは比べ物にならない速度で襲いかかった拳を咄嗟に防御するが、人間並みの体重しかないリンセンでは人形のように吹き飛ばされて壁に叩きつけられるのがオチだ。

 

 轟音とともに激突した壁には大の字のヒビが入る。

 

 全身を襲ったのは凄まじい衝撃と悔しさ! リンセンにとって痛みなんて生易しいものより、自分をここまで負かした相手に対する敗北感と滾りのほうが上回った!

 

 ニヤリ。

リンセンは心で熱く燃え上がる闘志を感じ、戦いに喜びを覚えた。

 

 これだ。

この感じ。

この火のように燃えるこの感じ。

この徹底的に敵を叩き潰したくなるこの感じ。

 

 ぶち抜く衝動、貫く鼓動。

切り裂く躍動、裁く震動。

砕け散る能動、粉砕する鳴動。

 

 リンセンのハートを加速させる一つ一つの気合が爆発する! それは、激しくどしゃぶる雨そのものだ!

 

 クラウチングの構えからダッシュへ移行し、前傾姿勢でグールドめがけて突っ走る!

 

「ムダなあがきぃっぃ! このニッポン人がぁぁぁ! 正面からぶつかって勝てるわけがぁぁぁぁ! 速度も力も私のほうが上の上の上ぇぇぇぇ!」

 

「てめぇは下の下の下だぁぁぁ!」

 

 リンセンは加速を利用し、高く飛び上がる。

 

 途方もない高さまで跳ね上がり、グールドよりも遥か高い位置でほくそ笑んだ。

 

 だが、しかし! いくら高度を上げたとてグールドとの接近戦での勝利は絶望的! ならばどうするリンセン!?

 

「ほう! 落下攻撃か! ならば、落ちてこい! 返り討ちにしてくれるっ!」

 

「てめぇの敗因は、俺みたいな変身をしなかったことだっ!」

 

 強く握っていたリンセンの拳が開く! その拳は悪を砕くための鉄槌ではなかった! 開いた手の中には、壁と衝突したときに掴んだ粉塵があった! そいつを上空からグールドの目にぶちまけるっ!

 

「いいや! やっぱりてめぇは下の下の下の下の下の下ぁぁぁぁ!」

 

「でぇゃゃゃゃ!!!??? 貴様! 戦いの最中にっ! 敵の目の中にっ! そんなものをぉぉぉ!」

 

 リンセンは、視界ゼロのグールドの上空から渾身のカカト落としを放つ! 僅かなダメージだが、まともな一撃ではあるっ!

 

「貴様! ニッポン人らしい正々堂々はぁぁぁ!? どうしたというのだ!?」

 

「だから言ってんだろぉが! 俺は正々堂々がクソ嫌いだっつんだよぉぉ!」

 

 カカト落としから、流れるように地上に降りたち、グールドの背後へ進む! チャンスはここ! さきほど注射をしたところが、僅かだが出血している!

 

 医療知識のないメイドが勘で注射した結果なのだ!

 

 正々堂々なんてクソくらえのリンセンは、そこに突きをぶち込む!

 

 まともな一撃、パート2!

 

 それだけでは飽き足らず、僅かな隙を狙い蹴りもお見舞いするっ! 偶然作り出された急所に二連続で受けた攻撃は、さすがのグールドも無表情では済まない! 苦悶っ!

 

 だが怯むには至らずっ! グールドは百八十度体を捻り背後のリンセンへ拳を叩き込むっ! が、ヒットアンドアウェイを狙っていたリンセンは後方へのステップで回避っ!

 

「てめぇ! ダメージあんのかよっ!」

 

「ははぁん? 痛みは感じるさ。どうやら、僅かだがダメージがあるようだ」

 

「へっ! それならそうとちゃんと言えよなっ!」

 

「貴様、この程度の威力で倒せると思っているのか? だとすれば甘い。甘すぎてアクビが出るわ出るわ」

 

「そうかい。じゃあそのまま寝てろ! 俺はてめぇをぶっ倒すまで足を止めねぇ。足が止まってもてめぇをぶっ倒すがな!」

 

「面白い! では、こんなものはどうかね?」

 

 グールドが大きな手でパンと叩く。

野太い破裂音が木霊したとき、天井がパカっと開いて鳥カゴが出現した。

その中には、なんとクローナの妹クローネと母であるフランがいるではないか!

 

 なんという卑劣! これぞ悪者の特権だと言わんばかりに正々堂々と卑劣な行為を行うグールドは、まさに悪の中の悪と呼ぶのがちょうどいいくらいだろう!

 

 リンセンはその卑劣な戦い方に、さすがに怒りが頂点へ達して沸騰する!

 

「てめぇ……あのクソ女の母ちゃんと妹を人質にするなんてよ、卑劣すぎんだろが!」

 

「卑劣! 結構! 大満足! 卑怯! 結構! 大満足! 何度でも言うがいいさ! 一日で十五回ほどは言ってもらいたいものだ! 褒め言葉よの! ははは!」

 

 正々堂々を嫌うリンセンだったが、さすがに! さすがにこの反吐が出るような卑劣さには頭にきていた! リンセンは正々堂々ではないだけで決して卑劣ではない

罪のない人間を人質にするなど言語道断! 言語・道断っ!

 

 クローネもフランも口に布が巻かれている状態で、「助けて」とも叫ぶことができない状態だ。

これは卑劣っ!

 

「女子供の人質は実に役に立つ。それだけで相手は押し黙るのだからな」

 

「……俺はガキが嫌いだ。だがな、クローネが言ってたぜ。ガキってのはメシ食ってデっかくなんだよ。好き嫌いはあっても、美味そうにメシ食って大人になれるんなら、それだけで宝物だろうが。そんなことも分かんねぇのかてめぇ!」

 

「はははは! 一方通行しか能がないバカかと思ったが、ガラにもないことを言うのだな!」

 

「ガラじゃなくて悪かったな!」

 

「だが安心しろい。人質はあくまで場を盛り上げるための演出さ。こちらにはまだ手段があるのでな!」

 

 グールドは左腕を高く掲げた。

 

 今度は床に穴でも開けるつもりか? ……リンセンがそんな油断をしたときだった! グールドの左腕は適当に握った粘土のようにグニャグニャになり、すぐにバズーカのような筒状に再構成される!

 

「塵クズとなり果てい! 塵クズとぉぉぉ!」

 

 グールドが大口を開き、そこら一帯の空気という空気を吸う! 空気中の僅かなホコリも塵も構わず、なにもかもを吸い尽くす!

 

 リンセンも危うく吸い込まれそうになるが、床に混を突き立てた全身全霊のふんばりでブレーキをかける。

 

「てめぇ! なんて吸引力だっ!」

 

 だが! これはメインの攻撃ではない。本当の地獄はこれからなのだっ!

 

 吸い込んだ空気の全てを破壊エネルギーへと変換し、変形させた左腕からそれを放つっ!

 

 発射されたのはただの空気か!? 否っ! 断じてそれは違うっ!

 

 確かにそれは空気っ! だが空気は空気でも、リンセンめがけて一直線に発射される竜巻だ!

 

 床を抉りっ! 空気を破壊しっ! 壊滅的な竜巻がリンセンへ襲撃するっ!