日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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美味い肉を食わせろ! 第18話 暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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 否、ルフィヤにはすでに敵意はない! リターンマッチではないっ!

 

「はっ! 誰が迷うかよ! それより、なんでてめぇがここにいんだよ」

 

「そりゃあそうでしょ。何分もかけて、他の男どもを連れてここに戻ってきたんだから」

 

「あ? ああ、俺が大成敗したあいつらか」

 

 まさか迷っている数分の間にそこまでしていたとは、リンセンも驚きだ。

 

「さっき男どもを安全な場所に置いてきたの。こんなボロボロな姿をボスに見られたら、もうお終いよ。あなたに負けた時点で、もう終わったようなものだけど」

 

「そうかい。じゃあ、せいぜいボスとやらにバレねぇよう、頑張りな」

 

 ひらひらと手を振りながら、リンセンは背を向けた。

 

 そのまま陽の当たらない狭い通路へ踏み出そうとしたとき、ふと解決策を閃く。

頭の中の電球が、パっと光ったのだ。

 

「あ、おい!」

 

 振り向きつつ、ルフィヤを指さした。

急に指をさされたルフィヤは口を一文字に結び、首を傾げている。

 

「お前、四天王だよな」

 

「あなたに負けたから、元だけど」

 

「お前、ボスの居場所知ってるだろ」

 

「え? ええ、まぁ……そうだけど、それが?」

 

「教えろ。俺が潰しに行く」

 

「お、教えろって。バカ言わないでよ。私たちのボスなのよ、あのお方は」

 

「はっ! そうかい。だがな、お前らは俺に負けたんだ。お前らが跪くボスは怒るだろうな。怖ぇ処罰が待ってるかもしんねぇぞ」

 

「こ、怖い処罰」

 

「さぁ、どうする。俺に大好きなボスの居場所を吐いてここから逃げるか。無様な報告をして処罰されるか、好きなほうを選びな」

 

「に、逃げるって……私たちを逃がすつもりなの?」

 

「てめぇらがボスに殺されるってことになったら、俺のせいで死んだみたいじゃねぇか」

 

「ま、まさか、そんな。私たちは敵よっ!? そんな、そんな理由で」

 

「さっきも言ったろ。血がついた手じゃメシが食いにくいんだよ」

 

「はっ……はっ……!」

 

 かつては桃色の烈風とまで呼ばれたブーメランの達人だ。

 

 金のロングヘアーが風になびけば、振り向かない男などいない。

どんな男も、得意のブーメランで一撃で仕留めてしまう鉄人美女だ。

 

 なのに、なのに、なのになのに。

 

 こんな薄汚いニッポン人に、僅かだが恋心を抱いてしまっている。微かだが頬が赤く染まっている。

 

 信じられない。こんなこと、ありえない!

 

 ルフィヤの心拍数が跳ね上がる。

 

「おいどうした」

 

「えっ……?」

 

「言うのか言わねぇのかハッキリしやがれ」

 

「えっ? あ、あぁ。ええと、その、言います」

 

「よし」

 

「このディナールの町は、ナイラ国の端っこに過ぎないの。ボスであるグールドがいる城はこの国のもっと中心よ」

 

「中心って言ったってよ、どこにあんだよ」

 

「ナイラ国は上から見ると丸い形になっているの。その中心」

 

「だからよ、その中心ってのはどっからどう行けばいいんだよ。変身してジャンプしてってらすぐ人に見つかって厄介なことになる」

 

「……そうね、じゃあ、いい作戦がある」

 

「へっ、じゃあそいつに賭けてみようか」

 

「ついてきて」

 

 ルフィヤ曰く、この町には四天王を含む数人のみが知る秘密の地下通路があるらしく、グールドの城まで一直線らしい。

 

 だが道はボロボロで、所々に穴が空き放題。

ネズミやナメクジの巣窟でもあり酷くジメジメ。

変なコケのオンパレードで真っ暗。

よって一直線だがランタン無しで進むのは不可能だ。

 

「おい女、お前の名前なんてったっけ?」

 

ルフィヤ

 

ルフィヤ、そもそもなんでこの町はこんな迷路みてぇに入り組んでるんだよ」

 

「何百年か前に戦争があったとき、敵の軍が町に攻め入ることを前提に建物を配置したんだって。迷路みたいに入り組んでると、敵が迷って隙ができるから」

 

「ふーん。姑息だな。男なら真正面からぶっ飛ばしゃいいだろ」

 

「みんなあなたみたいに強いわけじゃないのよ」

 

「クソ人類どもが弱すぎんだろ。っていうか、戦争してる時点でそいつらはザコだ」

 

「ど、どういうこと?」

 

「戦争なんてなぁ、臆病者がやるもんだ。周囲が怖いから攻め落とすんだ。本当に強いやつっていうのは、美味いメシを用意するやつと、いかに戦わずに済むかを考えられるやつだ」

 

「でも、あなたは戦うでしょ」

 

「そりゃあそうだろ! 俺は強いうえに戦いが好きだからな! 腹立つやつはぶちのめす。ムカつくやつはぶっ倒す。美味いメシはしっかりいただく。単純で良いだろ」

 

「そう……でも、それもいいかもね」

 

 ルフィヤは、このストレートすぎる心を尊敬していた。

 

 曲がることがなく、しかし鋼の意志を持ち、己のやりたいことを貫いている。

単純だが、それでいて迷いがなく、汚れもない。

 

 こんな敵、最初から勝てるわけがなかったのだ。

欲望に塗れて、戦争マニアの犬として戦う自分たちが、敵う相手ではない。

 

 自分の全力をぶつけ、敗北という形で真っ向から否定され、改めて自分の弱さを知った。

美味いメシなんかのために、命を奪う行為もしなかった。

 

 本当に自分が仕えるべき相手は、グールドなんかじゃない。

この男かもしれない――。

ルフィヤはそう思った。

 

 もちろんリンセンは、そんな気持ちなど察していないだろうが。

 

「もう少し早くあなたに出会えていれば……」

 

「あぁ? なんか言ったか?」

 

「べ、べつになにも言ってない。それより、心配してないの? これから大勝負なんだよ?」

 

「ああ心配だな。腹は減っているが、腹さえなんとかなりゃ、まぁ余裕だろ」

 

「ごめんなさい。今は食べ物が用意できなくって」

 

「んなこたぁ分かってる。あっちで軽くつまんでやるよ」

 

「つまむって……どういうこと?」

 

「そのまんまの意味だろ。ボスの城なんだからよ、どっかに美味いメシくらいあんだろ」

 

 無計画。あまりにも無計画。

 

 これから一世一代の大勝負だというのに、リンセンは敵の本拠地で食べ物を見つけられるかどうかの賭けをしているのだ。

 

 そこまで意識していないのか、大した戦いだと思っていないのか、どちらにせよ緊張感など欠片も持ち合わせていない。

良く言えばリラックスしているが、悪く言えば甘く見ている。

 

「グールド様――いや、グールドはそんな甘い相手じゃないよ」

 

「強いって言ったってよ。俺の手袋に敵うわけねぇだろ。お前ら四天王を束でぶっ倒したんだぞ」

 

「……いえ、グールドは私たちの比じゃないわ」

 

「どういうことだよ。悪魔と合体でもしたのか」

 

「私たちは、究極の肉体強化薬を注入した戦士なの。だから普通の人間よりずっと強い」

 

「あぁ。頭のイカれた拳法野郎が言ってたぜ」

 

「その薬は、私たちの能力に合わせたものが注入されているの。でもグールドは、一種類だけじゃない」

 

「あー。読めたぜ、展開が」

 

「そう。グールドは四種類全てを注入しているの」

 

「お前らもぶっ飛んだ連中だと思ってたが、ボスはやっぱりボスだな。とびっきりぶっ飛んでるぜ」

 

「それでもあなたに勝つ自信があるっていうのなら、ここから入りなさい」

 

 グールドについての話が終わった同タイミングで、到着。

天井には錆びた鉄製のハッチがつけられているが、果たして何年使われていないのやら。

 

「ここから、グールドの城の地下倉庫に出られる」

 

「そこからどうすりゃいいんだよ」

 

「そのまま階段を探して、一番上の大きな扉の部屋にいるはずよ」

 

「へいへい。一番上のデカい扉ね。分かりやすくて助かる」

 

 リンセンは拳と拳を突き合わせ、気合十分にハッチを開いた。

 

 が。

 

「食糧庫を探そうだなんて思わないで。もし兵士に見つかって大ごとになったら、あのクローナって人がどうなるか分からないよ」

 

「あぁ? ま、余裕があれば探しとくさ。じゃあな」

 

 リンセンは忠告を聞くこともなく城内へ侵入した。

ハッチは閉じられ、年季の入ったサビが零れ落ちる。

 

 これで、自分の役目は終わった。

ルフィヤはリンセンという奇妙で魅力的な存在を胸に、一人孤独に通路を戻っていった。

 

「無事でいなさい、リンセン」

 

 

 

 地下倉庫のハッチを開いたリンセンは、そのあまりの暗さにテンションダダ下がりだ。

てっきり、松明の二、三本は用意してあると期待していたのに、真っ暗もいいとこだ。

あたり一面を闇が支配していた、とでも表現しようか。

 

 手探りで扉を見つけなんとか外に出たが、そこは石造りでコケだらけの、どんよりとした汚い廊下だ。

望んでいた松明が二本あっただけ幸いだが。

 

 運よく敵兵の姿はなかった――居眠りをしている見張り以外は。

 

「へっ、ご苦労なこった。こんな誰もいねぇ汚ねぇ地下を見張るなんてよ」

 

 見張りを放置し、リンセンは一階に続く扉を開けた。

地下とは正反対に、清掃が行き届いた小綺麗な廊下だ。

しかも天井からは廊下を照らす大きなランプまでぶら下がっている。

まさにボスが住むにふさわしい豪華な建物だ。

 

「さぁて、食糧庫はどこかなっと」

 

 敵のことなど後回し。

まずは腹ごしらえを優先させる。

空腹のまま戦場に立てば、勝負に勝つことはできないからだ。

リンセンにとっては最重要事項。

 

 目を凝らして隅から隅まで確認する。

扉だけ見ても食糧庫かどうかなど判別できず、そもそもこの階にあるのかどうかも謎だ。

 

 ぐぅ~

 

 腹が、食事を要求する。

 

 その合図を境に、リンセンの全身から力が抜けていった。

敵の本拠地ド真ん中で、まさかのダウン。

リンセンも予想できないまさかの事態だ。

 

 そのとき、香ばしい肉――のような香りがリンセンの鼻を刺激した。

エサ目前の犬のように飛び起き、香りの居場所を探る。

 

「ん? んんん? こっちか? 肉が焼ける匂いは」

 

 匂いを道しるべに、階段を上る。

食べ物で頭の中がいっぱいになったリンセンは、目の前で槍を持つ兵士が二人いても眼中にない。

 

「おい貴様! だれだ!」

 

「そこでなにをしている!」

 

「あぁ? うるせぇな。俺はメシが食いてぇんだよ」

 

「ん? 低い鼻、黒い髪に黒い目……こいつ、まさかっ!?」

 

「その、まさかだぜっ!」

 

 駆け出したときにはすでに変身していた。

目にも止まらぬ速さで兵士の槍を叩き落し、首根っこを掴んで、掃除が行き届いたピカピカの壁に叩きつける。

 

「ぐほっ!?」

 

 速攻撃破!

なんとか仲間を呼ばれる前に倒すことができて一安心。

しかし今のリンセンの頭の中は、やはり肉のことでいっぱいだった。

 

 香りの出どころである部屋の扉を蹴破って突入する。

 

 一切の物がない部屋には、狙い通りこんがりと焼かれた肉があった。

なぜか数メートルある天井からぶら下げられているが。

 

「おっ! 俺の鼻に間違いはなかったぜ! なぁんか怪しい気配がするが、まぁいいだろ!」

 

 ワナの可能性など微塵も考えず、ただメシ目掛けて食らいつくのみ、だ。

 

「おらぁ! 俺の肉ぅ!」

 

 変身を解除し、飛びあがって勢い任せにかぶりついたまではいいものの、硬くて噛みちぎることができない。

まるで釣られた魚だ。

 

「このぉぉぉ……クソ肉めぇぇぇ……」

 

 手で肉を引きちぎろうと試みるも、これまた硬くて敵わない。

だが肉を目の前にして引くわけにもいかない。

しかし肉に対する策もない。

 

「うおおお、どうすりゃいいんだ……」

 

 と、諦めかけたそのとき、何者かが部屋に入り真下に立った。

 

 みっともない恰好だが、リンセンはしっかり気づいている。

 

「いい恰好じゃないか、リンセェェェェン???」

 

「あ? 誰だ?」

  

 

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