日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

目が腐る小ネタと4コママンガを土日。ゲーム実況を月火。小説を水曜に更新!

調子に乗れるのは今のうち 第17話 暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

f:id:oyayubiSAN:20190819224603p:plain

 

 

六章 ポッシブル・インポッシブル

 

 一方そのころ、ナイラ国のボスであるグールドに捕らわれたクローナは……。

 

 捕らえられているとはいえ、その待遇は酷いものだった。

 

 能力を封じるため、目隠しをされ汚い麻袋を被せられている。

おまけに後ろ手に手錠をされ、ついでに足も縛られている。

なにより最悪なことは、この陽が差し込まない牢屋に閉じ込められている、という事実。

目を使う能力であるため、グールドたちも警戒に警戒を重ねた結果だ。

 

 しかし死なれては困る。

だから食事だけはしっかりと与えられているのだが……快適とは程遠い環境であることは間違いない。

 

 こんな状態ではまともに横になることすら適わない。

視界には映ることはないが、ネズミのような生物も徘徊している。

 

 意思の強いクローナでも、さすがに厳しい精神状態!

 

「諦めない。私は……こんなところで力尽きたりはしない」

 

 闇の中、一人決意を新たにする。

 

 そんなとき、不意にサビた鉄扉の軋む音が響いてクローナの鼓膜を揺らした。

 

 直後に固い石の床を歩く音が――誰かが牢屋のある地下へ入ってきたのだ。

だがあいにくとクローナの視界はゼロ。

聴覚を限界まで研ぎ澄ますが、足音だけでは訪問者の正体は探れない。

 

「だれ?」

 

 目の前に到着した訪問者に問うた。

声こそ冷静なものの、内心は叫びだしたいほどの恐怖で満たされていた。

 

「あっし、なり」

 

「あっし……? まさか、リョウ」

 

 馬車で襲撃してきた――リンセンの妹の可能性がある少女、リョウだ。

 

「なにをしにきたの。私の出番なの?」

 

「違う。あっしは個人的に来ただけなり」

 

「個人的? 個人的に?」

 

「あっしは、あの男について知りたいなり」

 

「あの男って……まさか、リンセンのこと?」

 

「ご明察なり。二戦交えたあの男、知りたいことだらけなり。知り合いである可能性もある。もしや、家族か……」

 

「あなた、勘づいているの? リンセンと同じこと言ってるわ」

 

「同じこと……」

 

 僅かだが、リョウの冷え切った心に変化があった。

 

 こんなこと、グールドの手によりナイラ国へ連れてこられて以来、初めてだ。

 

 姿こそ見えていないが、クローナはその心の変化を見逃さなかった。

 

「あなた、自分のこととリンセンとの関係、知りたいでしょう? だったら、ここを開けてちょうだい。手袋の力で変身すれば、こんな牢屋なんて一発でしょう」

 

「それは……裏切り行為となるなり」

 

「裏切り? 違うわ。裏切りじゃない。そもそもあなたはニッポン人なのよ。この国に連れてこられたのだって、ナイラ国のせいなのよ。あなたたちは、帰らなくちゃダメよ」

 

「帰る……ニッポン……」

 

「リンセンと同じく思い出せないでしょうけど。でもあなたがリンセンの妹だというのなら、私はあなたの味方よ。ここから出してくれたら、あなたに協力する」

 

「協力……」

 

 あと少し。

あと少しでもリョウの心を動かせれば、心強い味方になる。

この暗く冷たい牢屋の中でも、希望が生まれる。

 

「お願い。美味しいご飯、用意してあげるから」

 

 トドメの一発のつもりで、食事の話題を出した。

狙い通り、リョウの心は大きく動いた。

それはリンセンと兄妹である証拠と言えるのか、ただ単純に食いしん坊なだけなのか、真意は誰にも分からないが。

 

 ――リョウの手が手袋に伸びた、そのとき。

 

 不快な鉄扉が開かれ、ランプを持った数人の兵士たちがリョウに銃口を向けた。

 

「なにをしている、ニッポン人のガキ」

 

 中央に立つ兵士が代表して前へ出た。

眉を顰め、威圧的な態度で。

 

「あっしは……ただ、この女に用があっただけなり」

 

「グールド様が連れてきたと言うから野放しにしていたが、貴様、この女に加担して逃がす算段でも練っていたか? ニッポン人は信用ならなかったんだが、やはりな」

 

「あ、あっしは……あっしは……ただ」

 

「おい! ちゃんと説明しろ!」

 

「あ、あああ……あっしは、あっしの心は……」

 

「貴様! 説明しないなら、この場で撃ち殺すぞ!」

 

「あ、あああああ、あっしは……ちがう。あっしは、ただ……故郷に……」

 

「構わん! このガキを撃ち殺せぇぇぇ!」

 

「――やめて!」

 

 クローナの叫びが、暴力的ボルテージが高まった兵士たちを黙らせた。

リョウに向けられていた銃口たちはクローナへ移る。

 

「なんだ、おい。兵器になる予定の女がなんか言ってるぜ」

 

「やめて。と言ったんです」

 

「おいおいおいおい、手足も縛られて目隠しもされた女が、なにを言う」

 

「このニッポン人から、軽い質問をされただけです」

 

「質問? 軽いだと?」

 

「気分はどうか。ここの牢屋の居心地はどうか。疲れてないか。そんな質問です。私を兵器として扱う予定だから、調子を整えておきたかったのでしょう」

 

 クローナの機転により、リョウに対する疑いは解けた。

あくまでリョウは敵であると主張することで、兵士たちの敵意を誤魔化したのだ。

 

「まぁ。私はその全てにおいて、最悪と返してやりましたけども」

 

「ふん、だろうな」

 

「私を戦争に使うつもりなのでしょう。活躍させたいんなら、せめてスイートルームでも用意してはいかが?」

 

「はぁ? なにを」

 

「それに、なんですかこの手足と麻袋は。私の能力を使いたいくせに、能力を恐れてここまでするなんて、臆病なのね、あなたたち」

 

「そうか。じゃあ臆病者じゃない証に鉛玉をぶちこんでやろうか?」

 

「えぇどうぞお好きに。私を殺して処罰されるのは、あなたたちでしょうけど」

 

「ちっ。威勢のいい女だ。そのナメた態度をとれるのも今のうちだがな」

 

「知っています。だから今のうちにナメているのですよ」

 

「ふん。もういい。帰るぞ」

 

 すっかり熱も冷めた兵士たちは、腰に拳銃を戻して外へ出ていった。

諦めたのか、呆れたのか、どちらにせよ九死に一生だ。

 

「リョウ、あなたも戻りなさい」

 

「あ、あっしは……」

 

「戻りなさい。また疑われる前に」

 

 リョウは無言でこくりと頷き、その場を後にした。

 

 心の底ではニッポンに帰りたいと思っている。

その気持ちをしっかりと思い出させてやれば、協力することも不可能ではない。

今は記憶が曖昧で、ナイラ国の仲間だと思い込んでいるだけなのだ。

 

 完全な孤独と闇に包まれたクローナにとって、リョウは希望だった。

あと少しで、希望を手にすることができたのに――。

 

 リョウと入れ替わりになるように、今度は別の人物が地下へやってきた。

 

目隠しをされていてもクローナに察しが付く。

これはリョウと違って大きく重い足音。

兵士よりも大股で偉そうな歩き方。

おそらく、グールドだ。

 

「どういった要件なの、グールド」

 

「ほう。足音で気づいたか」

 

「足音で相手を当てるゲームをしていたの。なかなか面白いわよ」

 

「ふん。小娘が。調子に乗れるのも今のうちだぞ」

 

「さっきもそれ言われたわ。今しかチャンスがないから、調子に乗っているの。いつかは乗りこなしたいぐらい」

 

「威勢はいいな。自分が負けていることを忘れたのか」

 

「私は、負けてなどいない。希望は捨てない。戦争もしない」

 

「ほう? たとえ、母親と可愛い妹が人質にされていても?」

 

「――なっ」

 

 平静を装っていたクローナでも、その発言だけは無視できなかった。

 

 その一言だけで、心臓が暴れるように鼓動する。

 

「どんな要件かと聞いたな。人質を用意できたことを伝えに来たのだ」

 

「清々しいほど卑怯者ね」

 

「くくく。あのニッポン人のガキ、リンセンとか言ったか? あいつは、送り込んだ四天王がすでに始末しているはずさ。たとえ、四天王を潜り抜けても真の四天王もいるからなぁ」

 

「四天王でリンセンを押さえて、その隙に私の家族を狙うなんて、あなたらしい姑息なやり方ね。尊敬するわ」

 

「軽口が叩けるのは今のうちだからなぁ。今のうちに叩いてるがいいさ。だが戦争は始まる。クローナエスクードは家族を人質にされて、大勢の人間を能力で殺すのだ」

 

「それで、破壊の女神の出来上がりってこと? へー。面白い夢ね」

 

「けっこう! 破壊こそが美しさ。美しさこそ全て。あなたは破壊と殺戮の女神として、今後も活躍するのです。素晴らしいでしょう」

 

「そうね。でも私は、それでも諦めないわ」

 

「あくまで絶望しないか」

 

「リンセンはね、私が雇った用心棒なの。その四天王っていうのも、もうみんな負けていたら面白いわね」

 

「ふん。ありえんな」

 

「美味しい食事のためなら、徹底的に暴れる男よ。たとえ敵国の中心でもね」

 

「クソ女め。そう簡単にいくものか」

 

「クソ女……えぇ。なんだか腹が立つけど、元気が出る言葉ね。ありがとう」

 

「もういい」

 

 グールドは怒りを込めて無骨な鉄格子を蹴り、牢屋を後にした。

四天王や人質の件を出してもなお崩れないクローナの意志に負けた証だ。

 

 だがその言葉と違い、クローナの震えは止まらない。

自由も光も見えないこのピンチで、いったい何ができるというのか。

 

「クローネ。母さん。無事でいて……リンセン、無理しないで」

 

 

 

 四天王との激戦を乗り越え、リンセンはナイラ国の領土へ踏み込んだ。

 

 多少――いや、かなり腹が減ってはいたが、目的のクローナはすぐそこにいるはず。

ここで立ち止まるわけにはいかない。

 

 のだが。

 

「道が分からん。道が分からんぞ!」

 

 勢いだけで飛び出してナイラ国に到着したものの、肝心のクローナの居場所がつかめない。

ご丁寧に「クローナはこちらです」と親切な看板や張り紙などが用意されているわけもないのだ。

当然だ。

 

「クッソ……だが来ちまったものは仕方ない。あの四天王とかいう連中が俺を阻んだくらいだからな、ここで間違いはないはずだ」

 

 周囲はレンガ造りの建物ばかりで、建物同士の違いがほとんどない。

そのためリンセンには同じような風景にしか見えないうえ、そのどれもが驚くほど高く建てられていて周囲を見渡すことができない。

狭い通路や入り組んだ路地も多く、まるで迷路だ。

 

 変身して飛べばいい。

と、思うだろう。

リンセンもそう思った。

だが迂闊に変身して派手に目立つものなら、また敵に包囲されるだろう。

殺害を好まないリンセンには厳しい状況だ。

 

 腹も、鳴る。腹が、減る。

 

 まともな腹ごしらえもせずに戦闘をしようものなら、途中で力尽きるのは必至。

 

 数分迷った挙句、一つの結論が出た。

 

「こうなりゃ、イチかバチか一番デカい建物に入って適当に暴れてやるか? よし!」

 

 手の平をパンと合わせ気合を入れる。

 

 だが、何者かが背後からリンセンを呼び止め、その物騒すぎる有言実行を止めた。

 

「あなた、もしかして」

 

「あぁ? あっ! おい! てめぇ!」

 

「もしかして、あなた迷ってるの?」

 

 そこにいたのは、四天王の一人、ブーメランの達人であるルフィヤっ! まさかの強行! 背後からリターンマッチと洒落こむつもりかっ?

 

 

 

ブロトピ:今日のブログ更新 ブロトピ:ブログ更新通知をどうぞ! ブロトピ:今日の雑談日記 ブロトピ:はてなブログの更新報告♪ ブロトピ:今日の趣味日記