日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(14)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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ダメだ。

暗すぎる。

 

 この部屋は照明一つのみの薄暗い部屋だ。

なぜならば、グールドは薄暗い部屋が大好物だからだ。

たとえ透視できても、光がなければ目視できない。

 

 グールドは風呂のときもトイレのときもかかさず電気を消す徹底した暗闇好きである。

 

 徹底的な暗闇好き!

 

「待ちなさい! あなたたちの思い通りには! 決してならない!」

 

「ほう? なぜなら? なぁぁぜぇぇなぁぁらぁぁ?」

 

「食いしん坊のリンセンが駆けつけて、あなたたちを退治するのよ。私だって、本気で能力を使ったらナイラ国なんて簡単に滅ぼせるのよ」

 

 もちろん、国を亡ぼすほどの力を使えばクローナ自身の体が耐えられないのだが。

 

「ほほう! それは裏を返せば、あなたたちエンギルダ国も簡単に滅ぼせると捉えてよいのかね?」

 

「どうとでも捉えなさい。あなたたちみたいな戦争マニア、私は大嫌いよ」

 

「そうか。ならば……」

 

 グールドは自慢のペルシャ猫を抱き上げ、イスから立ち上がった。

 

 よく磨かれた革靴で一歩一歩クローナへ接近し、

 

「ふんっ!」

 

「うっ!」

 

 平手打ちが炸裂! 白く美しいクローナの頬に衝撃が走る!

 

「生意気な小娘が! 所詮、貴様なんぞ戦争の道具に過ぎんわ!」

 

「やっぱり最低ね、あなたたち。戦うことしか考えてない」

 

「ふん! くだらないことを言えるのも今のうちだぞ」

 

「分かってるわ。だから今言っているの」

 

「……ふん。もういい、この小娘を適当に閉じ込めておけ」

 

 黒スーツの部下がクローナを引っ張り、扉は閉じられた。

再び暗闇に飲み込まれたこの部屋に、グールドの下品な笑い声が木霊した。

 

 

 

 一方そのころ! リンセンは!

 

 手袋の変身能力のおかげもあり、特に苦労もなくナイラ国へ直進していた。

 

 一飛びで十数メートルは余裕なのだ。

荒野なんぞ、もはや無いに等しいものである。

 

 だが、かれこれ二時間ほどは変身を維持したまま活動している。ここまで長時間使用してようやく判明したことだが、なんとこの変身能力、あまり長く使用すると体力の消耗が激しくなるのだ。

 

 底なしの体力バカであるリンセンも、さすがに気づいた。

 

 荒野を一望できるほどの岩山の斜面を滑り降りている最中、リンセンの腹からみっともない音が流れた。

空腹のサインだ。

 

 そのサインを皮切りに、リンセンの移動ペースが大きく落ちてしまう。

照り付ける太陽の下で腹を押さえる全身鎧の男は、大きなため息を吐き出した。

 

「はぁー……腹減った。あいつを助けようにも、腹が減っちゃ戦はできねぇんだよ」

 

 ひとりごちて、変身を解除する。

 

 燃費の悪いリンセンの体では、これ以上の活動は不可能だ。

このまま敵陣に単独で突撃し戦闘になっても、まず勝機はないだろう。

 

 クローナの能力が悪用――戦争に使われることくらい、リンセンにだって理解できている。

一刻も早く救出せねば、クローナ自身も、国も、そして森の動物たちも滅ぼされてしまう最悪のシナリオも予想できている。

 

 だが動けない。

 

 空腹は、最大の敵だ。

 

 リンセンは空腹という名の新たなライバルに敗北し、歩みを止めた。

 

「腹、減った……だれか、なんでもいい。だれかなんか食わせてくれよ」

 

 浮かぶ雲が脳内で食べ物に変換されていく。

だが脳内でいくら食べようとも、永遠に空腹が満たされることはない。

 

 ただの風すらも甘い香りを運ぶ錯覚を覚えた。

エサを目の前に何分も待たされた犬のように、リンセンの口からたらりと唾液が流れ出る。

 

「誰か……食わせろ……俺に、メシを、食わせろ……」

 

 薄れていく意識の中で、リンセンの目に人影が飛び込んだ。

 

 地平線の彼方の存在だったが、その人物に微かに希望を抱いていた。

食べ物を所持していて、なおかつリンセンに差し出す確率は低いだろう。

 

 それでも。

 

 期待せざるを得ない!

 

「た、たのむぜ……お前がメシを持っているか否かで、この国の命運は決するんだぜ……さぁ、俺によこせ、メシを……メシを……っ!」

 

 そのとき、風に乗った肉の匂いが、リンセンの嗅覚を刺激した。

鼻を通過した匂いはやがて脳にまで達し、死に絶えそうだった活力に火をつけた。

 

「肉! 俺のぉぉぉぉ! 肉ぅぅぅぅ! よこせぇぇぇぇ!」

 

 彼方から接近する人影に向かって、四足歩行で突撃する。

オオカミか、ハイエナか、どちらにせよ食欲という名の暴力をむき出しにする獣なのは間違いない。

 

 すると彼方にいた人影が、踵を返して逃げるように走り始めた。

当然と言えば当然だ。

四足歩行の獣が猛襲を始めれば、逃げ出すのが普通だ。

 

 逃走の甲斐なく、人影はあっという間にリンセンに追いつかれ回り込まれた。

 

「ひぃぃ!」

 

 十歳ほどの少年は、顔を引きつらせてブレーキをかけた。

その手には白い紙に包まれた手の平サイズの何かがあった。

これが肉の正体だ。

 

「おい! その肉よこせっ!」

 

「えっ! え、ええと、うん、そのつもりだけど」

 

「あれ、おいお前、どっかで会ったことあるな」

 

 ごく最近、リンセンはその十歳ほどの少年に会っている。

のだが、記憶力の悪いリンセンがいくら脳内をひっかきまわしても、忘却の二文字が立ちふさがるばかりだ。

 

「ね、ねぇ。さっき町で助けてくれた人だよね?」

 

「あぁ? さっきだと? ああ、まさかお前、子犬を抱いてたあのガキか?」

 

 宿の前で、商会の跡取りに飼い犬を殴られた少年だった。

ここまで来てようやくリンセンが完璧に思い出すことができた。

 

「うん。そうだよ。でもビックリした。いきなり遠くの方でなんか飛んでくるんだもん。まさかと思って来てみたら、あのときのにーちゃんがいるなんて、ビックリだよ」

 

「あぁ。俺も急いでてな。でも腹が減って途中で燃料切れさ。その食い物、俺によこせ」

 

「えぇ? いや、いいけど」

 

 少年が包みを差し出すと、リンセンはひったくって中身を取り出した。

 

 その中身とはっ! 照り焼きチキンとシャキシャキレタスがサンドされているハンバーガー!

まだほのかに暖かく、日の光に照らされた油がキラキラと光っていて、食欲をそそらざるを得ないっ!

どんな小食もガッツクほどそそられるっ!

 

 一瞬で平らげたリンセンは、満足そうな顔で両の手を合わせた。

 

「あー、よし食った食った。腹いっぱいではねぇが、概ね満足だな」

 

「美味しかった?」

 

「最高だぜ」

 

 先ほどとは打って変わって、リンセンの表情は活き活きとしている。

とてもではないが、これから国を潰しにいく人間の顔とは思えない。

 

「そういや、お前はなんでこんな美味ぇもん持って歩いてんだよ」

 

「え、いや、僕が個人的に食べようと買って、丁度帰るとこだったんだよ」

 

「なんだ、お前のだったのか。悪ぃな食っちまって」

 

「いいよ。助けてくれたんだし。それより、どうしてこんなところにいたの?」

 

「あぁ? これからナイラ国に突撃すんだよ。腹立つ連中を十把一絡げにブチのめしにいくところだ」

 

「な、ナイラ国だって? どうして一人でそんなこと?」

 

「腹立つ連中をぶちのめす。ついでに人助けだ」

 

 リンセンは、そこまで正義感に溢れた発言をするつもりはなかった。

ナイラ国に対する怒りが大半を占めていて、英雄気取りをするつもりは毛頭ない。

 

 もちろんクローナを忘れたわけではない。

 

 一宿一飯の恩義もある。

美味いメシを食わせてくれる人間に、悪いやつはいない。

という単純理論だ。

クローナ自身と反りが合うかどうかは、また別問題だが。

 

 少年は、リンセンのその一言に心打たれた。

 

 クワンザなどの強力な軍事力を有するナイラ国を相手取り、果敢に挑もうとする凛々しい覚悟に、男らしさを感じたのだ。

 

 男らしさを! 感じたのだ!

 

 感じたのだ! 男らしさを!

 

「す、すげぇ! すげぇよ!」

 

「あったりまえだろーが。俺はすげぇんだよ。天下のリンセン様だからな」

 

「分かった! じゃあ、応援してるから! がんばって!」

 

「応援? んなもんなくなって、余裕で勝ってやっからよ」

 

 再びリンセンは手袋に触れ、瞬時に変身した。

 

 少年が二度目の驚愕を見せる前に、リンセンは地を蹴り、砂塵を巻き上げながら大ジャンプで彼方へ消え去っていった。

 

「じゃあなー! 名も知らぬ少年!」

 

 少年は、フェードアウトしていくリンセンを目で追いかけながらも、別れの言葉を聞き漏らすことはなかった。

 

 あの男は、何者なのか。

あの変身はどんなマジックなのか。

 

 突如現れた男に憧れた少年は、リンセンが消えた空へ手を振った。

 

 

 

 少年からもらったハンバーガーで活力を取り戻したおかげか、ナイラ国への移動は順調そのものだった。

 

 果てしない荒野を飛び越え、谷を乗り越え、森を抜ける。

本来は列車を使わなければ自殺行為である道のりなのだが、変身していれば造作もない。

 

 荒野は風が吹き荒れ、逆風となってリンセンを妨害する。

だがそんなものは、ネズミ一匹で猛獣を足止めするようなものだ。

今のリンセンには無風に等しい。

 

 複雑な高低差がある荒野をジャンプで移動中、ふとリンセンは足を止めた。

 

 数メートル下の地上、岩陰から何者かが針のようなものを射出した瞬間を見逃さなかった。

 

 咄嗟に身を翻し、射出されたそれを避ける。

目の前を細い銀色の針が通り過ぎて行った。

 

「なんだ、おい。吹き矢か……?」

 

 数メートル離れた相手に対して吹き矢で挑む心意気。

リンセンはその攻撃を挑戦として受け止めた。

 

「なんか知らねぇが。受けて立ってやるよ!」

 

 立っていた崖を飛び降り、地上へ降り立つ。

 

 乾いた大地が割れるほどの衝撃で着地するも、リンセンは顔色一つ変えることはない。

 

 手袋内部から混棒を抜き、針が射出された場所をにらみつける。

 

 リンセンは基本的に無鉄砲な戦法で戦うが、今回は違った。

あの目の前を通り抜けていった針――回避できなければ命中していた。

 

 それほどの力量を持つ人間で、なおかつ自分の敵となる存在と言えば、ナイラ国以外であるわけがなく、あの吹き矢もただの吹き矢であるはずがない。

 

 リンセンが敵陣へダイレクトに攻め込む前に撃退するつもりならば、当然、手袋による変身も視野に入れているはずだ。

並の兵隊を送り込むわけがない。

それに移動中に狙いを定めるほどだ。どこかで動向を伺っていた者もいる。

 

 導き出される答えは、

 

「こいつら、チームだな」

 

 吹き矢の他にも、密かに爪を研ぐ敵が、複数存在する!

 

 それも、リンセンの変身能力に匹敵する敵が!

 

「どこだ……吹き矢以外のやつ、どこにいやがるっ!」

 

 その瞬間だ! リンセンが三百六十度を警戒していたまさにそのとき、信じられないことに近くの岩壁から人が現れたのだ!

 

「てめぇ! いったいいつの間にっ!?」

 

 ニンジャのように巧妙に隠れ、ニンジャのような身のこなしで襲い掛かるその姿はまさにニンジャ!

長髪の若い男。

闇闘技大会の元チャンピオン。

その名は、

 

「俺様はディルハム! さっきの吹き矢はドブラのものだ! 貴様に恨みはないが、ここでくたばれアバヨ! さ!」

 

 ディルハムは変身などせず、武器も所持せず、体一つで豪快な拳を繰り出した。

 

 それを回避するだけなら造作もなかったが、そうはいかない。

四天王はそう甘くないのだ。

 

 ディルハムの攻撃に合わせ、二度目の吹き矢も射出されたからだ。

 

 リンセンはディルハムの拳を混で受け流しつつ、正面からの針も巧みに避ける。

 

 受け流しと回避を両立するのは至難の業で、さすがのリンセンもヒヤッと焦る!

 

 驚いたのは二人の連携だけではない。

その攻撃の威力と効果だ。

 

 ディルハムの拳は固い大地にめり込み、針は背後にあった木に深々と突き刺さり、数秒で土ごと腐らせてしまった。

 

 リンセンの予想、的中。

 

 こいつらは、普通ではない。

 

 

 

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