日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(12)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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「あの女? あのリョウっていう名前の?」

 

「そうだ。あのリョウとかってやつ、知り合いな気がするんだ」

 

「そうでしょうね。あなたと同じような手袋をしていたし、言葉遣いもニッポン人っぽかったわ。まさか、あなたの妹かなにか?」

 

「あぁ。少しだけだがな、なんとなくそんな気がする。あまり自信ねぇけどよ」

 

「そう。でも、僅かでも思い出せたのなら、収穫じゃない? もしかしてクローネと会ったおかげ?」

 

「あぁ? どういうこった」

 

「クローネは私の妹なの、リョウだって、あなたの妹かもしれないんでしょ?」

 

「そうだな。腹立つが、あのクソガキのおかげかもな」

 

「褒めてるのか貶しているのか、どちらかにしたら?」

 

「そうだな。じゃあ貶す」

 

「損するわよ、そういうところ」

 

「お互い様な」

 

 リンセンは紅茶のカップを掴むが、空になっていたことに気付き無言でクローナへ突き出した。

おかわりをよこせ、と、つまりそういうことだ。

 

 それくらい自分でやったら? と、クローナはため息で答えた。

 

 いいからよこせ。と、リンセンは再度カップを突き出す。

 

 再び大きなため息で返し、クローナは仕方なくカップを奪い取って部屋を出た。

 

 クローナが退出したあと、ふとリンセンが気配を感じて扉のほうへ目をやると、隙間からクローネがのぞいていた。

 

 真ん丸と大きな瞳による視線がくすぐったい。

 

「な、なんだよ、ガキ。なんか用かよ」

 

「お姉ちゃんの料理、美味しかった?」

 

「あぁ! 最っ高だぜ! あいつ、料理の腕だけは一流だな!」

 

「よかった。私もお姉ちゃんの料理大好き。いっぱい食べて、早くお姉ちゃんみたいな綺麗な大人になるんだ」

 

「あぁ? お前、あんな感じの大人になりてぇのか?」

 

「うん。美人で、頭が良くて、料理が得意で、私の憧れだよ」

 

「美味ぇもんいっぱい食えば、なれんのか?」

 

「うん。だから、私は残さず食べるんだ。……嫌いなものもあるけど、がんばって全部食べるんだ」

 

「の、残さず……全部……?」

 

 残さず食べる。

 

 クローネは幼いながらも、嫌いなものも含めて全て食べると豪語している。

それも、ただ食べるだけでなく、目標のためにだ。

 

 リンセンはクローネの小さな体に、とてつもないポテンシャルを感じた。

残さず食べるという至極当たり前の行動に、感銘を受けたのだ!

 

「偉いっ!」

 リンセンは控えめなパワーでクローネの肩をポンと叩く。

 

「え?」

 

「お前! ガキのクセに偉いぜ! 大人でも残すときは残すんだぜ!」

 

「そう? 全部食べるのは普通だと思うけど」

 

「いいや! お前は偉い! その歳でそこまでできるなんてよ! すげぇよ!」

 

「うーん? うん。私、早く大人になりたいからさ」

 

「うんうん! すげぇよ!」

 

 クローネにとって残さず食べるということは当たり前のことなのだ。

それが憧れのクローナが作る料理でなくとも、嫌いなものだろうと、出されたものは全て食べるのが彼女にとって常識なのだ。

 

 ここまで派手に褒められた理由はよく分かっていないが、褒められたことに対して悪い気はしていなかった。

 

 だが不意に、クローネの表情がキっと引き締まる。

 

「おい、どうした」

 

「リンセンって、誰かと争ってるの?」

 

「……あ? どういうこった」

 

「お姉ちゃんとリンセンって誰かと戦ってるんだよね」

 

「だから、どういうことだ」

 

「敵が、すぐ近くに来てるよ」

 

「――なにっ?」

 

 弾かれたように立ち上がり、扉から顔を出して様子をうかがう。

 

 リンセンは四方八方の殺気を探るが、周囲にそれらしい気配はない。

それどころか、人っ子一人の気配すらない。

あるのはクローナとフランの気配だけだ。

 

「おいクローネ。デタラメ言ってんじゃねぇぞ。どこにもなんもねぇじゃねぇか」

 

「分かるの? リンセン?」

 

「俺をナメんな。俺はなぁ、列車を一撃で食い止めて、早食いなら誰にも負けねぇ男だぜ。敵がいればすぐ殺気で気づくはずだ」

 

「ううん。もう少し遠いところにいるよ。あと、十秒くらいで到着するかな」

 

「おいおい、なにふざけたこと言ってんだ。つまんねぇこと言ってると、姉貴に言いつけるぞ」

 

「来るよ、本当に。お姉ちゃんを守って」

 

 クローネはリンセンの背中を押し、強引に部屋から追い出した。

 

「あぁ? あいつ、なに言って――」

 

 直後――台所の方から窓が割れる音が響いた。

 

 それはクローナたちの危機を知らせる警報でもあり、敵との戦闘開始を告げるゴングでもあった。

 

 リンセンは弾丸のように駆け出し、すぐさま台所へ飛び込む。

 

 床には無数のガラス片が散乱し、隅ではフライパンを握りしめて震えるフランの姿があった。

 

 クローナの姿は――見当たらない。

 

「お、おいあんた! クローナはどうした!?」

 

「あ、あああ、リンセンさん、そ、それが……それが、クローナが……」

 

「だ、だからクローナがどうしたってんだ!」

 

「へ、へへへんな黒い服を着た変な男たちが、そこの窓を割って……そ、それで」

 

 その先は言わずとも理解できた。

 

 ナイラ国の連中がどうにかしてここを突き止め、ダイレクトに襲撃し、見事にクローナを攫うことに成功したのだ。

 

 すぐに外へすっ飛んで変身したいリンセンだったが、一つ嫌な予感があった。

 

 ここを離れれば、クローナの味方をするフランやクローネが消されてしまう――ということだ。

 

 ナイラ国は、戦争のために人を攫うような良心の呵責などない連中だ。

邪魔者をあっさりと排除して、優雅に戦争をおっ始める魂胆は分かり切っている。

その辺のハエを叩き潰すのと同じような感覚で殺しをするだろう。

 

 だが追いかけねば、クローナに自由はない。

下手をすれば世界の危機だ。

 

 その時。

どちらを優先すべきか悩むリンセンを困惑させるように、玄関がぶち破られた。

 

「おいクローナの母ちゃん」

 

「は、はい?」

 

「今から変身する。驚いてもいいけど、騒がないでくれよ」

 

 手袋!

 変身に使うのは手袋!

 その力を開放し、リンセンの全身にパワーをみなぎらせるっ!

 

 瞬時に赤黒い鎧を身にまとったその一部始終を目撃し、さすがのフランも目を疑った。

疑わざるを得ないっ! のだ!

 

「な、ななな、なにそれぇ!?」

 

「悪いな。俺の特権だ。あんた自身と娘を助けたいって気持ちがあるんなら、どっかに身を潜めて待っててくれ」

 

 状況を飲み込めないままだったが、フランは何度も頷いた。

異国の人間に娘を託しても良いのかしばし迷ってもいたが、迷う暇がないことにも気づいている。

 

 リンセンは手袋越しの手の平から混を取り出し脇に挟む。

武器は万全だ。

あとは敵の姿や数を確認して、やられる前にやるだけだ。

 

 壁に背を預けて、玄関の様子をうかがう。

 

 確かに玄関は蹴破られていたが、それらしい気配はなく、クローナの部屋の扉も破られていない。

 

 どこだ。

 

 どこに何人いる。

 

 全神経を集中させ、警戒センサーを張り巡らせる。

 

 蹴破られた扉から吹き込む風がリンセンの頬を撫で、冷静さを失わせる。

 

 変身したことにより、感覚は研ぎ澄まされているはずだが、それでも敵の気配を察知することはできない。

 

「敵め……複数じゃあねぇな。単独だ。じゃなきゃ家ん中で気配を消せるはずがねぇ。それにクローナを攫った連中と違って、楽しんでやがる。まさか、俺と勝負したいだけだってのか?」

 

 一向に敵の気配が見つからないとなると、その線が濃厚になる。

 

 派手な侵入で警戒心を煽り、身を潜めて隙を伺い、じっくり攻めるチャンスを伺っているのだ。

その敵の目論見通り、リンセンは冷静さを失っていた。

 

 そのとき、リンセンは頭上にうっすらと殺気を感じていた。

だが当然、ニンジャのように天井に敵が張り付いているわけもない。

 

 となると。

 

「二階かっ!」

 

 気づいたときには遅かった!

 

 敵は二階から床を突き破りっ! 察知が遅れたリンセンの体へ一撃が振り下ろされる!

 

 鉄以上の硬度を誇る扇を用いて襲撃されたリンセンは、相手の姿を確認する隙もないまま床にねじ伏せられていた!

 天井が破壊されたことにより粉塵が巻き起こり! そして正体を確認することが厳しくなる。

しかし膝上までに抑えられた鋼鉄キモノ。

メットで顔を隠す小柄なシルエット。

まさしく、リョウだ。

 

「てめぇ……まだ生きてやがったのか」

 

「あっしは死んでなどいない。死ぬのは貴様なり」

 

「へっ、なにがナリだ。お前の攻撃なんてなぁ、屁でもねぇってんだよ!」

 

 フルパワーの混で薙ぎ払うと、リョウは既のところで飛びのく。勢い余った混は壁に突き刺さり、

再び粉塵を巻き起こした。

 

「これで、狙えるっ!」

 

 リンセンは粉塵でシャットアウトされた視界に臆することなく、リョウの着地地点へ向かって混をやり投げの要領で投擲した。

さすがのリョウでも着地直後の回避は容易ではないだろう!

 

 リョウは、粉塵を切り裂いて飛び込んできた混を避けることはできなかった。

が、直撃は逃れた。

扇一本で受けるには相当な衝撃だったが、大幅に体勢が崩れるほどではない。

 

 だがリンセンの投擲は、そのダメージすらも計算に入れた上での行動だった。

 

 混に気を取られたリョウの視界に、リンセンが出現っ! 天井ギリギリを跳躍し、まるで彗星のような飛び蹴りを混に向かってブチ込むっ! 蹴りの威力によって押し出された混がリョウの防御を貫いたっ!。

 

「不覚なりっ!」

 

 リョウは紙風船の如く壁へ叩きつけられる。

一杯食わされたリョウの表情は、悔しさで溢れている!

 

「おいどうした。馬車んときのアレはマグレか? しっかりしろよ、俺の敵を名乗るならな」

 

「おのれ、あっしを手こずらせるとは、やはり油断ならないなり」

 

「てめぇの目的はなんだ? クローナを捕まえたら終わりじゃねぇのかよ」

 

「あっしはただ、貴様を打倒したいだけなり。勝負するだけなり」

 

「へっ。なにが勝負だ。馬車での一戦で決まってんだろうが。クドいんだよ」

 

 

「……しかし、まぁいい」

 

「あぁ? なにがだ」

 

「やはり今日は調子が悪い。出直すとする」

 

「あぁ? いきなりなに言ってんだ。弱音吐いてんじゃねぇよ」

 

「貴様とは、もっと万全の状態で勝負したいなり。貴様も、もっと体勢を整えておくなり」

 

 好きなだけセリフを吐き、リョウはショートジャンプの連続で風のように家から飛び去っていった。

 

 リンセンは舌打ちをして変身を解除し、クローナの部屋を確認する。

 

「おいクローネ! 無事か!?」

 

 テーブルの下ではクローネがブルブルと震えていた。

ピアストルも同様に。

 

「り、リンセン。敵は? もういないよね?」

 

「あぁ。いねぇよ」

 

「でも、お姉ちゃんは? お母さんは?」

 

「母ちゃんは無事だ。だがクローナは攫われた」

 

 クローネは驚かなかった。

努めて冷静な表情を貫いていた。

 

 だが、決してクローネの心が強かったからではない。

クローネは気づいていたのだ。クローナが攫われたことを。

 

「お前、なんで敵が近くにいたって分かったんだ」

 

 

 

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