日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(5)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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「けっ、勝手にしろ。クソ女」

 

 早々に、しかもこんな場所で仲間割れになってしまった。

いや二人が仲間だったかどうかは謎だが、少なくとも協力関係は脆くも崩れただろう。

 

 歩き出して五分。

クローナの消耗は激しかった。

まともな準備もせず、方角も曖昧で、水もない。

ピアストルにも厳しい状況だ。

 

 振り返る。

すっかりリンセンの姿など見えなくなっていた。

調子こいてここまで来てから、ようやく後悔する。

意地なんか張るんじゃなかった、と。

 

「私、なんてバカなんだろう。焦ってるのかな」

 

 なるべく使いたくはないが、もしものときは能力を使って水でも出しておこうと思った。

意地を張って死ぬのは格好が悪すぎるというものだ。

 

「おいお嬢さん。一人か?」

 

 いつの間にか二人の大男が立ちはだかっていた。

どう見ても善人ではない。

盗賊や山賊の類だ。

 

「お嬢さぁぁぁん? 危ないよ、こんな荒野を一人で歩いていたら、悪人に捕まっちゃうよ。危ないよぉぉぉ?」

 

「な、なんなの、あなたたち。なんなの」

 

「いい質問だ。俺たちがまさに、悪人だよぉぉぉ!」

 

 下品な声をまき散らし、二人の男はクローナに襲い掛かった。

咄嗟のことに能力を使えなかったクローナはその場に倒れこむ。

 

 その時、颯爽とヤツが現れた。

 

「うるせぇ!」

 

「げぼぉぉぉおおお!!」

 

 これは痛いっ!

 

 男たちの顔に何者かの足が食い込んだっ! 歯が数本はじけ飛び、倒れ伏す。

これは何者かっ!? 颯爽と現れたこいつは、何者かっ!?

 

「テメェら、俺の目の前から消えねぇと、十把一絡げにぶっ飛ばすぞ!」

 

 男たちは小動物のように速攻でとんずらを決め込み、地平線の彼方へ消えた。

 

「あ、あなた!? どうしてここに?」

 

 そこにいたのは、もちろんリンセンだった。

 

「理由は三つ。俺は弱っちいやつを放っておくことが気に食わない。お前はともかく、そのハリネズミに罪はない。そして俺は、やっぱり美味いメシを食いたい!」

 

 こうして、たった五分の別行動は終結した。

 

 お互いに納得のいかないところはあったが、別行動をしても得をすることはない。

仲良くとはいかないが、二人は再び歩き出した。

今度は、お互いに横に並んで。

 

 この二人、反りが合わないように見えるが、不思議な化学反応がある。

いつか何かを成し遂げるような、そんな化学反応が。

 

 

 

 一方そのころ!

 

 リンセンたちを逃したラッツは、その無様な報告をするため本部へと戻っていた。

ボスがいる部屋は真っ暗で、目の前にいる男以外はほぼ見えない状況っ!

 

 これほどまでの失敗をすれば、失敗の責任を取るため命を奪われるだろう。

ラッツの額からは滝のように汗が止まらなかった。

危うしラッツ!

 

「ラッツ、貴様、失敗したな」

 

「は、はい……クローナエスクードとニッポン人は、逃がしてしまいました」

 

「そうか。そうか。ククククク」

 

 ラッツの目の前では、全身真っ黒スタイルの格好をした男が偉そうに足を組んで座っていた。

片手にはワイングラスがあり、金の指輪とネックレスが輝いている。

その膝には細い眼をした性格の悪そうなペルシャ猫が一匹。

こいつも偉そうだ。

 

 この男、グールドという名前以外はほぼ謎に包まれている。

ラッツも当然、その真実の姿や詳細を知らない。

 

「ぐ、グールド様! なんなりと、なんなりと罰をお与えください! この私に!」

 

 罰。

つまりそれは、死刑とほぼ同じようなものだ。

 

「罰か。罰ね。罰罰罰罰罰罰罰罰罰罰罰。ククク、その必要はないよ、ラッツ」

 

「そ、それはどういうことで……?」

 

「あのニッポン人。たしかサムライの国から連れてきたそうだねぇ」

 

「え、えぇ。その通りでございます。現在あのニッポンは、カタナと呼ばれる剣を腰にぶらさげるサムライなるものがいるそうです」

 

「うーん。それとそいつが持つ手袋も、面白いねぇ」

 

 ラッツから手袋については聞いていた。

 

 ただでさえズバ抜けた身体能力を有するリンセンが手袋を使って変身し、棍棒一本で電車を食い止めたことは、この男も驚愕した。

さすがに驚愕したっ!

 

クローナエスクードと一緒に逃がしたのはかーなーりの失態だけどねぇ。でもねぇ。それはそれで面白いよぉ、ラッツ」

 

「お、面白い、と言いますと」

 

「その隣の箱を見てごらん」

 

「は、箱ですか?」

 

 確かに、よく見るとラッツのすぐ横に棺桶ほどのサイズの箱があった。

 

 恐る恐るラッツはその箱を開ける。

 

「こ、これはっ! これはっ!?」

 

 箱を開けた直後、ラッツは飛び上がって腰を抜かした。

ガイコツか? 死体か? その箱の中身とはいったい!?

 

「ラッツ、恐れることはないよ。それは、きみの仲間さ」

 

「な、仲間……?」

 

 箱の中には、一人の少女が眠っていた。

クローナとそう変わらない、十七・八くらいの歳だろう。

 

花柄のキモノに、歩き辛そうなゲタを履いている。

まさにニッポン人の服装だ。

 

 その手には、リンセンと同じような手袋がつけられていた。

 

 ただし、獅子の模様が刻まれていたリンセンに対し、こちらは鷲の模様だったが。

 

「それはね、別に回収したニッポン人だ。そっちもリンセン同様に兵器として使ってやろうかと思ったけどねぇ。いやはや、性格に難があり、困っているんだよ」

 

「せ、性格に難が?」

 

「そうさ。やんちゃな性格でねぇ。ちょっと見てみようか」

 

 グールドがパチンと指を鳴らすと、箱で眠る少女が目を覚ました。

上体を起こすと、美しい黒髪がなびく。

 

 箱から出て立ち上がる。

その華奢な身体はどう見ても戦闘に適した体格ではない。

華奢で、小柄で、まるで子供だ。

 

「お、お言葉ですがグールド様。このような子供が、仲間と申されましても」

 

「まぁ見ていたまえ」

 

 壁のシャッターが開き、クワンザが三体も姿を現した。

これから始まる戦いを待ち望むかのように、無骨な関節を軋ませる。

 

「この少女の名はリョウ。リンセンに対抗できる、すごい子だよ」

 

 グールドがリモコンを取り出してボタンを押すと、クワンザの目が赤く光り、一斉にリョウに向かってジャンプした。

 

 その絵面っ! ハタから見ればただの殺しっ!

 

「あ、あああ! クワンザが飛びかかってきたら、ひとたまりもない! ひとたまりも!」

 

 ラッツが再び腰を抜かす。

 

 三体のクワンザはリョウに覆いかぶさり、小柄なリョウの姿は完全に消えた。 

 

 死んだ、さすがに死んだ。

 

 ラッツはそう思った。

 

 だが。

 

 突如、クワンザたちが爆風を受けて三方向に吹き飛んだっ! ラッツは目を疑う。なんだ、これは、と。なんなんだぁぁぁ!? これはぁぁぁ!? と。

 

 爆風の中心には、リョウがいた。

だが、さっきとはまるで姿が違う。

 

 頭部には桜が散りばめられた桃色のメットが装着され、キモノ風デザインの花柄鋼鉄スーツが全身を覆っている。

だが足元までの長いキモノではなく、膝少し上あたりまでの短いタイプだ。

 

 そしてクワンザたちを弾き飛ばしたのは刀でも槍でもない。

 

 その小さな手にあったのは、扇だ。

一撃で敵を粉砕する、鋼鉄製の扇。

 

 シノビか? サムライか? ゲイシャか? いや、どれも違うっ! リンセンと同じく、変身したのだっ!

 

 クワンザは諦めず再起動し、再びリョウに飛び掛かった。

リョウが鋼鉄の扇で軽く薙ぎ払うと、クワンザたちをたちまち一刀両断した。

 

「こ、これはっ!? これはなんだ!?」

 

「ラッツ、驚いただろう。こいつは我がナイラ国の兵器さ。鋼鉄のキモノを身にまとい、鋼鉄の扇を振り回す。まるで、超技術で作り出したスーパーテクノロジーキモノだよ。こんなものがニッポンにあるなんてねぇ。すごい国だ。サムライの国とは」

 

「こ、これは科学力なのですかっ!? ニッポンの」

 

「さぁ、それは分からないが」

 

「ぐ、グールド様。この少女がいれば、リンセンやクローナエスクードなど必要がないのではないでしょうか? これほど強ければ……」

 

「ラッツ。私はね。完璧を求めるのだよ、私はね。一つを手に入れたら、三つ集めないと気が済まない。そういうことだよ」

 

「で、では私の任務は、このリョウという少女とともに、クローナとリンセンを捕まえることで?」

 

「ザッツライト! その通りさ。じゃあ頼むよ。ザッツライト!」

 

「は、はっ! 直ちに! ザッツライト!」

 

 失敗したのに、命があっただけでもラッキーなものだ。

しかももう一度チャンスをくれるとはラッツは運がいい。

 

「でもね、ラッツ」

 

「は、はい?」

 

「次はないよ」

 

 ラッツは深く頭を下げ、グールドの部屋から退出した。

次は、ない。

 

 

 

「ここが町か」

 

 クローナとリンセンは、一時間をかけて町に到着した。

 

 木製の建物がいくつか並び、荷物を運び入れる馬車が何台も通過している。

だがほとんどの建物は使用されておらず、残っているのは寂れた酒場と小さなガンショップのみ。

 

「おい、どこが町なんだよ。ただの廃墟じゃねぇか、廃墟。建物よりも馬車のほうが多いしよ」

 

「そう? 確かに寂れているけど、悪い人はいないのよ。活気もあるし、気温が高いことを除けばいい場所なの。夕方になればガンマン同士がモデルガンで決闘を始めるし、さらに活気が出るの。チンピラだらけの町だったら、わざわざここに来ないわ」

 

「へっ。そうかい。まぁメシが食えればそれでいい。さっさと入るぞ」

 

 リンセンは舌打ちをしながらも、両開きの扉を開けて中に入った。

だが意外にも、人はほとんどいなかった。

 

 四人掛けの丸テーブルが四つ。

しかし店にいるのはマスターを含めて六人のみ。

 

「おいおい、これのどこが活気に溢れてんだよ。どこが」

 

「おかしいわ。いつもなら飲めや歌えやの大騒ぎなのに、おかしいわ」

 

 マスターに事情を尋ねると、今日は特別に暑いから、ということらしい。

確かに酒を飲むために気軽に立ち寄れる気温でもない。

 

「まぁ、うるせぇよりはいいか。おいクソ女、さっさとメシを注文しろ。美味い飲み物もな」

 

「……もう少し、頼み方ってものはないの?」

 

 ハンバーグ、骨付き肉、ステーキ。

とにかくカロリーの高そうなものばかり注文し、リンセンはその全てを平らげるつもりだった。

自称、無限の胃袋。

らしい。

リンセンの手にかかれば、メシなどたちまちに吸い込まれていく。

 

「おいおいおいおい! 美味ぇじゃねぇか! おいクソ女、お前はそれしか食わねぇのか?」

 

 クローナのテーブルにあるのは、少し大きめのハンバーガーとグレープジュースのジョッキのみ。

後はピアストルが飲む水が入った小さな皿だけだ。

荒野を一時間も歩いたにしては少々足りない量だが。

 

「わ、私は、遠慮しておくから」 

 

「ここで食っとかねぇと、後で大変だろ、おら食えよ」

 

 リンセンはフォークで突き刺したステーキの切れ端を、強引にクローナの口に放り込んだ。

 

「あふっ!」

 

「おら、美味ぇだろ! な! な!」 

 

 まるで自分が作ったかのようなテンションでリンセンは喜ぶ。

 

 だが食べなければ後が大変なのも事実だ。

クローナはしぶしぶステーキを咀嚼して飲み込んだ。

 

「私は、美味しいとか、そういうのは興味ないから」

 

「は!? 美味いメシに興味ねぇのかよ?」

 

「私は、味がよく分からないの」

 

「あぁ? どういうこった?」

 

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