日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(4)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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「おい、クソ人類の女。なにへばってんだよ」

 

 リンセンはクローナに容赦のない言葉を浴びせる。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。私は、今、すっごく疲れているんだから」

 

「あぁ? どういうことだよ。河に落ちずに済んだのは俺のおかげだろうが」

 

 大いに勘違いをしている。

これはクローナの能力によるものだ。

 

 そもそもこれは――

 

「バカ言わないでよっ! あなたが急に気が変わって飛び込まなければ、こんなところに来なくてよかったのに!」

 

「しょうがねぇだろうが! あいつをぶちのめそうとしたら急に腹が減ったんだからよ!」

 

「な、なんなの!? そんな理由なの!?」

 

「へっ。命があっただけマシだと思え。俺がいたおかげで死なずに済んだんだからな」

 

「ち、違うわ。ここまで来たのは、私の能力があったから。力を振り絞らなかったら、今頃は水面に叩きつけられて死んでいたはず」

 

「あぁ? 意味分かんねぇよ。いいからさっさと歩けよノロマ」

 

「の、ノロマっ!?」

 

 一瞬だが、怒りのせいで全身に力が漲った

だがすぐにそれは痛みに代わる。

 

ノロマだろうが。いつまでもグダグダグダグダ、女は貧弱だから困らぁ」

 

「あ、あなたね。そういう言い方は、どうなの?」

 

「いいからさっさと歩けよ。置いてくぞ」

 

「あ、歩きたくても歩けないの! あなたなんか不要だから、どこへでも行きなさい!」

 

「そうかい。じゃあ、そこで寝てな。ゆっくり寝てなよ」

 

 リンセンは良心のカケラもなく、ぷいっとクローナから背を向けた。

 

「ちょ、ちょっと待って! 待ってよ! ちょっと!」

 

 すかさず呼び止める。

疲れ切った体を晒していては、野生動物たちに上質な生肉を「はいどうぞ召し上がれ」と差し出しているようなものだ。

 

 地面が乾いていたから泥がつかなかったのが幸いか。

 

「あぁ? あんだよ、どっちだよ女」

 

「そ、その……おぶって。近くの町まで」

 

「俺を召し使いにするつもりじゃねぇだろうな? 悪いがそれは無理な相談ってもんだぜ」

 

「あなた、お腹すいているでしょう。私がご馳走するから」

 

「お、おい。本気か? 本気なのか、おい」

 

「そ、そうよ。あなたには助けてもらったんだから、お礼はするから。口は悪いけど……」

 

「一言余計だな、断る」

 

「う、ウソウソウソ! ウソだから! いいから、今だけは助けて! お願いぃ!」

 

 わずかな力を涙に注ぎ込んだ。

 

ここまで来たらヤケだとばかりに、子供のように涙を流した。

 

「わぁったよ! 近くの町までだぞ。またグズグズ文句言ったら捨てるからなクソ女」

 

「た、助かるわ!」

 

「そりゃいいけど、あのハリネズミはどうした」

 

「え?」

 

 リンセンの質問に答えるように、草むらからピアストルが姿を現した。

 

「ぴ、ピアストル! 無事だったのね!」

 

「そいつも連れてくんだろ、早くしろ」

 

 その場でしゃがみ込み、リンセンは背中を向けた。

乗れ、ということである。

 

「あ、あなたは優しいのか厳しいのか、よく分からないわね」

 

「あぁ? ゴタゴタ言ってると連れてかねぇぞ、おい」

 

「ご、ごめんなさい。分かったわ」

 

 ほとんど倒れるように、クローナはリンセンの背中におぶられる。

不服ではあったが、それはクローナを助けるための正義感ではない。

 

 

「お、重くない?」

 

「どうだかな。もうちょっと痩せてから言えよな、クソ女」

 

 やっぱりここで待っているべきだった。

 

 クローナの頭にはそんな後悔があった。

だが回復までどれだけの時間を要するのか未知数だ。

こんなところで待機するのは危険極まりない。

 

「んで、どこをどう進むんだよ」

 

「さっきの駅から見て、おそらくここは……名前は忘れたけど、知っている河よ」

 

「頼りにならねぇな」

 

「ううう」

 

「それで、どうすんだよ」

 

「ついさっきは山の上にある線路から落ちてきたの。だからあそこまで戻るのは厳しい。かといって河を登っても山しかない」

 

「つまり、下か。河を降りるのか、お前をおぶって」

 

「申し訳ないけど、そういうこと。下には荒野があって、進めばすぐ町に到着するから」

 

 それから、リンセンは文句を言いながらも河をひたすら降り続けた。

体力だけは無限のようにあるため疲れたとだけは言わなかったが、「面倒」や「やってられねぇ」といった文句は絶えなかった。

 

「ところで、さっきは手袋で変身したけど、あれは使えないの?」

 

 一撃で列車の動きを停めるほどの姿に変身できるあの手袋さえあれば、山くらいはひとっ飛びで楽勝にクリアできるはずだ。

だがリンセンは首を横に振る。

 

「あの箱ん中にいたせいか知らねぇが、いまいち力が出ねぇ。さっきは勢いだったからな、勢いでなんとかなった、勢いで」

 

「そ、そう」

 

 お互い、特別な能力を持ちつつも、それを使う余裕がない。

もし敵が出現すれば、厳しい勝負だ。

 

 クローナの体力も少し回復してきたころ、ついに河が終着した。

森だったエリアも次第に乾いた砂が混じるようになり、気づけば周囲には赤茶けた裸の山や砂の大地が広がっていた。

 

 雲一つない空から大きな太陽が照り付け、地上の水分という水分を全て奪う。

 

いくらか植物も生えていたが、申し訳程度のものでしかない。

本当なら、馬でもいなければ厳しい場所だが、進むしかない。

 

「おいおい、どこに町があるんだよ」

 

「あそこ見て、大きなとがった山があるでしょう」

 

 確かに、地平線の彼方にとがった山があった。

ひときわ高い山で、異常に目立っている。

 

「あの真下には町があるの。あそこを目指せば大丈夫だから。一時間くらい進めばいいから」

 

「あぁ? てめぇ、さっきはすぐ町があるって言っただろ」

 

「ここはコルナ荒野。一時間なんて近いほうよ」

 

「くそ、騙しやがったなクソ女」

 

「いいの? 町に到着すれば美味しいご馳走があるはずだけど。いいの?」

 

「ぐっ」

 

 滴る肉汁。

 

 輝く骨付き肉。

 

 そしてこの乾いた大地に必要不可欠の、冷たい水。

 

 ご馳走を想像すると、リンセンの口元から一筋のヨダレが流れた。

 

「あなた、お金なんか持ってないでしょう」

 

「わ、わぁったよ! 行けばいいんだろ行けば! ずる賢いぜ、クソ女」

 

「それと、そのクソ女っていう下品なのもやめて。私はクローナエスクードっていう立派な名前があるの。立派な名前が」

 

「はいはい。分かりましたよお嬢様。ご招待いたしますよ」

 

 舌打ちをしつつ、リンセンは荒野を歩きだした。

 

 この、一時間という時間。

クローナは絶好の機会だと思った。この謎の男について、質問する実にいい機会だと。

 

「あなた、あの変な箱に入っていたけど、何者なの? ニッポン人っていうのは分かるけど」

 

「あぁ? 俺もよく知らねぇよ。過去のことなんぞ分からん」

 

「そ、そう。じゃあ言葉が通じるのはなぜ? ニッポン人とは言語が違うはずだけど」

 

「なんだか分からねぇが、この国の言語を詰め込まれたよ。方法は分からんけどな」

 

 このエンギルダ国で兵器として使うためリンセンを連れてきたのだ。

言葉がわからなければ指示も出せないだろう

おそらくそのためにリンセンは言語を脳内に叩きこまれたのだ。

あくまでクローナの予想でしかないが。

 

「じゃあ、逆にニッポンのことは分かる? 家族のこととか、自分のこととか」

 

「さぁな。曖昧なんだよ。そんな感じがある」

 

 箱に閉じ込められるついでに記憶も抜き取られた。

そんなところだろう。

 

「その手袋については?」

 

「これなら覚えてる。サムライ魂を持つ男の頂点に立ったやつだけが扱える手袋……だったかな。まぁ、それは俺らしいがな」

 

 それも、あくまでリンセンの予想でしかないが。

 

「つまり、よく覚えてない、と? そういうこと?」

 

「だな。まぁどうでもいいけどな。それより、なんで質問する? 俺のこと知ってどうする」

 

「知っておいたほうがいいでしょう。こんなことになった仲なんだから」

 

「そうか。じゃあ俺からも質問がある。いいだろ」

 

「いいけど、べつに。どんな質問?」

 

「そもそもお前、なんであんな列車なんか乗ってたんだよ」

 

「私、能力があるから、いろいろなところに招待されるの。戦争などではなく、人を楽しませるためにね」

 

 能力があれば、軽いサーカスや舞台の演出などもお手の物だ。

 

 噴水を利用して水を噴出させたり、炎を操って派手に演出させて人を楽しませる。

それがクローナの仕事だ。

 

「楽しませる? その能力でか」

 

「そうよ。私なりにできる精いっぱいのことをしたいの」

 

「でもよ、そんなことしてたらすぐに周囲にバレるだろ」

 

「大丈夫よ。人前に出るときは仮面と帽子があるから。有名人にはならないの」

 

 こんな能力があるのだ。

クローナを悪魔と罵る人だっている。

悲しいが、人間とは異質なものに恐怖を抱くのだ。

だから無駄なトラブルを避けるため、仮面と帽子は欠かせない。

 

「ふーん、そういうもんか」

 

「そういうもの。私は普通じゃないから、普通

じゃないなりに生き方があるの。そうやって色々やっていたのに、ナイラ国は私を攫って戦争に利用しようとしたの」

 

「たしかに、俺をあんな箱に閉じ込めやがったあいつらなら、戦争に使いそうだ」

 

「あなたは、私のこと不気味だと思わないの? この特殊な能力とか」

 

「あぁ? 別に思わねーよ。クソ人類なんぞ興味ねーからな」

 

「……そう」

 

 理由はどうあれ、能力を不気味だと思われていないことに安堵した。

もちろん場所によっては、クローナを悪く言う人だって少なくない。

ンセンの無関心が、逆に心地いいものになっている。

 

「もう一個質問がある」

 

「はい?」

 

「能力のことに決まってんだろ。河に落ちるとこだったのに、なんであんなことできるんだ」

 

「能力については、あまり語りたくない」

 

「んだとおい!」

 

 背中を思い切り反り、おぶっていたクローナを背中から振り落とした。

 

不意に背中から地面に叩きつけられたクローナの頭の上からピアストルがボール状になって転がる。

 

「きゃっあ! ひ、非道じゃない! ちょっと、あなた非道よ!」

 

「てめぇ、俺は自分のこと説明したぞ。お前もちゃんと説明しろクズ女」

 

「ちょっと! さっきはクソだったのに、クズになってるじゃない!」

 

「クズはクソより下に決まってんだろ、カス女」

 

「カっ……」

 

「おいどうした、そこで寝てるか? この太陽の下で寝てたらステーキになるんじゃねぇか? ウェルダンになるまで寝てるか?」

 

「な、なによ! 私だって、もう立つくらいなら」

 

 僅かだが、力を込めることはできた。

 

 ピアストルを再び頭に乗せ、腰についた砂を払った。

 

「お、おい! 立てるじゃねぇか!」

 

「もういい。ここでお別れね。さようなら、ニッポン人」

 

 そう言い捨て、クローナはリンセンから見て左手に進んだ。

だがその先、町など見えない。

 

「おい、どこ行く」

 

「こっちに三時間進めば、別の町があるの。そこまで行く。一人でね」

 

「一人で行くだぁ? そんな細っこい体で行けんのか? 五分と歩けないだろぉが」

 

「だ、大丈夫よ。平気だから。大丈夫」

 

「歩くなんて面倒なことしてないで、体力が戻ったなら能力とやらを使えばいいだろ」

 

「できるだけ頼りたくないの。歩いて行くからいい」

 

 もうほぼ完ぺきと言っていいほど意地だった。

正直、たった一人でたどり着ける自信はなかった。

だがクローナも子供であり、リンセンに意地を張ることばかり考え、先が見えていないのだ。

この荒野、ナメたら本気で死ぬ。

ナメるの厳禁!

 

 

 

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