日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア16

f:id:oyayubiSAN:20190430231423p:plain

 

「ぐっ!」

 

「うわっ!」

 

 互いの勢いが合わさり、通常よりもダメージは跳ね上がる。

たまらずバランスを崩し、二人は背中から地面に倒れ伏した。

両者のメットは歪みも割れしない。

倒れはしても戦闘態勢は崩さず、ガッチリと両の足で立ち上がる。

 

「どうした? お前も盗賊団なんだろ? 動きは完全に素人みたいだがな。ほら、来いよ」

 

 挑発に乗り、ベルンは剣を構えて息を整える。

 

 再度来るベルンの一手に身構えていたマセルの目に、あるものが映った。

 

「ソフィア……?」

 

 ソフィアが棒になった足をさすりながら階段の前に立ち尽くしていた。

一緒にいるはずのキングストン連中の姿はなく、一人だけだ。

 

 呆気に取られて戦闘態勢が崩れたマセルに視線を合わせ、口を開いた。

 

「こ――」

 

 しかし放たれた言葉は最後までマセルの耳に届かず、気づけば距離を詰めたベルンの剣が襲ってきていた。

 

 マセルは全身全霊のそれを剣で押さえ込み、力と力の組み合いになる。

 

 ――剣が交差したとき、マセルたちにも解読不能な出来事が起こった。

 

「な、なんだ?」

 

 ウイントフックの剣に刻まれた赤い太陽のマークと、アスンシオンの剣に刻まれた青い三日月のマークが淡く光り輝きだした。

 

 同時に、ソフィアの左右の頬に描かれた太陽と三日月のマークも淡く光り輝く。

 

 それを引き金にしたのか、祭壇の頂上の中心にある不老不死の歯車に、ある異変が起きた。

 

「な、なんだなんだ!?」

 

 バンは突然のことに興奮を抑えきれない。

 

 マセルたちも交えていた剣を離し、歯車にくぎ付けになる。

高速で回転を始め、バチバチと電撃を迸らせた

それがエンジンの役割でも果たすように、台座が前方にスライドする

その下には地下へ続く階段があった。

 

「これは隠し扉……!? そうか、この歯車はニセモノで、本物はこの下か!」

 

 バンはベルンたちのことなど忘れ、吸い込まれるように地下へ走り去る。

 

「ま、待てっ!」

 

 マセルはよそ見していたベルンを正面から蹴り飛ばし、同じく地下へ飛び込む。

釣られたベルンが追いかけ、その場には静寂だけが残った。

 

 バレッタは地下になど入る勇気はなく、ソフィアは自分に起こった異常事態を理解するのに精いっぱいだったが、答えは出ない。

 

 置いて行かれたバレッタは、何をしていいのか分からずソフィアに声をかける。

 

「あ、あの、大丈夫?」

 

 ソフィアは数回まばたきを繰り返し、首をかしげる

 

「え、あ、何が起こったの? よくわかんないよ」

 

 問われてもバレッタにだって分からない。

 

「えぇと……どうしよう。マセルさんたちも戻ってくるか分からないし……」

 

「じゃあ追いかけようよ、あの人たち」

 

「ええ?」

 

 悩んで答えを出そうとしていたバレッタの腕を掴み、ソフィアは階段を駆け下りる。

 

 もう二度と遺跡になど来ないと誓い、引っ張られるまま地下へ進んだ。

 

 小太りな人間なら二人は入れないような狭い階段。

ここも今までと同じように壁や天井が光り、照明には困ることはない。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ! まだ心の準備が!」

 

 船が八つ裂きにされ嵐に飛ばされ海に落ち、影に襲われ高所から落下して今度は狭い階段から地下へ。

もうバレッタ疲労は限界だった。

 

「そ、ソフィアちゃんだよね?」

 

「えぇ? そうだよ!」

 

「えーと、どうしてここにいるの? あのキングスッポンって人たちは……? サンダルと、スリムと、オチャワンって人たち」

 

 正しくはキングストンのバンダルとスリブとガワンである。

 

「えっとねぇ。四人で小さいお船で近づいたらビューってもみくちゃにされて、気づいたら遺跡の中にいて、気づいたら道がぐんにゃりして、気づいたら一人ぼっちでいたよ」

 

「要するに、嵐で飛ばされて流れ着いて、今は迷子ってこと?」

 

「そーいうこと!」

 

 満面の笑みで自信満々に言われてもバレッタは安心などできない。

 

「それに、さっきソフィアちゃんのほっぺが光ったけど、あれはなに?」

 

「んー? 知らないよー」

 

「し、知らないって! だってこの遺跡と関係あるかもしれないんだよ!?」

 

「んー、でも知らないものは知らないしー!」

 

 明るい調子で出た答えに、バレッタの困惑はさらに大きくなる。

 

 ?マークと不安だらけになったが、勢いで駆け下りたおかげで最深部まで到達した。

 

 またもや四角形の広い空間で、奥には石造りの台座があり、二個目の歯車が浮いていた。

 

 いや、二個目だけではない。

台座の隣にはもう一つの台座があり、そこにも同じく歯車が浮いていた。

 

 大きさや色などは上にあったものと同じで、人が両手で抱えられる程度の大きさ。金とも銀ともつかない光を放ち、堂々とそこに存在している。

 

 歯車の美しさに見とれて笑っている男が一人いた。

バンだ。

 

 すぐ近くで剣を持ってにらみ合っている男が二人、マセルとベルン。

 

 お宝を目の前に争うトレジャーハンターと盗賊団――というより男そのものにうんざりしたバレッタは、マセルとベルンの間に入って争いを仲裁した。

 

「ストォォォォォォップ!」

 

 短い腕を左右に伸ばし、精一杯の声を響かせる。

それの効果があったのか、マセルたちの動きが止まった。

 

「なんでここに中学生がいるんですか? 邪魔しないで!」

 

 ベルンが下げた剣を構えなおして言う。

 

「ちゅ、中学生じゃなくて二十歳(ハタチ)ですってばぁ!」

 

 言いたいこととは別の言葉が出てしまい、バレッタは仕切りなおす。

 

「あ、いや、そうじゃなくて。もう争いなんてヤメてください! マセルさんたちが争う理由なんてないじゃないですか!」

 

「下がってろバレッタ。これは男と男の戦いだ。一歩下がれば負けなんだ」

 

「そうですよ。僕にはやらなければならないことがある。ここで引くわけにはいかないんだ」

 

 マセルとベルンの勝手な発言に、バレッタ怒りは沸騰する。

 

「もう! なんで男の人ってこんなのばっかりなんですか! いい加減にしてください!」

 

 今度こそ力一杯の叫びが効いたのか、マセルたちは剣を下げて変身を解除した。

全身を覆っていた鎧が消え、マセルたちは素顔で対面する。

だが仲直りの握手とはいかず、ベルンはバンの下へ向かった。

 

「もう戦いは終わりました。歯車を持って帰りましょう」

 

「は、ははは……あぁ、そうだな。はははははは」

 

 バンはカバンから大きな布の袋を取り出し、ベルンに渡した。

 

 そしてバンは光り輝く不老不死の歯車に、触れた。

そこでバンの体に、ある異常が起こる。

 

「ううう、なんだぁ! これは!」

 

 バンに感染したように、歯車の光が身体へ移っていった。

 

 触れた指先を起点に光が腕を進み、首と下半身へ枝分かれしてあっという間に全身が光に浸食された。

 

「ハハハハハ! 素晴らしい! 素晴らしいよ!」

 

 全身を埋め尽くした光はバンにとっては心地が良いものであった。

光輝く身体に喜びを覚えるバンに、マセルたちは身動き一つとれない。

 

 不気味、という言葉が全員の脳裏をよぎる。

 

「見てくれよベルンくん! 僕様は不老不死だ! なんだかとてもいい気分だよ!」

 

「あ、あなた、なにをしているんですか? あなたは不老不死になんて興味ないって言ってたじゃないですか」

 

「なにをバカなことを言っているんだ! 僕様は最初からこれが狙いだったんだ!」

 

 両手を広げ、全身で不老不死の喜びを表現する。

 

「最初から不老不死が目的だなんて言ったら、気味悪がってついて来なかっただろう? きみがいなかったら黒いアスンシオンたちのところで死んでいたかもしれないしね」

 

「盗賊団はお宝をお金に換えるんじゃないんですか。そのためにここへ来たんでしょう」

 

「僕様にとって不老不死は、ただの不老不死とは違う! 僕様は史上最強の盗賊団だ! 強く逞しく賢く美しい! それを永遠に保てるなんて、これ以上のことはない!」

 

「お前、ぶっ壊れてるな」

 

 マセルが剣を向けて静かに言う。

 

「ああ? なんと言った? 薄汚いトレジャーハンター」

 

「お前の頭がぶっ壊れてるって言ったんだよ。頭にスパゲティでも詰まってんのか」

 

「そうかい? 不老不死なんて、どの人間でも求めてるものだろう?」

 

「俺はそんなものいらないね。死なないってことはスリルもないってことだ。たしかに溺れたり落ちたりはもうゴメンだ。でもなぁ、スリルを忘れたら、もう冒険なんかじゃねぇ」

 

 マセルは大きく息を吸い込み、二秒で考えた決め台詞を披露しようとしていた。

 

「それはもう……「ただの散歩ですっ!」

 

 決め台詞を奪ったのはバレッタだ。

鼻を鳴らし、自慢げに言った。

 

「おいバレッタ、俺の良いところを横取りするんじゃない」

 

「あ、ごめんなさい。なんとなく言いそうだったので」

 

「なんとなくだと? なんとなくで俺の大事な場面を横取りするなよ」

 

 マセルとバレッタが言い合いを始めるが、それこそ大事な場面で主役を奪われたバンは我慢ならない。

 

「黙れ! 下らないことをほざくんじゃあないぞ! トレジャーハンターめ!」

 

「下らないのはお前だろ。もっかい言ってやる。お前はぶっ壊れてるんだよスパゲティ野郎」

 

「き、貴様……」

 

 バンは歯車を離し、マセルに歩み寄った。

 

 歯車を離してもなおバンの体から光は絶えず、不老不死の効果は消えない。

マセルから視線は外さず、ベルンに手を伸ばす。

 

「ベルンくん。きみは僕様の不老不死をどう思う? 歓迎するかい?」

 

ブロトピ:今日の芸術・人文情報

ブロトピ:ブログを更新しました!ブロトピ:本のおすすめ

ブロトピ:自由に追加できるブロトピ

ブロトピ:今日の雑談日記