日々を駆け巡るoyayubiSANのブログだよ。

日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア14

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「ベルンくん、なにをぼうっとしている」

 

 バンには表情が見えなくてもある程度は心を読み取れている。

 

「あれ……?」

 

 気づけば、ベルンの手の平からは血が消えていた。

一滴どころか、跡すら残っていない。

 

「どうした」

 

「あ、いえ……銃の弾はまだありますか?」

 

 考えるのは後回しにし、今は戦闘に集中することにした。

 

「あぁ。心配いらない」

 

「せいぜい死なないようにしてください。こいつらは全部倒します」

 

 ベルンは剣を握りしめ突撃し、バンは銃で加勢した。

本人たちにそのつもりはないが、息のあった共闘である。

 

 次々と黒アスンシオンは滅されてゆき、敵は数秒たらずで全滅してしまった。

 

「どうやら、全部やっつけたみたいだね。じゃあ、次に進もうか」

 

「次? 次ってどこに行くんですか?」

 

「さぁね。この遺跡は気まぐれで僕様たちを消しに来るようだし、この先もなにか仕掛けてあるだろう。でもトレジャーハンターや盗賊団の帰り道なんて、いつも後で探すものなんだ」

 

「安心できない言葉ですし、敵と一緒に僕を撃つ人に言われたらもっと安心できませんね」

 

「そうか。ありがとう」

 

 ベルンはバンのことを疑いながらも進まないわけにはいかず、とにかく前進を続ける。

 

 黒アスンシオン集団が出現した広い空間を抜け、会話もないまま数メートルを進む。

だが依然として道の変化もなく、トラップもない。

 

 拍子抜けしつつも警戒を怠らないバンは、弾の入った銃をクルクルと回しながら、ベオグラード遺跡についての分析をベルンに話す。

 

「ベルンくん、これまで数々のトレジャーハンターが帰ってこれなかった理由が分かった」

 

「なんですか、いちおう言ってみてください」

 

ベオグラード遺跡は生きているんだ。侵入した者を排除するためにね。さっきの黒いアスンシオンたちはまだ挨拶代わりの攻撃だろう」

 

「このまま進めば、また別の試練があると思います。そもそも帰れるのかも怪しいですが」

 

「あれ、怖いのかい?」

 

「違いますよ。ただ、この調子で本当に不老不死の歯車を手にできるか、心配なんです」

 

「心配なんてしていてもしょうがない。男なら探求心で勝負をしないと」

 

「それともう一つ気になることが」

 

「なにかね?」

 

「侵入したトレジャーハンターはたくさん死んでいるはずですよね。どうしてここまで骨の一本もないんでしょうか?」

 

「それはどうだろう。ほら、ここに一つあるよ」

 

 一本道を進む道中、バンは壁と床の隙間に気になるものを発見した。

 

「これは……骨ですか?」

 

 人間か動物かまでは判別不能だが、壁の下には指が一本入るほどの隙間があり、そこから尖った骨が一本だけはみ出していた。

 

 まるで壁がシャッターのように閉じて挟まれているかのようで、二人は直接目にするまでもなくその先に空間があるのだと理解する。

 

 バンはその隙間に指をかけ、持ち上げようとした。

 

「ん? ダメだな。重すぎてまったく動かないよ」

 

 バンの力では足りないと分かり、役目をベルンに託すことにした。

アスンシオンに変身しているベルンなら開けられると予想して。

 

「しょうがないですね。僕がやります」

 

 アスンシオンに変身しているベルンがやると意外にもすんなりと壁は開き、またもや長い長い一本道が続いていた。

 

 しかしベルンは道よりも、下に転がる骸骨を見て一歩後退する。

 

「こ、これは人ですよね」

 

 何十年前からそこにいるのか、骸骨はボロ布を羽織っていた。

腰にナイフを備えていたものの、その人物を守る刃にはならなかったようだ。

 

「見慣れないか。死んでるってことは、こいつの命を奪ったトラップがあるということだ」

 

「解除できるんですか?」

 

「うーん。というより、すでに解除は済んでいるようだ」

 

 ベルンが床を見ると、一つのブロックだけが不自然に凹んでいるのを確認できた。

 

「この凹んでいる床はおそらくスイッチだったんだろう。で、この骸骨くんはこれを踏んで何かしらのトラップで死んだ。つまりもうトラップは終わっているということだ」

 

 ベルンがその言葉を信用に足るべきか吟味しているところで、バンは構わずに骸骨を跨いで進んでいった。

慎重さのなさすぎる行動にため息をつくベルンへバンはふり返る。

顎に指を当て、口をへの字に曲げて頭を回転させる。

 

「ベルンくん、先に行ってくれ」

 

「は?」

 

「五メートル先、ここには罠がある。でも避けることはできない」

 

「ど、どこにそんなものが」

 

 ベルンが目を凝らして見ても、五メートル先にそれらしいものはない。天井にも床にも壁にも、怪しい部分はない。

 

「僕には見えませんが」

 

「五メートル先の右の壁、僅かに出っ張っている部分がある。そこにセンサーのようなものがあるはずだ。それに触れればトラップ発動だろう」

 

「その僅かな出っ張りが根拠ですか」

 

「いいや、盗賊団としての、ただの勘だよ」

 

「そうですか。凄い信用できる言葉で安心できますね」

 

 大きなため息をつき、バンの適当さにうんざりする。

 

「で、肝心のトラップはどういうもので?」

 

「さぁ。それは分からないよ。おそらく炎か、鉄球か、圧縮か、それともカマイタチで切り刻むか。でもまぁ、生身の人間なら一撃で死ぬだろうね」

 

「生身じゃないからって僕で実験ですか」

 

アスンシオンがあれば余裕なんだろう? 拳銃も通じなかったんだ。心配ないさ」

 

「あれも実験だったんですね。このときのための」

 

 怒りを抑えるベルンのことなど気にもとめず、バンはカバンからライトを取り出した。

 

「ライトはいらなんじゃなかったんですか?」

 

「いいや、使うんだよ。実験にね」

 

 ライトから水電池(みずでんち)を一本だけ抜き、トラップが仕掛けてあるだろうエリアへ投げつけた。

回転しながら放物線を描き、二人が見守る中、五メートル先へ到達。

――直後、水電池は滝に投げつけたかのように跡形もなく消えた。

 

 さすがのバンも目を疑うが、直後に好奇心に変わる。

 

「面白いね! 見たことのないトラップだ! ベルンくん、この先は別の空間に繋がっているはずだ。行ってみようか」

 

 バンの勘は外れていた。

トラップではなく、別空間への入り口だったのだ。

 

「そうですか。面白いのならお先にどうぞ」

 

 バンは手を叩きながら進み、なんの躊躇も警戒もなく“見えない壁”の中に入っていった。

 

 それを見てもなお信用できないベルンは、身構えながら見えない壁へ進む。手を先に入れると、切断されたように手だけが見えなくなり、思わず手を引っ込める。

戻ってきた手がしっかり残っていて安堵し、意を決して全身を潜り込ませた。

 

 ――そこには、両手を広げて歓喜するバンがいた。

 

「ベルンくん! 見たまえ! ここは素晴らしい場所じゃないか!」

 

 二人が次に見たものは、これまた広い空間だった。

 

 壁や天井の光る模様は同じだったが、黒アスンシオン集団と戦った空間とは別格の広さで、一気に千人は入れるテーマパークを作れてもおかしくはない。

 

 サイコロの六の目のように左右に六本の柱が並び、天井までは余裕で数十メートルほどあった。

中央には長い上り階段の付いた祭壇があり、ベルンたちはその階段の真下へやってきていた。

見上げるだけでも疲れるような祭壇で、上るだけでも骨が折れそうな高さだ。

 

 バンは部屋そのものにも興奮していたが、階段を上りたくてウズウズしている。

 

「はやく上ろうよベルンくん!」

 

 急かすバンのテンションについてゆけず、ベルンは何度目かのため息をつく。

 

 ――マセルサイド――。

 

「えっ――?」

 

 とバレッタが階段の一段目を降りた、次の瞬間――。

 

 そこにあったはずの階段は幻のように跡形もなく消え去り、奈落へと続く落とし穴に変わった。

踏み出した体を戻す暇もなく、バレッタは重力に任せて落ちていった。

 

「またピンチかよバレッタ!」

 

 地を蹴り、マセルはバレッタを抱えて落下する。

 

「もう落ちるのはコリゴリだぁぁぁぁ!」

 

 ウイントフックに飛行機能が備わっているのなら話は別だが、そう便利なものが都合よく出るわけもない。

 

 ウイントフックの耐久性を信じ、目を回すバレッタを抱えて背中から落下していった。

 

 一秒、二秒、三秒、四秒、五秒、六秒が経過。

 

「うわあああああ!」

 

 何メートルの落下か把握できないが、マセルには空から落ちたほどの高さに感じられた。

地上とはどれくらい離れたのか、とてつもない距離を落ちている。

 

 ようやく地に激突。

マセルが失神直前の精神を叩き起こすと、ウイントフックの変身を解除して立ち上がった。

 

「あぁ……クッソ、ここ最近は落ちたり溺れたりばっかだな」

 

 落ちたのは約六秒。

 

 かなりの高さを背中から落下したのにも関わらず、マセルの体にはほとんど傷がなかった。

それよりも精神的ダメージのほうが大きく、嘔吐寸前だった。

 

 気分が悪くなったがそれどころではない。

マセルは目を瞑るバレッタを起こす。

 

「おいバレッタ、起きろよ。到着だ」

 

 バスで乗り過ごしたような起こし方をすると、バレッタはゆっくり目を開いて半身を起こした。

 

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