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日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア23

お題「マイブーム」

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アピア! おい! 返事をしてくれ!」

 

 ベルンは足を滑らせ、着地の際にアピアを離してしまった。

 

 ゴロゴロと転がるアピアは小さな石にコメカミをぶつけ、そこから血の線が伸びていた。

 

 何度も呼びかけていたが、呼吸をするだけで目を覚ます気配はない。

ただでさえソウル病で短い命の灯が消えるのを黙って見ているほど呑気じゃない。

 

アピア……アピア……!」

 

 呼吸はまだ続いているが、ここに医者はいない。

最善の策が、見つからない。

 

「ベルン!」

 

 叫んだのは反対側から来たマセルだった。

 

 ここで医者が駆けつけてくれたらどんなに心強いか、軽く残念に思うベルンだが、仲間が助けに来た感謝は忘れていない。

 

「ベルン、大丈夫か!」

 

「僕は大丈夫です。でも、アピアが」

 

「とにかくバレッタたちのところに運ぼう」

 

「運ぶって……どうするつもりですか?」

 

「俺に医療知識なんてない。でもとにかく血を止めて、呼びかければなんとかなるかもしれん」

 

 他に策もなく、ベルンはアピアを抱っこして移動させた。

少しでも煙に当たらないよう移動し、バレッタたちのところへ辿り着く。

 

 どうにか、どうにかしてアピアを救わねば。

幼い頃から世話になっているアピアを今ここで助けられなければ、ベルンは生きている意味の半分を失う。

わらにもすがる思いで、ベルンは助けを求めた。

 

「お願いします! 誰か、誰かアピアを!」

 

 ――その後、バレッタたちの助けもあり、辛うじて出血は止めることができた。

本格的な消毒や止血はできず、ほぼ自然に止まったようなものだったが、幸いにも大したケガでないだけでも皆は安心した。

 

 呼吸も安定し、眠っているのとそう変わりない。

しかし無防備なアピアだけをここに置き去りにするわけにもいかず、ベルンはアピアを背中におぶることにした。

 

「とりあえずは、大丈夫そうだな」

 

 マセルは額の汗を拭い、一息つく。

 

 だが本番はここからだ。

 

 まだ遺跡の入り口にすら立てていないことを忘れてはならず、そもそも入口があるのかどうかも定かではない。

 

「やっぱり……アピアは連れてくるべきじゃなかった」

 

 ベルンは力づくでも止めなかったことを後悔した。

 

 マセルたちは周囲を見渡し、アルジェ遺跡の確認に徹する。基本は短い草の生い茂る平面だが、突き出た岩がいくつか目立っていた。

 

 それだけならまだ地上にもありそうな景色だったが、一番の違いは空の上にあるということと、中心に四角形のブロックで囲まれた階段があったことだ。

 

「俺、ちょっと見てくる」

 

 マセルがそれだけ言い残して階段へ歩を進める。

だがその足は、バレッタに腕を掴まれたことによって止まった。

 

「待ってくださいマセルさん」

 

「なんだよバレッタ

 

「また無計画に行くつもりですか?」

 

 いつもの癖を突かれ、しばし迷いが生じる。

 

だがそれはマセルにとって小さなことで、今は何より前に進むことが目的となっている。

足を止めるわけには、いかない。

 

「俺は確かに無計画だ。でもここで止まってたって道は拓けない。ここまで来た以上は、進むか残るかの二択だ。バレッタ、お前はどうする?」

 

 バレッタはそれに質問で返した。

 

「……マセルさんは、いつもそうやって冒険しているんですか?」

 

「ウイントフックがないときからそうだった。トラップやらなにやらは自分の力で解除して、出口なんて後回しだ。そもそも遺跡なんて調べてどうにかなるものじゃないしな」

 

「それ、カッコつけてるつもりですか?」

 

「トレジャーハンターも盗賊も、ほとんどが運だ。実力だけじゃ生き残るなんて無理なんだよ」

 

「じゃあ、このアルジェ遺跡にも出口があるとは限らないですよね」

 

「絶対とは言い切れないな」

 

 高所のため、地上に比べて薄い酸素。

深呼吸をしても効果は薄いが、けれどもバレッタは落ち着かない深呼吸を繰り返した。

 

 死ぬ可能性は高い――バレッタはアルジェ遺跡への突入を反対こそしなかったが、やはり胸の中は薄黒い不安が充満していた。

 

 かと言ってここに残るのも心細く、安全とも限らない。

 

「でもバレッタ

 

 バレッタから答えが出るより早く、マセルは次の質問へ移行した。

 

「お前は来るな。危険だ」

 

「き、危険なのは分かってますけど……」

 

「お前はここまで俺らを運んできてくれた。それだけでも凄く感謝している。ベオグラード遺跡のときに、もう俺とは行きたくないって宣言したのに、それでも来てくれた。お前は凄いよ」

 

「わ、私は……」

 

 バレッタの目が、次第に涙目になる。

 

「どうする、バレッタ

 

「……残ります。私なんかが行っても役にたちそうもないですから」

 

「そうか。分かった」

 

 バレッタはマセルの手を離し、進めなかった一歩を踏み出した。

 

 まだ迷いの残るバレッタを背にして、階段を目標に地面を踏みしめる。

 

 油断すれば遺跡ごと落ちるのではないだろうか、そんな不安を抱きながらもマセルは前進をやめない。

振り返ることもしない。

振り返れば、きっと涙を浮かべたバレッタがいるはずだから。

 

 階段は人二人が横並びに歩いて丁度いいほどの広さで、左右は小刻みに草の生えた黒い石壁に挟まれていた。

 

 誰かが丁寧に点検しているのか、階段は石造りながらも綺麗に整っており、崩れたり割れたりといった目立った外傷はない。

 

階段の下、奥には同じような石の壁があり、おそらくあれが扉だろうとマセルの勘が告げる。

 

 まさか侵入してすぐに海水が流れ込むなんてことはないだろう、床が抜けて海へ真っ逆さまなんてことならあり得るが……。

 

半信半疑で階段を下りる。

 

 扉らしい壁に手をかけると、睨んだ通り真ん中には扉らしく細い隙間があった。

 

ウイントフックに変身し、隙間に指を入れて左右に力をこめる。

 

 だが、叩いても斬っても扉は口を開けなかった。

 

 ソフィアを扉の前に連れてきた。

具体的にどうするかはさておき、ここにいれば扉が開くだろう、といったマセルの予想でしかない。

 

「なぁ、ソフィア、なんとかならないか?」

 

「えー? わかんないよ」

 

「なんでもいいから」

 

 ソフィア自身にどうにかする算段などなかったが、とにかく何かをすることにした。

 

 とりあえず扉に触れてみる。

 

 ――すると。

 

「マジか!」

 

 二枚の扉に赤い太陽のマークと青い三日月のマークが浮かび上がり、重い音を響かせながら左右に開いた。

 

 中は太陽光が届くような場所ではなかったが、ベオグラード遺跡と一緒で壁や天井に不規則な模様が刻まれており、はっきりと通路が見えるほど光っていた。

 

 マセルの推測は当たっていた――ソフィアとベオグラード遺跡とアルジェ遺跡、この関連性は濃いものだと、いま証明されたのだ。

 

 未踏の遺跡に挑戦するつもりのマセルだったが、その前に確認するべきことがあった。

 

「なぁソフィア、お前、この遺跡のことは知らないんだよな?」

 

「分かんないよー」

 

ベオグラード遺跡についてもか?」

 

「べおぐらーど?」

 

「海に飛び込んで脱出した遺跡だ」

 

「うん。あそこも知らないところだよ」

 

「お前は知らないかもしれないが、その頬に描かれた太陽と月のマークは無関係とはいえない」

 

 本当に、ソフィアには何も分からない。

これほどの関連性を見せておきながら、ソフィアの脳内には欠片も情報がない。

 

「俺とお前が会った、ジャメナン遺跡の記憶もないか?」

 

「うーん。気づいたらあそこにいて……」

 

「気づいたらキングストン連中と一緒にいたのか?」

 

「うん。あそこにいるより前のことはサッパリ分からないよ。でも、なんか、大きな決断をしたような気がする……いいや、よく覚えてないや」

 

「なぁ、もしもこの遺跡でお前の謎が解けるとしたら、どうする?」

 

「うーん。知ることができるなら知りたいかなぁ」

 

「分かった。ソフィアがそう言うなら、進むしかないな」

 

 戻るにしても頼みの綱であるアテネ号は完全に大破した。

いつものマセルのように、帰り道は後で探すほかない。

となると、どんなことになろうとも遺跡を進むしかない。

 

「ベルンを連れて、アルジェ遺跡を探索する。でもソフィア、ここからはどんな危険があるか分からない。この入口を見る限りは、お前の存在は必要不可欠になると思うが」

 

「……よーするに、一緒に来てほしいってこと?」

 

 話の分かるソフィアで助かった、とマセルは頷いた。

 

「マセルさん、どうですか?」

 

 まだ扉の件を知らないベルンが進捗具合を確認しにマセルたちの下へやって来た。

 

 背中には眠ったアピアをおぶったままだ。

 

「あっ」

 

 すぐに状況を理解し、冷静な表情で階段を下りる。

 

「どうやって開いたんですか?」

 

 マセルがソフィアを連れてきたとき、ベルンは扉については聞いていた。

 

「ソフィアのおかげだ」

 

 それには冷静さを保てなくなり、さすがのベルンも目を丸くする。

 

「その子、いったいなんなんですか?」

 

「俺にもソフィア本人も分からん。それを探るためにも遺跡に入る必要がある。ベルン、ここからはおそらく危険な冒険になる。アピアを連れてでも行くか?」

 

「もしもアピアが眠っていなければ、絶対に行くというはずです。そのために同行してますし」

 

「その子のことはお前が守るんだぞ……って言われなくても分かるか。じゃあ行くぞ」

 

「その前に一つ」

 

「なんだ? 手短に頼む」

 

バレッタさんはどうするんです?」

 

「あいつは行かないって言った。十分に活躍してくれたよ、ここまで連れてきてくれたんだ」

 

「そうですね。危険ですし」

 

「じゃあ、今度こそ行くぞ」

 

 マセルたちは意を決して、アルジェ遺跡内部へ一歩を踏み出した。

 

 どのトレジャーハンターも盗賊団も知らぬ未知の領域。

 

 どれほど危険なのかも予測できない、謎だらけの場所へ――。

 

 

 

 ベオグラード遺跡と違い、不意に道が歪んだりはしなかった。

マセルはその点を少し残念に思ってはいたが、仲間の支えがあって順調に進めるのは幸運だった。

 

 長い階段――一本道でも用心し、すでにウイントフックとアスンシオンには変身している。

 

けれでも、何も起こらないのが逆に不安を募らせる。

 

「マセルさん、トレジャーハンターとしての勘でいいんですけど、ここってどんな危険がありそうですか?」

 

「この様子だと、行けば何かが正面から襲って来ると思う」

 

「なにか、とは?」

 

「獣か、石でできた兵士か、予測できんな」

 

 どこからなにが襲撃しても対処できるよう、上下前後左右に警戒センサーを張り巡らせる。

一番に守るべきなのは、ソフィアと眠っているアピアだ。

 

 ――だが警戒の甲斐もなく、階段はそこで終わった。

 

「マセルさん、なにもありませんでしたね」

 

「喜べ、傷一つつかずに進めたことをな」

 

 階段から下にはこれまた広い空間があった。

 

 黒ウイントフックたちが出現したベオグラード遺跡の空間と違い、円形状で縦長。

高さは十メートルほどあり、見上げても天井と壁しかない。

正面には先に進める道があり、まだまだ長い一本道が続いている。

 

「マセルさん、素人の僕にも分かります。これ、なにかトラップがありますね」

 

「だろうな。すんなり進めるとは思わないほうがいい」

 

アピアたちはどうします・・・?」

 

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