日々を駆け巡るoyayubiSANのブログだよ。

日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア18

お題「マイブーム」

f:id:oyayubiSAN:20190430231423p:plain

 

三章 アルジェ編

 ――マセルサイド――。

 

 何度目になるか、マセルはまたもや海に流された。

 

 そして何度目になるか、マセルはまたもや助かった。

 

 カナヅチにはカナヅチなりの幸運があるのか、それともカナヅチだからこそ何度も海に流されるのか、荒事が苦手な人間に限って何度も殺人事件に遭遇するのと同じだろうか、どちらにせよ助かったことは不幸中の幸いだった。

 

「う、どこだここは……?」

 

 マセルは朦朧とした意識でウイントフックの変身を解除した。

 

 隣に倒れているのはソフィアで、安らかに寝息をたてている。

立ち上がり、ずぶ濡れのソフィアを起こす。

 

「うううーん?」

 

 ゆっくりと目を開け、目を擦って周囲を確認した。

 

「どこー? ここ?」

 

「ソフィア、大丈夫か?」

 

「うん大丈夫だよ。ぜんぜん平気」

 

「マジかよ。けっこう深いところから流されたのに。っていうか、これで何回目だ……?」

 

「んー? なんだろ、頑張って息とめてたし」

 

「そういう問題なのか?」

 

「んー、それより、ここどこなんだろう?」

 

 二人は周囲を見回す。

 

 真っ白で機械的な倉庫のようなところだが、窓もないため外の様子が分からない。

 

 音もなく人もいないため、どこかの僻地に隔離されているのかとマセルは心配したが、その心配をかき消すようにすぐ扉から人が現れた。

 

「大丈夫?」

 

 そこにいたのは、リンベル・アルマトゥイだった。

 

「あれ、リンベルさん?」

 

「も、もしかして、マセルくん?」

 

 リンベルの弟であるナウルとマセルは親友同士だったため、マセルはリンベルとも面識があった。

 

 だがナウルが飛行機事故で亡くなった五年前から、マセルとリンベルは会っていない。

 

「なんでリンベルさんが? ここ、どこなの?」

 

「ここは、その、船の中。あなたたちを海の中から引き揚げたのよ」

 

「マジかよ……」

 

「ここは海から引き揚げた物が集まる倉庫みたいなところ。なんでカナヅチのマセルくんが海から出てくるの? また冒険? そっちの女の子は誰? 遺跡で拾ったの?」

 

 次々と来る質問に、マセルは一言で答える。

 

「俺、冒険が好きだからさ」

 

「五年ぶりだけど相変わらずぜんぜん答えになってない」

 

 そりゃそうだよな、とマセルは思い、一から説明することに。

 

 ジャメナン遺跡でソフィアに会ったこと。

老不死の歯車を探すためにベオグラード遺跡へ行くことになったこと。

そこで不老不死の歯車を見つけたもののニセモノだったこと。

そこで盗賊団と対決し、遺跡が崩落して脱出したこと。

運に身を任せて海に飛び込み、そして引き上げられたこと。

 

「盗賊団って、もしかして……」

 

「あ? カストリーズ盗賊団のバンジュールフリータウンだとよ」

 

「やっぱり」

 

「やっぱり? 知ってるのか?」

 

「だってここ、カストリーズ盗賊団の船よ?」

 

「リンベルさん、もしかして盗賊なの?」

 

「ワケあってね。でも詳しくは訊かないで」

 

「まぁ、いいけど」

 

「それで、あの人はどうなったの?」

 

 マセルはバンの訃報を伝えることに戸惑った。

 

 察したのか、リンベルは答えを促す。

 

「いいわよ別に。正直に言ってもらっても」

 

「死んだよ、あいつは」

 

 リンベルは顔色一つ変えない。

 

「ちなみに、死因は?」

 

「不老不死の歯車に触れて、しばらくは平気だったけどすぐに力を失った。そのまま遺跡が崩れ始めて、あとは知らない。でも助からないだろうな」

 

「そう。それと、男の子もいたでしょ?」

 

 ベルンのことだ。

 

「いたよ。あいつは大丈夫だと思うけど、ここにはいないのか?」

 

 リンベルはバンの訃報を聞いたときよりも少し悲しそうに首を横に振った。

 

「それより、あなたたちびしょ濡れじゃない? カゼひくよ」

 

 肯定するように、ソフィアはクシャミをした。

薄着で海の中を流されてカゼで済むのなら安いほうだ。

 

 リンベルは背中を向け「こっちよ」と医務室へ案内した。

だがマセルはそれについていかず、さらなる質問をぶつけた。

 

 どうしても、行方を知らなければならない人物がいたからだ。

 

「ちょっとまってリンベルさん、あの、中学生みたいなヤツいなかった?」

 

「中学生?」

 

「大きい帽子で、二本のベルトをクロスして、背の小さいヤツ」

 

「見てないけど」

 

「そうか……」

 

 マセルは自分に罰を与えるように胸を強く叩いた。

ナウルのように、自分が弱いせいで死なせてしまったかもしれないからだ。

 

 バレッタを抱えていたマセルの側にはソフィアがいるという事実。

運よくマセルとソフィアは一緒に引き上げられたが、だからといってベルンとソフィアが一緒にいるとも限らない。

そもそもベルンすらちゃんと助かったのか定かではない。

 

「マセルくん、とりあえずその子を連れてこっちに来て」

 

「あ、あぁ」

 

「それと、マセルくんに訊かせたい話もあるし」

 

「訊かせたい話?」

 

 リンベルは海から引き揚げたマセルとソフィアを医務室へ連れて行き、落ち着いた状況で話をすることにした。

 

 ほぼ白一色の室内には、白い棚に白いベッドが用意されている。

リンベルはこれまた白いタオルをマセルたちに渡し、三人は丸イスに腰かけた。

 

「それで、訊かせたい話って?」

 

ナウルのこと。もちろん覚えているでしょう?」

 

 リンベルは直球で質問をぶつけた。

 

「私、ちょっと困ってたのよ。私だけ事実が伝えられてさ」

 

「それは、その、ごめん」

 

 マセルはナウルの死亡を確認していた。

 

 それでも仲間に事実を伝えるべき理由も勇気もなく、リンベル以外には行方不明という報告をしていた。

 

 リンベルのほかにナウルが死亡したことを知っているのはバレッタのみである。

 

「今でもナウルのことは忘れない。マセルくんがトレジャーハンターになったときだって、どこでどんなことをしているのか心配してた。ナウルみたいになるんじゃないかって」

 

「俺は、大丈夫だよ」

 

「大丈夫? カナヅチのクセに海から引き上げられたのに?」

 

 それに対して言い返すことはできない。

 

「なんでよりによってベオグラード遺跡なのよ。せめて地上にしときなさい」

 

「仕方ないだろ。キングストン連中が行くっていうから、ヤツらに悪用されるわけには――」

 

 そこで「はっ」と気づき、マセルは立ち上がった。

 

 隣でチンプンカンプンな顔をしているソフィアの肩を掴む。

 

「おいソフィア、そういえばキングストン連中はどうした?」

 

「えー? 知らないよー」

 

「知らないって、ずっとヤツらと一緒にいただろう。ベオグラード遺跡の中では見かけなかったが」

 

「それがねー、四人でベオグラード遺跡に小さいお船で行ったらビューってもみくちゃにされて、気づいたら遺跡の中にいて気づいたら道がぐんにゃりで、気づいたら一人ぼっちでいたよ」

 

「ようするに、遺跡ではぐれてあの歪む道で偶然にもソフィアだけ辿り着いたってことか……」

 

「まーそういうことかなぁ」

 

 マセルはなんとなく納得し、またベッドに腰かけた。

 

「そういえば、ベオグラード遺跡は難攻不落と聞いていたが、ずいぶんと奇妙なトラップが多かったな」

 

「マセルくんたちが生き残っただけでも凄いわよ」

 

「道は歪んで別の道に変わるし、俺の分身が襲ってきて戦ったし、もうワケが分からない」

 

「なにか秘策があったの? あのバンでさえ死ぬところなのに」

 

「あ、あぁ。それが、別の遺跡で見つけたお宝のおかげだ」

 

「もしかしてその靴?」

 

 勘のいいリンベルはすぐに正解を言い当てる。

 

「そうだ。全身が鎧の姿に変身して、通常よりも何倍も強くなる」

 

「そういうのあるんだ。じゃあ、トレジャーハンターとしては怖い物なしってところ?」

 

「水と空以外なら、な」

 

 威張って言うことでもないが、マセルは自信満々に答えた。

 

「空、ねぇ……マセルくん。空にも遺跡があるって言ったら、どうする?」

 

「空に遺跡? おとぎ話とかじゃありきたりだけど、なるべくなら高いところは勘弁だな」

 

「あ、そう」

 

「え、なに? なにかあるの?」

 

 リンベルは無言でソフィアの鼻先を指さした。

 

 驚いたソフィアはその指先に視線が集中する。

 

「そっちの子、普通の子じゃないね……」 

 

 

f:id:oyayubiSAN:20190616211157p:plainf:id:oyayubiSAN:20190616212453p:plain

f:id:oyayubiSAN:20190616212658p:plainf:id:oyayubiSAN:20190616212738p:plain

 

ブロトピ:今日のブログ更新 ブロトピ:ブログ更新通知をどうぞ! ブロトピ:今日の雑談日記 ブロトピ:はてなブログの更新報告♪ ブロトピ:今日の趣味日記