日々を駆け巡るoyayubiSANのブログだよ。

日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア15

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「う~ん……あれ、あれれ?」

 

 バレッタは無事だった帽子を直し、マセルに対して二、三度、目をぱちくり。

 

「あの、マセルさん。私、死んでないですよね?」

 

「心配するな。無事に奈落の底に落ちてきたぞ」

 

「ウイントフックの力はすごいですけど、圧倒的に喜べる状況じゃないですよね」

 

 二人で周囲を見渡すと、そこは広い空間だった。

 

 サイコロの六の目のように六本の柱が左右に並び、天井まで数十メートル。

まさに、ベルンたちのいる広間と同じだった。

 

 しかし祭壇より遠く離れているうえにベルンたちとは反対の位置にいるため、落ちてきたマセルたちには気づいていない。

 

「いやバレッタ、そうでもないぞ。あれを見ろ」

 

 中央には長い階段のついた祭壇があった

バレッタが見上げると、それだけで首が痛くなるほどだ。

 

「あの先って、なにがあるんです?」

 

「この雰囲気ならあそこに不老不死の歯車があるはずだ。どーりでトレジャーハンターたちが帰ってこないわけだ。あんだけの高さから落ちたら、ウイントフックじゃなきゃ生きて帰れないしな」

 

「じゃ、じゃあさっそく上りましょうか」

 

 我慢できなかったマセルはウイントフックに変身し、バレッタを担いでニンジャの如く速足で階段を駆け上った。

 

「わ、わわわわ! いきなりなにするんですか!」

 

「なにって、普通に上ってたら日が暮れちまうぞ!」

 

「だからっていきなり担ぐことないじゃないですか!」

 

 文句を言いあいながらも、階段はすでに半分まで上っている。

 

「こっちのほうが早いんだ。我慢してくれ!」

 

 観念したバレッタはため息をつきつつ、ふと左にある一本の柱へ目をやる。

そこに小さな人影が見えた。

 

「マセルさん。あそこ、誰かいますよ?」

 

「なに?」

 

 マセルは足を止めて、指をさされた左方向へ目をやる。

 

 柱の影、何者かが隠れていた。

 

「ソフィア?」

 

 遠くからでも分かるエメラルドグリーンのロングヘアーは、誰の目から見てもソフィアだった。

 

 マセルたちに気づいたのか、ソフィアは柱の影に身をひそめた。

 

「あ、そういうことか」

 

 マセルはベオグラード遺跡をアタックする前に聞いたあることを思い出した。

 

「そーいやキングストン連中もベオグラード遺跡に行くって言ってたな」

 

「ということは……?」

 

「ソフィアがいるということは、キングストン連中もいるってことだ。あいつらの相手をするのは面倒だからな、まずは不老不死の歯車が先だ」

 

「え? いいんですか?」

 

「不老不死の歯車を見てからでも遅くない。行くぞっ!」

 

 マセルは再び踏み出し、残りの階段を駆け上り始める。

 

 普通なら気が遠くなるような距離の階段でも、ウイントフックがあればバレッタを担ぎながらでも大した苦ではない。

 

「うおおおお!! 歯車ぁあぁぁあ!!」

 

「私への恩返しも忘れないでくださいよ!」

 

 雄たけびと共に、マセルたちは祭壇の頂上へ到達した。

最後の一段で高く飛び、両足をそろえて着地する。

 

 そこは正方形で、ゾウが五頭は入れるほどの広い場所だった。

下を見れば鳥肌が立つほどの高低差があり、高所恐怖症のマセルなら確認しただけで何度目かの失神をするだろう。

 

 だからマセルは下を見ないようバレッタを降ろし、ただ中心に輝く不老不死の歯車だけに視線を集中させた。

 

「これが……」

 

 人間が両手で抱えられるほどのサイズで、石造りの四角い台座の上で歯車は浮いている。

そして金にも銀にも見える眩い光を放っていた。

 

 なぜ歯車の形状をしているのか、なぜ不老不死になれるのか、それを知るトレジャーハンターなどこの世に存在しない。

 

 おそらく初となる、不老不死の歯車へ到達したトレジャーハンターだ。

 

 その伝説へ、ついになった。

 

 はずだったが。

 

「それは僕様のだ!」

 

「は?」

 

 マセルの伝説への到達を、ある男が邪魔をした。

 

 バンはほぼ同時に到着したマセルの動きを声だけで封じる。

 

 いつになく興奮した様子で、鬼のような表情でマセルへ接近した。

 

「それに触るな! 汚らわしいトレジャーハンターめ!」

 

「な、なんだよお前!」

 

「まさか、あんな小さな船でここまで来たのかい? すごい度胸というか運というか、頭が悪いにもほどがあるなぁ!」

 

「なんで船のこと知ってんだ? いや、まぁいい……」

 

 マセルは嵐にかき回されて沈んだことを思い出し、船の件を頭の中から振り払った。

 

「ところで、きみもどこかでその鎧を手に入れたのか?」

 

 バンは盗賊団の目で、マセルの全身を品定めする。

 

「どうでもいいだろ俺のことは。で、お前は誰だ?」

 

「おいおいおい、僕様を知らないのかい? 僕様はカストリーズ盗賊団のボス、バンジュールフリータウン!」

 

「あ? カストリーズ盗賊団だと? 遺跡のお宝を奪って裏で金に換える下品な連中か」

 

 それには、バンは腹を抱えて大笑いを決め込む。

自分を下品だと思っているのが可哀そう、だと嗤(わら)ったのだ。

 

「下品! なるほど、トレジャーハンターは頭が悪い! 僕様が気に食わないことその八、それは美しさを理解できない人間だ。僕様という存在は素晴らしくて! それでいて美しい! 理解できないならば、貴様には下等生物代表という称号を与えよう!」

 

「そんな汚ねぇ称号はいらん。俺は帰る」

 

「帰るだと? そうやって僕様を油断させるつもりか。そんな女子中学生まで連れて」

 

 よくある間違いにバレッタは頬を膨らませて飛び跳ねる。

怒った姿もまるでウサギだ。

 

「ちゅ、中学生じゃなくて二十歳(ハタチ)ですってば!」

 

「どっちでもいいよ、邪魔者はここで消させてもらうからね」

 

 バンは自分が上ってきた階段へ目をやると、丁度のタイミングでベルンが到着した。

指をパチンと鳴らし、まるで召使いのようにベルンを呼ぶ。

 

「ベルンくん! 丁度よかった、こいつらを消し去ってくれたまえ!」

 

 頂上にやって来たばかりのベルンが状況を把握するには時間を要したが、すぐに目の前のマセルたちが敵なのだと理解する。

 

 それでも、自分と似たウイントフックの姿には驚きを隠せない。

その反応はマセルも同じで、あのとき落とした靴の所持者だと、トレジャーハンターの直感が言った。

 

「だ、だれですかこの人たちは。それに、その鎧……」

 

「ベルンくん。こいつらはトレジャーハンターだ。きみの欲している物を奪おうとしているんだ。さぁ早く倒してくれ!」

 

「――なんですって?」

 

 ベルンは戦闘態勢を作り、メットから剣を抜いた。

 

「きみは覚悟を決めたはずだろう? じゃあ、今がそのときだ」

 

 そうだ。

 

 今までイジめられていたベルンは、ついに力を手に入れた。

自分で勝ち取った力ではないものの、それは結果的にベルンを強くした。

 

 盗賊団との協力だろうとも、アピアを助けるためには、自分の使命を果たすしかない。

 

「あなたたちに恨みはありませんが、渡すわけには行きませんっ!」

 

「おいケンカ売るっていうか? ならしょうがねぇ。やってやるよ!」

 

 マセルは事情を説明しようともせず、同じく剣を抜いてマセルと対峙した。

 

 唐突に始まったマセルVSベルンに、バレッタは口を挟めず無言で立ち尽くすことしかできなかった。

 

 ウイントフックとアスンシオン――重なったのは偶然なのか必然なのか運命なのか、銃弾や高所からの落下に平然と耐えるほどの力で、常人を遥かに超えられる靴での勝負。

 

 止められる人間など、ここにはいない。

 

「勝負っ!」

 

 マセルが渾身の縦一閃を繰り出す。

激流を切り裂くような一撃を刹那的な反射神経でベルンは回避し剣が空を切った。

 

 剣先が床を叩き壊し、小さな穴が穿たれた。

その隙を見逃さず、ベルンはハイキックを肩に繰り出し続けて斜めに切り伏せる。

強烈な摩擦によってマセルの体から火花が散るが、それでもウイントフックは切り裂かれない。

 

「容赦はしませんよ!」

 

 もうすぐでアピアを助けられるとなれば、ベルンは本気で攻撃する。

 

 たとえ相手が見知らぬ人間だろうと、初対面だろうと、手加減という言葉はない。

ただ盲目的に、邪魔者を排除するのみだ。

 

「……もうすぐで……! もうすぐで、きみを助けるっ!」

 

 ベルンは剣を両手で握り祈るように真正面に構える。剣が蒼い輝きを帯び始めた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 

 輝きが頂点に達し、ベルンは片足を一歩後ろに下げる。

 

「行くぞ!」

 

 地を蹴り、怯んだマセルの正面から高速のショートジャンプで距離を詰める。

同時に空中で縦に回転し、命中した際の威力を爆発的に上昇させた。

 

 マセルもハイそうですかと正直にそれを受けるわけがなく、しかし逃げるという選択肢もなく、剣を構えた。

 

 バレッタの家の前でバンダルたちをカッ飛ばしたときの、バットのような構えだ。

 

「うぉりゃぁ!」

 

 マセルはベルンの一撃と真っ向から勝負をするつもりだった。

 

 狙い通り、剣と剣が激突し、周囲に絶大威力な爆風を生み出す。

 

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