日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(11)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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「お、い……だれが悪人だ! おい!」

 

「リンセンも、子供が言うことでしょ。我慢しなさい、我慢」

 

「あぁ!? てめぇのしつけが悪いんだろーがクソ女!」

 

「子供の言うことくらい軽く流しなさい。しかも、またクソ女に戻ったの?」

 

「てめぇなんか、クソ女で十二分に事足りるだろうが。それで満足しろよ」

 

「そう。じゃあ、クソ女の用意するご馳走には興味ないのね」

 

「てめぇはやっぱりクソ女だが! ご馳走には興味ある!」

 

「正直ね。逆に清々しいけど」

 

「そいつぁどうも」

 

「そう。良かったわ、本当に」

 

 今まで何度も繰り返したやりとりを終え、クローナはパンと手を打って仕切りなおした。

 

「母さん、リンセンにご馳走したいの。一緒に作ってもらえる?」

 

「えぇ、もちろんだけど、その顔の傷、大丈夫なの?」

 

 リョウの扇による傷だ。

数センチずれていれば大惨事になりかねかなかった傷だが、幸いにもかすり傷程度で済んでいて出血はなかった。

だがフランはさっそく気づいていたようだ。

 

「大丈夫よこれくらい。気にしないで、大丈夫」

 

「……そう? じゃあ、作りましょうか、一緒に」

 

「えぇ。その間、クローネをリンセンに任せるっていうのは、どう?」

 

 と、リンセンに首をかしげるクローナ

 

「げっ、俺かよ。ふざけんな。ガキは嫌いなんだよ」

 

「そう? クローネはあなたのこと気に入ったみたいだけど」

 

 クローネはうるうるした瞳でリンセンの腕に抱き着いていた。

当然、そんな瞳で見つめられれば、古今無双天下無敵のリンセンも断れない。

 

「しょしょしょ、しょうがねぇな。メシを食わせてくれるってんなら、ガキくらい余裕だ」

 

「そうよね。十把一絡げなリンセンなら、子供の一人くらい余裕よね。あとハリネズミも」

 

 キャスケットの上で眠っているピアストルをクローネの頭に乗せる。

 

長旅で疲れていたせいか、眠ったままだ。

 

「じゃ、よろしくねリンセン。美味しいご馳走、待ってて」

 

 ひらひらと手を振って、クローナはフランと共に奥へ消えた。

 

 あとに残されたのは、小さな手でホールドされたまま身動きが取れないリンセンと、クローネのみ。

 

「お前、あんまりくっつくなよ。あいにくガキは嫌いなんだ」

 

「あなた、ニッポン人でしょ? お鼻が低いから、ニッポン人」

 

「だからどうした。文句でもあんのかクソガキ」

 

「クソガキ? クソガキなんて汚い言葉使っちゃいけないって、お姉ちゃんが言ってた」

 

「そのオネーチャンに言っとけ、クソガキは綺麗な言葉だってな」

 

「ウソでしょ、それ。綺麗な言葉を使わないと、心まで汚くなるよ」

 

「それもオネーチャンが言ってたのか」

 

「ううん。私はお母さんから聞いた。お母さんはおばあちゃんから聞いた」

 

「そのオバーチャンは誰から聞いたんだよ」

 

「お姉ちゃんから聞いたって言ってた」

 

「……」

 

「なに?」

 

「ったく、姉妹揃ってとんでもねぇ連中だ。それより、いい加減に離れろ」

 

 腕を払ってクローネを追い払った。

不服そうな顔で腕から離れるが、落ち着かない様子だ。

 

「ところでよぉクソガキ、一つ訊きたいんだが」

 

「私、クソガキじゃないよ。クローネ・エスクード

 

「はいはい。じゃあクローネ、一つ訊きたいんだが。お前も、あいつみたいな能力を使えんのか? あの、目で見たものをどうにかするっていう」

 

 なんとなくだが、リンセンはクローネに対して不思議なオーラを感じ取っていた。

クローナの妹だからそう感じているだけなのか定かではないが。

 

 だがリンセンの予想虚しくクローナは首を横に振って否定した。

 

「ううん。使えないよ。あれはお姉ちゃんだけの特別な能力なの」

 

「あったら便利とは思わねぇのか」

 

 その質問も同じく否定する。

 

「思わないよ。だってお姉ちゃん、あの能力があるせいで味をほとんど感じることができないんだもの」

 

「そーいやそうだったな」

 

「だからその代わり、私がお姉ちゃんのために味を伝えてるの」

 

「は? 味を伝える? 味が分かんねぇやつにどうやって味を伝えるってんだ」

 

「私が食べた感想を言うの。辛いとか甘いとか、酸っぱいとか」

 

「そんなんで分かるのかよ」

 

「うん。お姉ちゃんは全く味を感じないわけじゃないから、大まかな味はなんとなく分かるんだよ。それを大げさに表現して伝えるの」

 

「ふーん。面倒なこったな。メシは口で食ってこそメシだ。言葉なんかで分かるようなもんじゃねぇだろ」

 

「そういう人もいるんだよ。苦労している人」

 

「……あぁそうかい。そうだな。ご苦労なこった」

 

「だから、お姉ちゃんには優しくしてあげて」

 

「はいはい。世話好きな妹だな、お前」

 

「あなたは、いないの? 妹とか、弟とか、お姉ちゃんとか」

 

「さぁな。いるかもしれんし、いないかもしれんし」

 

「え?」

 

「おめぇには関係ねぇよ」

 

 冷たく返されて、クローネはぷぅと頬を膨らませた。

だがそんなことお構いなしに、リンセンは文句をぶつける。

 

「おい、クローネとか言ったな」

 

「うん。クソガキはやめたんだね。偉い」

 

「偉いとか言うな」

 

「それで、どうしたの?」

 

「ただここで待ってるのもつまんねぇ。どっかに部屋はないのか」

 

「うん。じゃあ、お姉ちゃんの部屋で待ってて」

 

 クローネは頭の上で寝息を立てるピアストルのトゲを撫でながら、側にあった扉を開いた。

 

「ここ、お姉ちゃんの部屋だから散らかさないでね。いま紅茶持ってくるから」

 

「おう。気が利くな、お前。姉貴より優秀なんじゃないのか?」

 

 褒められたせいか、クローネは僅かに笑みを見せた。

リンセンからすれば、クローナよりもクローネのほうが断然やりやすい。

 

 ぴしゃりと扉が閉められると、リンセンは部屋をグルりと確認した。

 

 廊下や玄関と同じく、真っ白な壁が取り囲み、クローゼットやテーブルにイス、窓枠などは水色で統一されている。

青空のような部屋と表現するのが的確だろう。

 

「いい部屋住んでんなぁあいつ」

 

 リンセンは故郷を想像していた。

 

 自分はどんなところに住み、どんなところに寝ていたのか。

 

 家族は優しかったのか。

厳しかったのか。

 

 美味しい食事にありつけていたのだろうか。

 

 クローナの家族とその優しさに触れたリンセンは、微かに故郷や家族に対して憧れのようなものを抱いていた。

 

「リンセン、はいこれ紅茶」

 

 妄想にふけていたリンセンを、クローネの声が現実に戻した。

 

 ウェイターよろしく片手でトレイを持ち、その上には紅茶のカップが二つ湯気を立てている。

 

「おう! 待ってたぜ! 紅茶!」

 

「ここ、置いておくね。もうすぐお姉ちゃんがご飯持ってくるから」

 

 トレイをテーブルに置くと、クローネはそそくさと退出した。

 

 気を利かせて、リンセンとクローナと二人きりにしてやろうという魂胆だ。

もちろんそんな気遣いにリンセンは気づくことなく、ただ紅茶をすするばかり。

 

 入れ違いに、皿を二つも持ったクローナがやってきた。

 

「おいおい、なんだそれ? なんて料理だ?」

 

 皿の上には、濃厚なチーズの匂いを漂わせる肉料理が鎮座していた。

 

「これはオロっていう料理。フェルテオリーブでフェルテ牛を焼いて、さらにフェルテチーズをトッピングさせてバジルパウダーを振りかけたものよ」

 

「美味そうじゃねぇか! 美味! 間違いねぇぜ!」

 

「そう? 喜んでくれたなら良かったわ」

 

「あれ、このバジルパウダーもフェルテ産か?」

 

「いえ、それはマルク国のもの」

 

「あっ、そう」

 

「それともう一つ、あなたの記憶が戻ったら良いなって思って、作ったものがあるの」

 

 タイミングを合わせたかのように、クローネが新たなトレイを持ってやってきた。

その上には、細長く黄色い食べ物が鎮座している。

 

 リンセンの目の前に置くクローネだが、その食べ物を不思議そうに観察しながら退出した。

この国の人間にはあまり馴染みのないものだ。

 

「おい、これなんだ?」

 

「これ、テンプラっていうの。ニッポン人なら毎日食べていると言われる料理よ」

 

 フェルテ産のエビを一尾使い、マルク国の小麦粉を塗してオリーブオイルで揚げたものだ。

世界の料理ブックに載っていたものをなんとなく作っただけだが、記憶が戻ってほしいという気持ちはしっかり籠っていた。

 

「テンプラ……ニッポン人は毎日食べてるって?」

 

「そうよ」

 

「うーん、そうなのか」

 

「これを食べたら、ニッポンのことを思い出せるかなと思って。世界の料理ブックに載ってたから、なんとなく作ってみたけど、素材がちゃんと揃えられなくて、完璧じゃないけど」

 

「ふーん。まっ! 美味けりゃそれでいいぜ。とりあえず、食ってみるか」

 

 リンセンは手掴みでテンプラを口に運んだ。

しっぽも含め、一口でペロリと平らげた。

 

 それに対する感想――美味いの一言を、クローナは静かに待ち続ける。

 

「おっ……おおおお」

 

「え、どうなの?」

 

「う、うううう、美味ぇぞこれ! よく分かんねぇけど! なんか表現が難しいけど、とにかく美味ぇぞ!」

 

「ほ、ホント?」

 

「ウソつくわけねぇだろ! 美味ぇもんには正直に美味ぇって言うのが俺流だろうが!」

 

「そ、そんな流儀は知らないけど……それで、記憶は? なにか思い出せそう?」

 

「いいや、なんもない」

 

 食べた感想とは正反対の即答だった。

だが食べた感想と同じく正直だった。

 

「難しいわね。記憶を取り戻すっていうのは」

 

「まぁそうだな。でもよ、俺だってすぐに取り戻せるとは思っちゃいねぇよ」

 

「そうね。あなたも、ゆっくりでいいから、無理しないで」

 

 優しい言葉をかけられたリンセンは、少しだけ心がくすぐったくなった。

意図的ではないがアメと鞭を受けているようなものだ。

 

「まぁ記憶のことはともかく、今は食事にしましょう」

 

「あぁ、そうだな」

 

 それからは、他愛のない会話をしながら食事をした。

 

 クローナやクローネが子供の頃にしたイタズラや、近所で見かけた妙な模様の猫。

美味しそうな形の雲、マルク国から来た面白いマジシャン。

外国へ旅行に行ったとき、文化の違いを思い知った……そんな、日々の思い出やどうってことのない話を続け、気づけばオレンジの夕日が半分にまで欠けていた。

 

 クローナは敵に狙われていることなどすっかり忘れ、ようやく緊張が解けたことに安堵していた。

 

 会話が一通り終わったあと、リンセンは大事な話を思い出し、ポンと手を打った。

 

「あ、そーいや、記憶のことで一つだけ話があった」

 

「? どうしたの?」

 

「さっき戦ったあの女。あいつと戦ってたら、日本にいたころの記憶を少しだが思い出したんだ」

 

 

 

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