日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(10)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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四章 ドッグアンドキャット

 

 無事にクローナの故郷であるフェルテに到着。

 

 到着後、御者のおじさんにはクローナが深く謝罪を繰り返した。

只ならぬ事態を察してか破壊された屋根を弁償しなくていいと言ったが、それでもクローナ自身の気が済まず弁償することにした。

 

 その間、リンセンはクローナの家でどんなご馳走を堪能できるのか? ただそれだけを考えていた。

 

 クローナの故郷フェルテ――。

 

 いくつもの背が高いレンガ造りの建物が並び、貿易や商業が盛んで活気に溢れる町である。

衣服、食材、武具、ペット用品、雑貨などなど、豆から槍までなんでもござれの大都市である。

 

 さらに、この町には一つ大きな特徴がある。

 

 この町、実は地面がほぼなく、移動のほとんどを船で行うシステムの水上都市なのだ。

 

 海とつながった特殊なフェルテへの荷物の搬送も全て船で行う。

かなり不便ではあるが、青い空と光る海と、オレンジ屋根の建物が彩る美しい景色を見るために観光に訪れる者は多い。

 

 馬車で船着き場まで行き、そこからは小さな船に乗り換えての移動だ。

独特な揺れに、リンセンは戸惑う。

 

「おいクローナ、ここが、お前の故郷なのか? こんな船で行くのか?」

 

「こんな船なんて、失礼でしょ。漕いでいる方に失礼でしょ」

 

「なんでよりによって水上都市なんだよ、普通に地面に作れよ」

 

「あら、水はお嫌い?」

 

「ちげぇよ。自由に暴れられないのが嫌なんだよ」

 

「そう。じゃあ、地面のあるところへ戻ったらどう? 私の家でご馳走は食べられないけど」

 

 クローナは、さっき習得したリンセンの扱い方を炸裂させた。

困ったら食べ物で釣るのが確実だ。

 

「おい、俺にエサとしてメシって言っとけば誘えると思ってんのか? 言っとくけどな、お前なんかより美味いメシを出せる人間がいるってんなら、そいつの用心棒をやったっていいんだからな。調子乗るなよ、おい」

 

「分かってるわよ。私だってあなたを失いたくないの。あなただって、私の能力は役立つでしょう?」

 

「へっ、時と場合によるな」

 

「そうね。それなりのリスクはあるし、体力も消耗する。でも、この能力で人が救えるのなら、私は人を救いたい。もちろん、救いたい人の中にはあなたも含まれるわ」

 

「そうかい。そりゃあどうも」

 

「素っ気ない返事ね。もう少し喜んでほしいところだけど」

 

「んなもん俺の自由だろ。そこまで決めつけんな」

 

「決めつけてなんかいないわよ。ただ提案しただけ」

 

「へっ、そういうクールな態度、嫌いじゃないが気に食わねぇな。女ならもっと笑っとけよ」

 

「そう。お互い様ね」

 

 一悶着終えたおかげで二人の間に信頼が結ばれたと思われたが、残念ながらお互いの欠点をののしり合う戦いは終わることがないようだ。

 

「お二人さん、仲がいいねぇ」

 

 先頭で船を漕ぐ若い男は、その一部始終を見て皮肉が入り混じった誉め言葉を贈った。

 

 だがもちろん二人は、

 

「違います!」「違ぇ!」

 

 同タイミングでシンクロした言葉によって彼を一撃で押し黙らせた。

 

 それからしばらく船は進むが、二人の間から会話は途絶えた。

「まるで熟年夫婦だ」と冗談を飛ばしそうになった船漕ぎだが、余計な油は注がないように黙っておいた。

 

 だが無言で進むのも辛いものがあるので、クローナはなんとか話題を作る。

 

「ところでリンセン、もちろんこのフェルテって町は初めてよね?」

 

「あたりめぇだろ。外国なんて見たこともねぇよ」

 

「そう。なら丁度よかったわ、いいことを教えてあげる」

 

「あぁ? 美味いメシの食い方か?」

 

「あなた、食べ物のことしか頭にないの? 確かに食べ物に関することだけど、食べ方ではないわ」

 

「じゃあ、なんだよ」

 

「見てて」

 

 船一艘分しか通れない狭い水路に入った。

左右には様々な店がにぎわっているが、特に果物屋が多く、果物屋同士がライバル意識という火花をバチバチと散らしている。

 

 クローナはポケットから百エン玉を取り出し、近くの果物屋へ手渡した。

 

「リンゴを一つ」

 

 それだけ伝えると、果物屋は迅速にリンゴを一つ手に取り、クローナの持つ百エン玉と交換した。

 

 この一連の流れを、なんと移動しながら行っている。

この町フェルテならではの買い方で、外国から訪れた人間ならば一度は経験してみたいことの上位に食い込んでいる。

 

 どう?

 

 と、クローナはリンゴをリンセンに突き出しながら得意顔になった。

 

「す、すげえ! すげぇじゃねぇか! なんだよ今の、曲芸かよ!」

 

「この町の人間ならば誰でもできることよ。ちょっとコツがいるの。船が動いたままやりとりをするから、慌てて小銭を海に落としたりしたら大変よ」

 

「お、俺にもやらせろ!」

 

 クローナが弾いた百エン玉をリンセンがキャッチすると、側にいた果物屋に投げつけて「オレンジよこせ!」と満面の笑みで叫ぶ。

 

 不意にぶつけられた要求にうまく応えられず、果物屋は明後日の方向へオレンジを投擲する。

だがリンセンは抜群の反射神経で海に落ちかけたオレンジを見事にゲットした。

 

「面白ぇじゃねぇか! この買い方、十把一絡げに気に入ったぜ!」

 

「十把一絡げの使い方、おかしくない?」

 

「いいんだよ、んなことは。それよりこの町、なんつったっけ?」

 

「フェルテよ。まぁ、気に入ってくれたなら幸いだわ、気にいってくれたなら」

 

「気に入った! よく見りゃこの町、けっこういい景色だしな!」

 

「そうでしょう? じゃあ、これから陸地に上がるから、ちょっと違う景色になるわよ」

 

「おおい! そりゃ楽しみだぜ!」

 

 船着き場に到着し、クローナたちは船を降りた。

ふわふわした感覚の船からどっしり固められたコンクリートの上へ移動すると、若干バランスを崩しそうになる。

 

「おい、なんか、変な感覚だぞ、おい」

 

「あれ、リンセンったら、船酔いしたの?」

 

「バカ言え、天下のリンセン様が船ごときで酔うかよ」

 

「そう? このまま歩いて私の家にまで行くから、ちゃんとついてきてよ」

 

「うるせぇな。酔ってねぇって言ってんだろ」

 

 船から眺めたフェルテの景色も賑やかだったが、陸にあがって町の中へ入ると四方八方を活気が染めていた。

 

 お世辞にも広いとは言えない道だが、狭いなりにうまく活用していて、建物と建物の間に厚い布を張ってその上でバグパイプなどを奏でている者もいる。

その下では派手な恰好をしたピエロがジャグリングを披露し、観客たちはお捻りを帽子に向かって投げている。

 

「どう、リンセン? 陸もすごい賑わいでしょ」

 

「あぁ。嫌いじゃないぜこの感じはよ!」

 

「安心したわ。あなたのことだから、文句を言うんじゃないか心配してたから」

 

「あぁ? そりゃどういうこった、おい」

 

「あー、それより、私の家を案内するわね。ついてきて」

 

 軽く皮肉をぶつけつつ、すぐにごまかして歩き続けた。

ここまで横暴な態度を続けたリンセンに対する僅かな復讐であり悪戯のつもりだ。

 

 人が賑わうエリアから離れて数分。

商店も姿を消し、次に姿を見せたのは住宅街だ。

どれもデザインが統一され、屋根の色も軒並みオレンジに染まっている。

当然、住宅街と言っても目の前には水路があり、ときたま船が通りかかるが。

 

 その中にある一軒の前に立つと、クローナはふぅと深呼吸をする。

 

「おい、ここお前の家だろ。なんで深呼吸が必要なんだ」

 

「そりゃあそうでしょ。服が汚れたから新しいの買って、あのリョウって女の子に襲われて顔にも傷ができたし、あなたも増えてるのよ」

 

「おい、俺が邪魔だってのか?」

 

「そうじゃなくて、いきなり男の人を連れてきたら、何事かって思うのが普通でしょ」

 

「はいはい。俺は邪魔ってことね、りょーかい」

 

「だから、そうじゃなくて……とにかく、横暴な態度は謹んで、横暴な態度は」

 

「じゃあ、俺が横暴な態度をとったらその能力でなんとかすりゃいいだろ」

 

「軽く言わないで。この能力は、あまり使いたくないの。いいから、とにかく中に入って」

 

 クローナキャスケットをしっかり被りなおしてから扉を開いた。

乗り気でないリンセンの手首を引っ張ると、リンセンはさらに面倒くさそうな表情になる。

 

 白い壁に白い天井、そして床まで白くカラーリングされている品のある家だった。

扉や窓枠、家具などは水色でアクセントがつけられ、清潔感がある。

 

「ただいま! 母さん! クローネ!」

 

 奥から姉らしくも見える若そうな母親と、クローナより五つほど歳の離れた妹のクローネが顔を出した。

 

クローナ! 大丈夫なの!?」

 

 母親のフランは顔を出してはすぐさまクローナの肩を掴み、鬼気迫る表情で抱きしめた。

 

「か、母さん、大丈夫だから、私は」

 

クローナ、聞いたのよ。あの能力を使ってサーカスの演出を手伝いに行くために列車に乗ったら、ナイラ国に襲われたって、それでニッポン人が殺しに来たって、そんな情報が!」

 

「情報? ってどこから?」

 

「ウワサ! 停まった列車を見てた人たちからの情報よ!」

 

 一部誤った情報が混ざっていたが、それでもフランの気持ちに偽りはなかった。

だが勘違いが正される前に、例のニッポン人と目が合う。

 

「こ、この人! この男の人。ニッポン人ね!」

 

「か、母さん、違うの、この人は」

 

 フランは側にあったホウキを手に取り、リンセンへ槍のように突き付けた。

もちろんリンセンは人の気持ちや感情を理解するのがすこぶる苦手な男なので、威嚇には威嚇で返すことしかできない。

 

「あぁ!? てめぇ、いい度胸じゃねぇか。俺を天下のリンセン様だと心得ての所業か!? てめぇら十把一絡げに大成敗してやっからな、覚悟しやがれ!」

 

 リンセンの怒号にフランが怯むことはなかったが、すぐ熱くなるリンセンを冷ますため、クローナはわき腹に肘を叩き込む。

 

「ぐおっ! てめぇクソ女! なにしやがる! おい!」

 

「リンセンも、母さんも、頭を冷やして。私の話を聞いてちょうだい」

 

「あら、クローナ、その……私、なにか勘違いを?」

 

 ようやく事態を把握できたフランはリンセンに向けていた矛先をひっこめた。

 

「この人はリンセン。ニッポン人だけど、私を助けてくれたの。ここまで帰ってこられたのもこの人のおかげよ」

 

「あ、あら、そうなの……?」

 

「ちょっと……いや、けっこう荒っぽい性格だけど、まぁ、大丈夫よ」

 

「俺はナメられるのが大嫌いなんだよ。仲良くやれそうにないが、よろしくな」

 

 リンセンは不服そうな態度だった。

初っ端から勘違いされて武器を向けられたのだから致し方ないところはあるが。

 

「改めて紹介するわリンセン、この子は私の妹のクローネ。こちらは母のフラン」

 

 クローネは好奇心旺盛な瞳でじーっと観察をする。

反対にフランは、初めて見るニッポン人に対して多少の不安があった。

 

「このおじちゃんは、誰?」

 

 クローネが一言。まだ小学生のクローネからすればリンセンはおじちゃんらしい。

 

「おじっ……」

 

 クローネの言葉につい怒鳴り散らしそうになるリンセンだが、さすがに子供相手には怒鳴れない。

そこは優しさではなく、あくまで面倒ごとを避けるためであるが。

 

「クローネ、この人はリンセンよ。少し口は悪いけど、まぁ、悪い人じゃない、と思うわ」

 

「そうなの? 悪い顔してるのに、悪い人じゃないの?」

 

 なんとか抑えてはいたが、リンセンの怒りの導火線には火が点き、頭に血管が浮き出ていた。

 

 

 

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