日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(9)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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「あの人、まさか子供? それにあのデザイン、まさかキモノ?」

 

 ナイラ国の追っ手かどうかは判断できなかったが、少なくとも楽しい旅行に招待してくれるわけではないことくらい察しはついていた。

 

 もちろん、その姿は変身したリンセンとも重ねていた

異質な衣装を身にまとって荒野に立つだけなら誰でもできるが、リンセンのように超パワーを誇った敵という可能性もある。

 

「私の、味方? 味方なの?」

 敵か味方か――クローナの頭に疑問がよぎる。

 

 馬車はリョウの横を通り過ぎた。

馬が巻き上げた粉塵でリョウの姿が隠れる。

 

 敵らしき存在を退けたことに安堵するクローナだったが、その気持ちをあざ笑うかのように、砂塵がリョウの一撃によって払われた。

 

 突風を巻き起こし、周囲の砂を含んだ小嵐を発生させる。

砂を全て吹き飛ばした瞬間、すでにリョウの姿はそこにはなかった。

 

「消えたっ!?」

 

 その一部始終を目の当たりにした瞬間、クローナはリョウを敵だと認識した。

経緯は不明だが、ナイラ国が兵器として用意していたもう一人のニッポン人だということは理解できた。

 

 馬車が走行を継続しつつも、クローナは周囲を警戒する。

 

 並の人間ならば馬車に追いつくなどという芸当、不可能である。

だがあの手袋による変身能力さえあれば、おそらく容易いことだろう。

リンセンは武器一本で列車を止めたくらいなのだから。

 

「まさか、上っ!」

 

 その、まさかだった!

 目を細めて上空を確認すれば、太陽をバックにしたリョウが上空数メートルを跳躍していた。

高さ、落下速度、共に馬車に狙いを定めた動きっ!

 

「来るっ! 落ちてくるっ!」

 

 畳んだ扇を構え、馬車の屋根を襲撃。

鋼鉄のナイフのように鋭利な扇が木製の屋根を突き破り、クローナの頭すぐ上の天井に穴を空けた。

 

「馬車っ! 斜めに動いてくださいっ!」

 

 おじさんは混乱しつつも馬にムチを入れて方向を修正する。

 

だがリョウが搭乗したことによって重量が増えてしまい、馬も戸惑うばかりっ! 思うように方向転換できず蛇行せざるを得ないっ! 危うしっ!

 

 しかし! 蛇行にも屈しないリョウは、扇を使って缶切りの要領で屋根を切り裂いてゆく!

 

 狙いはクローナただ一人。

 

 頭上から細かい木の破片が無数に落ちてくるため、下からではリョウの様子を確認できず、ただひたすら体を縮こまらせて身を守ることしかできなかった。

ハリネズミのピアストルもボール状になって端に転がるのがせいぜいだ。

 

 助けて……。

 

 助けて……リンセン。

 

「リンセン!」

 

 ――そのとき、クローナのヘルプが届いたのか――荒野を駆け巡る人影が一つあった

人間の二倍ほどの速度で風を切るその姿、まさに獣的速度。

 

 そいつはリンセンだ。

すでに手袋の力で変身した状態であり、握りしめた棍棒をがむしゃらに振り回している。

 

 そしてっ!

 

 両足で踏み込み、爆発的な跳躍っ! これは高いジャンプ! 荒野の固い地面を数センチ抉り、一気に馬車との距離を詰める大ジャンプを繰り出したっ!

 

 勢いで馬車ごと弾き飛ばせばクローナたち(特に馬)に被害が及ぶことは想定できる。

だからあくまで標的は、馬車の上で屋根を引き裂くリョウだ。

 

「切り裂く躍動、裁く震動! 一騎当千のォォォ! 俺の一太刀ィィィ! 十把一絡げに、大・成敗してやるぜぇぇぇええ!」

 

 放物線を描きながら襲撃するリンセンに気付いたリョウは咄嗟に扇を引き抜いて広げる。

 

「てめぇ! なんだその武器はっ!」

 

 リョウが華奢な腕で一振りすると、破壊的な突風が吹き荒れるっ! まさに刹那の台風! まさに刹那の大嵐っ! 空中で制御の利かないリンセンはその衝撃を耐え凌ぐので精一杯なのだっ!

 

 風の影響っ! 僅かに落下地点が逸れ、リンセンの足は馬車の屋根に到達することはなかったっ! これはマズい!

 

「終わり。この勝負、あっしの勝利なり」

 

 メットの下で不敵にほほ笑んだリョウは、視界から姿を消したリンセンに手を振った。

 

 気を取り直し、引き裂かれた屋根からクローナを睨む。

 だが当然、ただ黙って攫われるほどクローナもバカではない。

 リョウが掻っ捌いた屋根から睨み返し、能力を発動した。

 

「こ、この女! これが能力か!」

 

 見えない何かで縛り付けられたように、リョウの動きを封じた。

本当なら体ごと消滅させることも不可能ではないのだが……そこまで物騒な扱い方はしない。

 

「これは、あっしがこんなもの程度に後れを取るとは! 不覚なりっ!」

 

「あなた、誰なのっ! やはりナイラ国の敵なの!?」

 

「あっしは名乗りません。あっしは使命を果たすだけ!」

 

「あなたはまだ子供でしょう。それも女の子。こんなこと、していいはずがないわ!」

 

「無関係なり。あっしはただ、やるべきことをやり、相応の報酬を貰うだけ。その妙な能力には少々驚いたが、しかしその技、破ること容易なりっ!」

 

 ほぼ無敵を誇るクローナの能力も、体力が消耗されればそう長くは継続しないし威力も低下する。

 

 その隙をついたリョウは片手を振り上げて隙間から扇を投げ込んだ!

 

「くっ!」

 

 クローナの頬を掠って傷を作り、扇は馬車内に深々と突き刺さった。

 

「破れたり、珍妙な技。あっしの手にかかれば、容易なり」

 

 リョウは亀裂が入った屋根に鋭い拳を叩き込み、ついに馬車に侵入した。

体力を消耗したクローナの前に立ち、その腕を乱暴につかむ。

 

「同行してもらうなり、クローナエスクードで問題ないか?」

 

「私が誰だか分からないでここまで攻めてきたというの?」

 

「分からない。あっしはただの勘で動いただけに過ぎないなり。しかしあの珍妙な能力から察するに、貴様はクローナエスクードで相違ないなり」

 

「そう。本当に私がクローナエスクードならいいわね。それより、人に名前を聞くならあなたも名乗りなさい」

 

「あっしはリョウ。敵に名乗るのも妙な話だが、土産にするといい」

 

「じゃあリョウ。私を連れて行ったら、戦争が始まるのよ。あなたはそれでいいの?」

 

「無関係なり。あっしはあっしの国が守れれば、問題ないなり。ノープロブレムなり」

 

「国? 国って、ニッポンのこと?」

 

「答える必要はないなり」

 

 リョウはこれ以上能力を使わせないため、クローナの腹に拳を打ち込んだ。

 

「うっ!」

 

 疲労していたクローナは一撃で気絶し、リョウの肩に担がれる。

後は戻ってクローナを差し出せば、リョウの任務はこれにて終了だ。

 

「任務、終了なり。ただいま帰還するなり」

 

 軽い跳躍で、穴の開いた屋根に両足を広げて飛び乗る。

 

周囲を確認するが、どこにもリンセンの気配はない。

敵さえいなければ、あとは普通に帰還するだけの簡単な任務だ。

 

 リョウが本部まで戻るのに相当な時間を要するうえ、クローナを担いだまま普通の列車に乗るのも不可能だ。

 

そのため、ナイラ国はリョウを運ぶための特別な列車を用意している。

その列車へたどりつくのにも相当な距離はあるが、手袋のパワーで変身していれば造作もない。

 

 と、進行方向とは反対を向いたとき、足元に何者かの気配があった。

 

 爆走する馬車の足元に、誰かが、いるっ!

 

「逃がすかぁっ!」

 

 片手だけで全体重を支えていたリンセンが、混でリョウの足元を払う

不意を突かれたリョウは避けることができずその場で横転。

大穴が開いた屋根から馬車内へ落下っ! 続けてリンセンも馬車内に飛び降り、仰向けに倒れたリョウの顔面に追撃を仕掛けるっ!

 

「取ったぁぁぁあ!!」

 

 落下の速度をプラスした一撃っ! それを叩き込むっ!

 

 だが間一髪!? リョウは担いでいたクローナを盾にし、リンセンの攻撃を寸止めさせる!

 

「くっ! てめぇ! 卑怯だぞ!」

 

「使えるものは使う。それがあっしのやり方なり」

 

「へっ! てめぇ、なにもんだ? そのクソ女を連れてくってことは、俺を箱に閉じ込めたあのクソ人類どもの仲間か」

 

「くそじんるい?」

 

「腹の立つ連中のことに決まってんだろ。これ以上てめぇも下がらねぇってんなら、てめぇもクソ人類の仲間入りだな」

 

「この女、連れていく、それがあっしの任務なり。邪魔する者、排除あるべき、なりっ!」

 

 仰向けのまま、リョウは開いた扇を一振りしたっ! 馬車内が突風で満たされバランスを崩し、馬の脚が不規則に乱れるっ! 突如として発生した暴風にリンセンも身動きが取れない! これはアンバランスっ!

 

「てめぇ! そんな武器なんかで俺を止められると思ってんのかぁ!」

 

「あっしは帰る。遊んでいる暇はないなり。今度こそさらばっ!」

 

 両足を揃え、体全体をバネにしてリョウは高く飛び上がった。

そのまま爆走を続ける馬車から出てしまえば、あとは無事に着地して帰還するだけっ! ただそれだけっ!

 

 リョウは勝利を確信し、空中でほくそ笑んだ。

 

 だがそれも束の間――同じくリンセンも飛び上がり、逆光をバックにしたリョウの足首を掴む!

 

「不覚なりっ!」

 

「詰めが甘すぎるんだよクソ人類が!」

 

 リョウの体を引き寄せ、逆の手でクローナの腕を掴む。

そして流れるように蹴りを繰り出し、リョウとの距離を作るっ!

 

「奪われたなりっ! あっしの任務がっ!?」

 

 リョウはクローナを失ったまま、徐々にリンセンと離れていく。

だがリンセンは蹴りを入れた衝撃で大きく後退し、馬車の方向へ飛んで戻る!

 

「あばよっ! ガキっ!」

 

 馬車の中へ舞い戻り、クローナをかばって背中から着地した。

変身していなければ、背骨の二本か三本は砕け散っているだろう。

 

 仰向けのリンセンに、気絶するクローナ――この絵面だけ見れば、いかがわしいことこの上ない。

 

 リンセンは獅子の模様が刻まれた手袋に触れ、変身を解除した。

 

「おい、おいクソ女」

 

「……う、うう」

 

「さっさと起きろ、寝てんじゃねぇ」

 

 薄目を開けてあたりを見回すクローナ

状況の把握に努めるが、視覚だけでは満足いく情報は得られそうもない。

 

「り、リンセン? これは……?」

 

「てめぇが寝てる間に、俺は一勝負してたんだよ」

 

「そ、そういえば、あの敵は? あの敵はどうなったの?」

 

「だーかーら。俺が撃退したって言ってんだろーが。いいからさっさと俺の上から降りろ」

 

「あ、ごめんなさい」

 

 ようやく事態を飲み込めたクローナは、コホンと咳払いをする。

 

「あの、助けてくれてありがとう。リンセン」

 

「あぁ? だから、てめぇのためじゃねぇ。気分が悪いから戦っただけだ」

 

「そ、そう?」

 

「それとな、用心棒になるのはやめた。やっぱりてめぇについていく」

 

「な、なにを言っているの? さっき宿で契約解除したでしょう。宿で」

 

「バカ言え、俺は承認した覚えなんかねぇぞ。だから、さっき助けた分の報酬は頂く」

 

「……あなたって人は。頼もしいけど……まぁいいわ」

 

 契約続行の証として、クローナは握手のための手を出した。

 

「あぁ? なんだこの手は」

 

「握手よ。仲間の証明なの」

 

「やらねぇよ。握手なんて」

 

「やらない? どうしてなの?」

 

「そういう馴れ馴れしいのは嫌いなんだよ。

俺は暴れられて美味いメシが食えればそれでいい。たとえ契約者がてめぇでなくともな」

 

「そう。じゃあ握手はしないでおくわ。その代わり」

 

 そこでいったん言葉を区切り、クローナは大きく息を吸った。

 

「私の家に一緒に来てもらうわ。あなたのこと、もっとちゃんと訊きたいし、私のことも聞いてほしい」

 

「あぁ? 訊くって、なにをだよ。能力のことは言えないんだろ」

 

「ここまで一緒に戦ったなら、教えといたほうがいいと思うし」

 

「わぁったよ、クソ女」

 

「何度も言うけど、私はクローナエスクードよ、リンセン」

 

「わぁったようるせぇな!」

 

 

 

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