日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(8)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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「な、なななんあなんだぁぁ!?」

 

 寝ぼけ眼を擦り、窓から外を確認する。

 

 よく見ると、子犬を抱いた十歳くらいの少年が、金持ちそうな三人の男たちに囲まれている。

その側では、悲鳴を上げた若い女性が倒れていた。

 

「おいおい、なんだありゃ。ったく、俺の眠りを妨げやがって」

 

 大きな舌打ちをしたリンセンは、手袋を装着して宿を出た。

 

 状況などまったく飲み込めていなかったが、目の前で起こったトラブルを力で解決して、一刻も早くベッドの上から夢の世界へ行きたかった。

ただそれだけを考え、問題の現場へやってくる。

 

「おいてめぇら。ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー騒がしいんだよ、おい」

 

 子犬を抱いて震える少年。

土で服が汚れた女性。

その二人を偉そうに睨む偉そうな三人の男。

そしてそこに首を突っ込む無関係なリンセン。

明らかに場違いだ。

 

「なんだ貴様。この国の者か? いや、違うか」

 

 偉そうな男その一が言った。

 

 男は金髪に純白のコート

して金のネックレスとステッキを輝かせている。

横にいる二人も似たような恰好で、人を見下す冷たい目も同じだった。

 

「へっ! 俺がどこの国の人間かなんかどーでもいい」

 

「どうでもいい? じゃあなんのようだ。関係ないやつは引っ込んでいろ」

 

「それがよ、そうでもないんだよなぁ。俺はしっかり関係あるんだよ、悪いけどな」

 

「おい」

 

 それはリンセンに対して放たれた言葉ではなく、横にいた男たちへの指示だ。

 

 うなずいた男二人は指をポキポキと鳴らし、リンセンへ接近した。

 

「その二人は俺が雇った用心棒さ。金さえあれば、大体のものは買える。強さも力も、安全もな」

 

「ほう。じゃあ、その自慢の用心棒がどんなもんか、俺に教えてくれよっ!」

 

 ニヤリ――リンセンの顔つきを見やり、用心棒の一人が勝利を確信した。

 

 ――のも一瞬。

ほぼ同タイミングで、用心棒の腹にはリンセンの拳が叩き込まれ、目を開けたまま地面に突っ伏した。

 

リンセンに対する判断は、どうやら大きく間違っていたようで。

 

 弾かれるようにステップを踏んだリンセンは、流れるようなスピードでもう一人の男に回し蹴りをお見舞いし、一撃の下に撃退完了した。

 

 白いコートの男は、よだれを垂らして倒れる用心棒を見て腰を抜かし、リンセンに対する恐怖心が全身を支配していた。

 

「き! ききき貴様! なんだ! 高い金を出して雇った用心棒を、た、たったの一撃で!」

 

「あぁ? てめぇが雇った用心棒が弱かっただけだろうが」

 

 リンセンは白いコートの男との距離を詰めてゆく。

 

 胸倉を掴みかかろうとしたそのとき、ふと震える少年が抱く犬が目に入った。

 

 犬の足の付け根は大ケガをしていた。

 

固いもので何度も叩かれたかのように赤く腫れあがり、その部分だけ毛が抜けている。

 

「おい、今更だが、こりゃどういう状況だ、おい」

 

「は、ははは。こ、この女が悪いんだ」

 

「あぁ?」

 

 この女、とは。先ほど悲鳴を上げた女性のことだ。

 

「この女、商会のトップの息子であるこの俺にぶつかっておいて、たかが謝罪だけで済まそうとしたのだ。だから軽く突き飛ばしたまでさ」

 

「あぁ? 謝ってんならいいだろうがそれで」

 

「ふ、ふざけるな。貧乏庶民が俺にぶつかっておいて、タダで済まされると思うな!」

 

「それで、どうして犬がケガをするんだよ、おい」

 

 大まかな流れを予想できたリンセンの怒りはさらに沸騰した。

浮き出ている血管は今にも千切れてしまいそうだ。

 

「見せしめにこの女の弟であるこのガキを制裁してやろうと思ったのだがな。町中である故、俺にも体裁があるから、子供を殴るのは良くないことだ。だからこのガキが連れていた犬を制裁してやったのさ」

 

「あぁ……? おい、罪もねぇ犬を殴ったってのか……?」

 

 怒りに拳を震わせながら、呟くように再確認した。

 

「なんだ? なんと言った?」

 

「だーかーらー……てめぇがこの犬を傷つけたのかって訊いてんだって訊いてんだぁぁぁ!」

 

 獲物目掛けて駆けるトラのような初速で拳を振るい、男の顔面にめり込ませたっ! 

鼻、アゴ、歯などなど! 顔に存在するパーツというパーツに多大なるダメージを負わせた!

 

 ダンサーよろしく空中三回転を決め込んだ男は鼻血をまき散らしながら無様に倒れるっ!

 

「き、きき、貴様……俺は商会の次期跡取りだぞ……こんなことして、許されると思っているのか……」

 

「あぁ? あいにく俺はバカなんでなぁ。てめぇのつまんねぇ言葉は理解できねぇんだ」

 

「ゆ、ゆゆゆ、許さんぞ……このことは、父上に報告して、貴様を地獄に叩き落としてやるからなぁ! …… 絶対に、必ず、だ!」

 

「あぁそうかい。まぁ、お前が犬を傷つけた事実は、お前の立場を危うくさせるものらしいがなぁ」

 

 周囲を見れば、村人たちの目線はすっかり冷たいものになっていた。

ある人は少年と犬を労り、ある人はフライパンを手に男に睨みをきかせている。

 

「おい次期跡取りさんよぉ。俺は、てめぇみたいに動物に暴力を振るうクソ人類に心底ムカっ腹が立ちやがるぜ」

 

 胸倉を掴み、ヘビのような目力で次期跡取りの震える瞳を見据える。

 

 瞳の奥底にある濁った心まで見えたリンセンは、これ以上殴る価値もないと判断し、ふんと鼻を鳴らす。

 

「おととい来やがれ。俺がてめぇを必要以上にぶっ飛ばす前にな」

 

「わ、わわわ分かった! 分かった!」

 

「それと! 約束しろ」

 

 リンセンは人差し指をピンと立て、次期跡取りの額を小突いた。

この約束は、その腐った脳ミソにしっかり叩き込め、とそういうことだ。

 

「二度と動物を傷つけるな」

 

「は、はい……」

 

「てめぇが跡を継いでも、死んであの世に行ってもだ」

 

「は、ははははい!」

 

「よし! 消えろ!」

 

「はいぃぃぃぃぃぃ!」

 

 脱兎のごとく、とはこのことだ。

 

 男は自慢のステッキを放り投げ、彼方へ走り去っていった。

高額で雇った用心棒はほったらかしのまま、自分の身を守るためだけにただ走り去った。

 

 用心棒が成敗された段階で逃げるべきだったが……。

 

「へっ、腰抜けめ。ざまぁ見ろって感じで心がスカっとしたぜ」

 

 邪魔者を追い払ったリンセンは、すっかり満足して宿へ戻ろうとした。

 

 だが、犬を抱えた少年が恩人のリンセンを呼び止める。

 

「ま、待って!」

 

「あぁ? なんだぁガキ」

 

「その、助けてくれて、ありがとう」

 

 その弟の様子を見た姉は、服についた泥を払ってから弟の横に並び、ひたすらお礼の言葉を繰り返した。

 

「あ、ありがとうございました。ありがとうございました。ありがとうございました」

 

「お、おいおい。勘違いすんなお前ら。俺はただ、あの偉そうなヤツのせいで寝れなかっただけだし、犬まで傷つける腐った思考が許せなかったんだよ。だからやめろよ、くすぐったいんだよそういう言葉は」

 

 頬をポリポリと掻いて目線を外すリンセンだったが、二人はお礼の言葉を繰り返した。

気づけば周囲もその流れに乗り、住人たちが囲んで拍手をしていた。

 

「お、おい! だからやめろって!」

 

 気分を害したリンセンは、囲む住人たちの間をこじ開けて脱出した。

 

 これでは、気分が悪いままだ。

 

 自分の性格上、ニッポンにいたころも人に感謝なんてされていなかったことは、自身も薄っすらと理解できていた

 

感謝され慣れていないリンセンは、どうしても感謝というものを素直に喜べないでいるのだ。

 

 感謝をうまく利用すれば、住人たちの感謝に乗じてご馳走をいただくこともできなくはなかったが、あいにくとリンセンの頭の回転はそこまで良いものではないため、とにかく感謝の猛襲から逃れることだけを考えて、町を出ることにした。

 

 なんだかんだと文句を言いながらも、やはりクローナが一番やりやすく、そしてご馳走にもありつきやすいことに、リンセンは気づいてしまったのだ。

 

「やっぱりあいつ! クソ女だが、俺と相性いいのかもしれねぇ!」

 

 リンセンは手袋のパワーで変身し、前傾姿勢で馬車を追いかけた。

 

具体的な方向や距離など把握できていないが、無事に到着することに賭けた。

 

 常人をはるかに超えるスピードを誇る今のリンセンならば、馬車に追いつくことなどたやすいことだ。

 

 方向さえ間違っていなければ、だが。

 

 

 

「お嬢さん、どこまで行くんでしたっけ?」

 

 手綱を握るおじさんは、クローナにそう問いかけた。

一日眠っただけではまだ疲れが取れていないため、クローナは半分夢の中だ。

 

「えぇ? え、ええ。シリングの町までお願いできます?」

 

「そうでした! そうでした! うっかりしてましたぜ!」

 

 ガハハと笑うおじさんを見ていると、自然とリンセンのことを思い出してしまう。

未練があるわけではない。

ただ、危なっかしいあの男を放置してしまって、周囲に被害を及ぼさないかが心配なのだ。

 

 馬のコンディションと移動距離を考えると、そこまで速度を出すことができない。

到着にはある程度時間がかかるが、今後のことを整理するための良い時間だなとポジティブに考えた。

 

 ナイラ国に襲われたこと。

列車がストップし、能力を連発したこと。

そして、あのリンセンという男の報告――問題は山積みだ。

 

 さらに、本来ならば列車で別の町に向かい、能力を使ってサーカスの演出を手伝う予定だったのだ。

それがナイラ国の襲撃で中止になった今、その町に謝罪の手紙を送らなければならない。

それと、妹のクローネへも心配をかけさせないよう努めなければならないし、今後のナイラ国の攻め方によっては全面戦争へ発展する恐れもある。

 

 いや、その可能性は高い。

 

 このまま何も対策を練らず、クローナを見逃すわけもない。

 

 列車を丸々一つ占領し、人質まで使う非道な集団だ。

どんな手で攻めてくるか検討もつかない。

 

 やはり、リンセンは用心棒として雇っておくべきだったか――。

 

「あの、すみません」

 

「ん? なんだいお嬢さん」

 

「さっきのパタカまで戻れますか?」

 

「お? あぁ、構わないけど、どうした、忘れ物か?」

 

「えぇ、少しだけ。大丈夫です?」

 

「いいよいいよ。まだ大して進んでないしね」

 

「どうもありがとう。助かります」

 

「では、戻るよ――んん!?」

 

 馬車を方向転換させようとスピードを緩めたとき、正面から接近してくる何者かが見えた。

 

 リョウだ。

 

 鋼鉄のキモノに変身したリョウが立っていた。

 

 キモノとは本来は足首までの長いものであるが、この鋼鉄キモノは膝上までの短いものだ。

長さこそ違うものの、その模様、シルエットはキモノそのもの。

 

 まさに大和撫子戦士!(ヤマトナデシコソルジャー!)

 

「な、なんだありゃあ?」

 

 馬車を止めるべくスピードを落とすが、危機を察したクローナはそれを中止させ、前進するよう指示を出した。

 

「ダメです! 走り続けてください!」

 

「で、でも! 轢いてしまうよ!」

 

「ならば、横を通り過ぎればいいのですっ!」

 

 素早く馬に鞭を入れ、僅かに軌道を変更する。

 

 俊敏な四本の足が軽やかに指示に応え、リョウと激突しないルートを直進する。

 

 だがリョウは、鋼鉄の扇を構え姿勢を低く構える。

 

 変身したリョウはクワンザを三体同時に相手にできるほどのパワーを誇るっ! スピード、そして反射神経、極めつけにジャンプ力っ! どれも普通の人間を遥かに凌駕していたっ! これは圧倒的っ!

 

 

 

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