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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(7)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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「ちっ。うまい交渉だな」

 

「理解したなら、それで」

 

「んじゃあ、さっそくメシだな。どこになにがあるんだ、案内しろよ」

 

「食事もいいけれど、宿も探さないといけないのよ。どうせなら、宿で食事をしましょう」

 

「あぁ? 今日はもうお休みかよ」

 

「そりゃあそうでしょう。あなたは底抜けに体力があるらしいけど、私は能力の連発と長距離の移動とで疲労が蓄積しているの」

 

「へっ、クソ人類ってのは脆いな。不便だぜ」

 

「一言多いのよ、あなたは」

 

「ま、メシが美味けりゃ宿でいいよ、宿で」

 

 そんなわけで、クローナたちは宿を探すことになった。

ここは一般的に都会と言われるほど栄えている。

数種類の店もあり貿易も盛んなので、馬車も手配できる。

 

 ナイラ国の追っ手に備えて新しい服も手に入れておきたいうえ、なによりリンセンにも服が必要だ。

 

 つまり今必要なのは、宿、馬車、服である。

その三つが必要だ。

 

 そんなこんなで、宿を取り、明日使う馬車に予約もいれた。

そして現在は服屋にいる。

 

「おいおい、服なんてなんでもいいだろーが」

 

「ダメよ。服はその人を象徴するの、しっかり選ばないと」

 

「はいはい。任せるよ」

 

 食べ物のことしか頭にないリンセンは、面倒くさそうな顔で服屋を出た。

 

 クローナは自分の服と共にリンセンの服を選ぶ。

小一時間迷った結果、クローナは動きやすく目立ちにくい焦げ茶色の服を選んだ。

 

 薄い生地で身軽なジャケット。

胸元には鳥の羽が刺繍され、クローナが求める自由を象徴するかのようだった

あとは顔を隠せるように、少し大きめのキャスケットを購入した。

 

 リンセンには少し大きめの黒いジャケットをチョイスした。

逞しい体つきに乱暴な言動を加えれば、まるでゴロツキと思われるだろうか。

どう文句を吐き捨てられても「任せる」と言われた以上は着させるつもりだったが。

 

「まぁ、これっきりの付き合いだろうし、後でもっと優秀な用心棒を用意すればいいかな。そろそろ宿に戻ろう」

 

 買い物を済ませてクローナは宿へと戻った。

 

だが、なにやらリンセンがブツブツと文句を言っていた。

部屋に不満があるらしい。

 

「おいクソ女、こいつぁ、この状況はどういうこった」

 

「どういうこと? どういうことって、どういうこと?」

 

 部屋はベッドが左右の壁際に二つ。

中央には家具の類もなく、代わりに安いカーペットと小さな窓があった。

ただし日当たり良好とは言い難いが。

 

 そして、

 

「部屋が狭ぇじゃねぇか! おい! どういうこった!」

 

「しょうがないでしょ。あなたはメシメシメシメシうるさくて、宿なんかお前が探せクソ女って言うから、ここにしたの」

 

「だからってよ! もっとマシな部屋があんだろ!」

 

「さっきの食事、どこかの貴族も来るくらいの高級料理だったのよ。部屋に関しては、お金がないんだから仕方ないでしょう。スイートルームで優雅に羽を伸ばせるとでも?」

 

 服に馬車に道中の食事代のうえにここの宿代だ。

クローナのサイフもすっかり軽くなった。

 

ちなみに高級料理というのは真っ赤なウソだ。

 

「任せるって言った以上は、我慢しなさい」

 

「あぁ!? 我慢しなさいだと!?」

 

「文句があるなら、自分で探しなさい。それも嫌なら外で寝なさい」

 

「ぐぐぐ。俺は犬か」

 

「さっきの話、もう忘れたの? あなたは用心棒として雇ったようなものよ。それなりの対価は支払っているの」

 

「ぐ……」

 

「屋根があって壁があってベッドがあるのよ。幸せでしょう」

 

「お前はいいのかよ」

 

「えぇ、狭くても結構。この状況で贅沢を言うほど愚かではなくって」

 

「そうじゃねぇよ。男と一緒の部屋で寝れんのかって聞いてんだよ」

 

「あら、そういうつもりがあるの?」

 

「ねぇよ!」

 

「なら、お互いに満足ね。私はもう寝るから騒がないよう、では」

 

 そう言ってクローナはさっさとベッドに潜ってしまった。

リンセンに対しては、まるで警戒していない。

 

「おいクソ女、ちょっと言いたいことがある」

 

「私はクローナエスクード

 

「うるせぇ。おい、なんか嫌な予感がしねぇか?」

 

「嫌な、予感?」

 

「……いや、なんでもねぇ。俺も寝る」

 

「そう、おやすみ、リンセン」

 

「あぁ、クソ女」

 

クローナ

 

「おやすみぃ!」

 

 

 

 翌日、疲れ知らずだと思われていたリンセンはぐっすり眠り、酷いイビキをかいていた。

片足がベッドからはみだし、お腹も丸出しだ。

 

 こんな状況でも規則正しく起床したクローナは、ニワトリの起床時間よりも少し遅いタイミングでベッドから出た。

 

 軽い準備運動、加えてストレッチ。

全身の血液の流れを良くするためにも必要不可欠なことだ。

規則正しく活動することで、寝るときはぐっすり、起きる時もバッチリなのだ。

 

 一通りの準備運動とストレッチを終えると、リンセンがよだれを垂らしながら目を覚ました。

 

「あぁ? おい、朝か……?」

 

「えぇ、おはようリンセン」

 

「あー、体が重いぜ、ったく」

 

「変な恰好で寝てるからよ。当然よ、具合が悪くても」

 

「いや、なんか、変な夢を見たんだよ」

 

「夢? なにを?」

 

「いや、なんか、古い記憶かもしれん」

 

「思い出した、というの?」

 

「いやなぁ、なんか風景が日本っぽくてなぁ。着物を着て刀を持ったサムライがたくさんいてよ。なんかすげぇ熱かった。あとは、女がいたな」

 

「熱い? 夏……? それに、女? 母親のことでは?」

 

「いや、俺よりは年下っぽかったな。誰かは知らんし、顔も分からんが」

 

「では、妹?」

 

「知らねぇよ。覚えてねぇ」

 

「……そう」

 

「お前は、いるのかよ兄弟」

 

「えぇ。少し年下の妹が。名はクローネ・エスクード。賢くて、とてもいい子なの」

 

「うー、そうかい。ま、とりあえずメシだな」

 

 質問するだけしといて、その回答には無視を決め込んだ。

そのリンセンの態度に、クローナは早朝一発目のため息。

 

「あなた、寝ても覚めても食べ物のことしか頭にないの? 食べ物のことしか」

 

「人間、食えるときに食うのが一番だろーが。メシなんて、どの生き物でも必要だろ」

 

 ほとんど味を感じないクローナには、理解に苦しむ話だった。

食事は栄養のため、空腹を満たすためでしかないため、楽しむという発想がないのだ。

 

 その点、リンセンのことが羨ましかった。

昨日は過酷な一日だったのに、それでも食事のことを考えて元気になれるのは、すごいことだな、と。

 

 宿が用意した食事は、なかなか良いものでリンセンも納得だった。

 

 サラダにスープに軽い肉料理に、とろけたチーズが躍るトースト。

実に朝に相応しいメニューだ。

 

 リンセンは他人の目など考えず、ひたすら口に詰め込んだ。

しかも手袋をつけたままだ。

恥ずかしくなったクローナは、少し席を離しながらスープに口をつける。

 

「リンセン、食べるときは手袋くらい外したらどうなの?」

 

「あぁ? うるせぇな。こいつは俺にとって魂みたいなもんなんだよ。外せるわけねぇだろ」

 

「その魂が、肉の油とチーズで汚れてるけど、それでも?」

 

「ったりめぇだろ。あとで適当に洗えばいいんだよ」

 

「簡単に洗えるなんて、使いやすい魂ね、安っぽくて」

 

「あぁ? そりゃどーも」

 

「それとリンセン。あなた、他人の目ってものが気にならないの?」

 

 ほかにも宿泊客はいる。

もちろん、行儀悪く食べるリンセンに対して嫌な顔を見せるのがほとんどだ。

 

「あぁ? いいだろ別に。それより、今日はこれからどうすんだよ」

 

「はぁ……まったく、あなたって人は」

 

「なんだよ」

 

「今日は馬車に乗って、私の故郷のフェルテに戻って家に帰る。

一日経過してもナイラ国の兵士は追ってこれなかったようだから、このまま帰っても大丈夫だと思うわ」

 

「ふーん、そうかい。じゃあ、俺は自由にやらせてもらうとするかなぁ」

 

「自由って、どうするつもりなの、あなた? まさか真面目に働くとでも?」

 

「あ? お前みたいなやつの用心棒やって、それで食ってくってのがいいかもな。悪党どもを十把一絡げに倒すのも面白いしな」

 

「あなた、頭の中は暴れることと食べることだけ?」

 

「あと、寝ることもな」

 

「夢の中でも戦ってたようだけど」

 

「年中無休なんだよ」

 

 最低限の食事を終えたクローナは席を立った。

だが、まだテーブルには食事が残っている。

 

「おい、どこいくんだよ」

 

「さっき言った通り、馬車に乗って家に帰るの。じゃあね、短い間だったけど、お世話になったわリンセン」

 

 クローナは軽く頭を下げた。

リンセンのことは正直気に食わなかったが、それでも命を助けてもらって、用心棒として雇ったのだ。

最後くらいは礼儀正しく去りたかった。

 

「私が残した分は食べてもいいから」

 

「あ? あぁ」

 

 店を出たクローナキャスケットを被り、馬車屋のもとへ向かった。

馬は元気にしっぽを振っている。

雲で太陽がほぼ隠れているので、馬車移動には最高の日だ。

 

 御者のおじさんが、クローナを見て手を振った。

 

「おぉ、昨日のお嬢さん。さっそく行くかい?」

 

「えぇ。お願いします」

 

「おや、昨日一緒に歩いていた坊主はどうした? あの、平たい顔の」

 

 平たい顔、つまりニッポン人という意味だ。

 

「彼は、ここでお別れです。別にケンカではないですよ。彼にも事情があるので」

 

「そうかいそうかい。ま、そういうことなら、さっそく行こうかね」

 

 屋根がつき、後ろには窓がはめ込まれた質の良い馬車に乗り込んでパタカの町を出た。

 

 そのとき、クローナが宿のほうへ視線をやったのは、リンセンのことが少しでも気になっていた証拠だ。

 

 この後に危機が迫ることを察してのことなのか、あるいは……。

 

 

 

 三章 リバース リ・バース

 

 

 

 そのとき、宿の中にいたリンセンは食事を終えて一人で部屋に戻っていた。

 

 二人分のベッドがある狭い部屋だったが、食後のストレッチくらいはできた。

 

 軽く手足を伸ばし、またベッドに寝そべる。

 

 クローナの用心棒として戦う仕事がなくなってしまった以上、これからの目標は特にない。

 

 しいて言うなら次の契約を結べる人物を見つけることだが、あいにくリンセンにはやる気がない。

腹が減らない限り、そこまでのやる気を発揮できないのだ。

 

「ふわぁあ……なんだか、眠くなってきたな」

 

 大あくびをかまし、ベッドの上で背伸びをする。

 

 リンセンにとって魂である手袋すらも外し、床にポイと雑に投げ捨てた。

 

「あの女、どうなるかなぁ」

 

 クローナのことが、気にならないわけではない。

 

 それでも、付き合いは短く、深い関係があるわけでもない。

 

一時的な協力者――一時的なやむを得ない協力者でしかない。

 

「美味いメシを食わしてくれんなら別だが、それならあの女じゃなくてもいいしなぁ」

 

 とりあえず、リンセンは空腹になるまで横になることにした。

 

 腹が鳴ったら、それが目覚めるタイミング。

そんな適当な気持ちで、ゆっくりと目を閉じた。

 

 満腹のせいもあってか、眠気はすぐにやってきた。

 

 これから夢の中へ招待されようとした直前、外から女性の悲鳴が聞こえ、リンセンはベッドから跳ね起きた。

 

 

 

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