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日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(6)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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「そのままの意味。この能力のせいよ。生まれたときから能力があるせいで、その代償として味覚がほぼないの」

 

「マジかよ。俺には耐えられねぇな。とてもじゃねぇけどよ」

 

「確かに、そう見えるけど」

 

「じゃあよ、その能力で味が分かるようにはならねぇのか?」

 

「能力はイメージ次第で大体のことはできるけど、これだけはどうにもならないの。どう頑張っても、通常の半分以下の味しか感じられない」

 

「ふーん。大変だな。メシを楽しめねぇってのは」

 

「そうね。私にとって、食事は楽しむものじゃなくて、あくまで栄養を摂取するものだから。この荒野を歩けるほどの栄養があれば大丈夫」

 

「そうかい。そりゃ、ご苦労なこった」

 

 あまり心配しているそぶりも見せず、リンセンはジョッキで水を飲みほしてテーブルに叩きつけた。

すでに注文した料理は全て平らげている。

 

「ふー食ったぜ食ったぜ! さて、じゃあ行くか」

 

「い、行くかって。まだ私は食べ終わらないんだけど」

 

「わぁってるよそんなこと。お前は食ってろ。俺は散歩してくる」

 

 散歩と言っても、外は灼熱の荒野だ。

 

「散歩って、いい加減にその恰好もなんとかしたら? 太陽の下じゃ厳しいでしょう」

 

 箱に閉じ込められていたときから、リンセンは上半身裸の状態だった。

 

この日差しが強い荒野でも、少しも動じずへっちゃらだったが。

 

「あ? ああ、そーいやそうだったな。別にいいけどよ」

 

 ひらひらと手を振り、リンセンは店を出た。

食後の運動というわりには、妙に活き活きした様子だ。

 

「あーもう。なんなのあの人」

 

 ピアストルにぽつりと愚痴をこぼす。

当然、ピアストルは気の利いた言葉など返せず鼻をヒクヒクさせるのみだ。

 

 これから先、どうしよう。

 

 この荒野をしばらく歩けば、荒野を抜けられる。

そこで別の町に到着して、馬車でも借りておけば家に戻れるだろう。

それまでは、あの男と行動を共にすることになる。

口が悪く態度も悪く、性格も悪い。

礼儀正しく真面目なニッポン人のイメージとは遠くかけ離れているが、果たして。

 

「あー、もう」

 

 ハンバーガーを半分まで食べたところで、その手は止まった。

今後のことを考えると、食が進まない。

 

「帰りたい……」

 

 全てはこの能力のせいだ。

 

 この能力さえなければ、こんな苦労をすることもなかったのに。

 

 普通の人間として、平和に暮らせたのに。

 

 味も、感じられたのに。

 

 クローナの夢は、味を感じることだった。

この目の前のハンバーガーやグレープジュースの味を、美味しいと思えるだけでよかった。

当たり前にできることが、当たり前にできない。

 

それが、クローナにとって苦しいところだ。

 

 もしも、自分の代わりに食事を楽しんでくれる人間がいるのならば、その人のために作ってあげるのも悪くはないと思っている。

自分の分まで楽しんでくれる人がいれば、それはそれでクローナにとって嬉しいことなのだ。

 

 ――食は進まないが、今後のことも考えて、しっかりと食事は平らげた。

 

 カウンターでマスターにお金を支払う。

リンセンはクローナの倍は食べていたが、助けてもらった恩を返すためにもきっちり支払う。

 

 リンセンの様子も気になり、再び太陽が照り付ける荒野へ出た。

 

「え? あの人、なにやってるの?」

 

 よく見ると、ガンショップの店員とリンセンがなにやら揉めていた

また厄介ごとか、簡便してよ。

と、クローナは頭を抱えながらガンショップへ向かう。

 

 木造のガンショップには、大量のピストルが並んでいた。

そっちの方面に詳しくないクローナだが、危険な臭いがすることは理解できた。

 

「ちょっとリンセン! なにやってるの!」

 

 リンセンはガンショップ店員の胸倉をつかみ、縦横無尽に振り回していた。

すでに店員の目はグルグル回っている。

 

「おっ! クソ女、ちょうどいいところに来たな! こいつをなんとかしてくれよ!」

 

「な、なんとかって。あなたが手を放せば済む話でしょう?」

 

「あぁそうか」

 

 解放された店員は虚ろな目で背中から倒れた。

すぐにクローナが駆け寄る。

 

「だ、大丈夫ですか」

 

「あ、あああ。こいつ、いきなり服をよこせって乗り込んできやがった。うちはガンショップだっての、服なんか売ってるわけないだろよ」

 

「あ、そ、そんなことが」

 

 しかしリンセン、反省の色なし。

無色透明。

 

「ちょっと! リンセン! こっちに来なさい!」

 

 クローナはリンセンの背中を押し、ガンショップを出た。

力では到底かなわないので、僅かに能力を使ってリンセンの体重を軽くしたのだが。

 

「おいおい、なんだよ」

 

「あなた! どうしてそう人様に迷惑をかけるの!」

 

「あぁ? おめぇが言ったんだろ。服をなんとかしろって」

 

「服を買うなら服屋に行かなきゃダメに決まってるでしょう!」

 

「そういうもんなのか?」

 

「当たり前! 当たり前なの! 常識!」

 

 暑さでイライラするクローナにも限界が近づいていた。

日だけでもかなり能力を使用した。

そろそろぐっすり眠らないと、途中で倒れる。

 

「もう、あなたは面倒ごとを起こすんだから、勝手に動かないで」

 

「あぁ? 命令してんじゃあねぇよ」

 

「あーそう。いいのかしら? 荒野を抜けて町にたどり着けば、もっと美味しいご飯があると思うけども、いいのかしら?」

 

「な、なんだとぉ!?」

 

 瞬時にリンセンの目の色が変わった。

 

 この瞬間っ!

 

 クローナはリンセンの操り方を覚えた。

困ったときは、食べ物で釣ればいい、と。

 

「な、な、な、なにがあるんだ!」

 

「そうね。この先のパタカに行けば、冷たいアイスキャンディがあるんじゃない? あとは、甘―いケーキ、とか、あるんじゃない? 服もそこで買えるだろうし」

 

「よ、よし。じゃあ行こうぜ」

 

 クローナはもう一度ガンショップの店員に頭を下げ、リンセンと共に歩き出した。

その辺の木の棒を能力で日傘に変身させれば、日光対策もバッチリだ。

体力を消耗するが、日差しに焼かれるよりはいい。

 

 だが、強い日差しは徐々に引っ込んでいった。

 

大きな太陽は雲に隠れ、二度くらい気温は下がった。

 

「あら、雨? 雨が降るの?」

 

 日傘をたたみ、手のひらを出す。

曇ってはいるが、雨は降っていないようだ。

 

「好都合ね。暑くもないし、雨も降らないし、好都合」

 

「だな。さっさと進んじまおうぜ」

 

 再び二人は並んで歩き出した。

 

 やはり日が出ていないだけでかなり楽ではあったが、道中のリンセンの文句は絶えなかった。

 

「おい、まだ到着しねぇのかよ」

 

「私に言われても、困るわ」

 

「いい街なんだろな? メシはホントに美味いんだよな? おい」

 

「だから、そうだって言ってるでしょう」

 

「さっきの町はよ、ただの休憩所だろ。ケチな小屋がちょっとあるくらいじゃねぇか。メシは美味かったけどな」

 

「褒めるのか、文句を言うのか、どちらか一方にしたら?」

 

「あぁ? 俺の勝手だろ。いいからさっさと町に到着しろよ」

 

 この道中、クローナは数十回もため息をついた。

 

ここまで乱暴な人間になど会ったことがなかったからだ。

精神的ストレス、身体的ストレス、その両方が重くのしかかる。

 

「リンセン、あなた、そんな性格だといつか損をするわよ、いつか」

 

「あぁ? そーかい? 周りの連中の目を考えて地味に動くよりいいだろ。俺は嫌いなんだよ。自由になれないことと曲がったことがな」

 

「そう。私も曲がってることが大嫌いよ。あなたの口とヘソみたいに曲がっているものが、大嫌いよ」

 

「違いねぇや! 直しとくぜ! ははは! 面白ぇな!」

 

 なにが面白いんだ。

 

 クローナは特大のため息を吐き出すも、もちろんリンセンは気づいていない。

 

「そーいうお前こそ、クソ真面目なのも考えものだぜ。なに食ってたらそうなるんだ」

 

「あいにく、グルメには関心がないから。もともとこういう性格なの」

 

「美味いもん食ってれば、いつかは味も分かるようになるだろ! たらふく食えよ!」

 

「あのね、自分の能力のせいで味が分からないんだって言っているでしょう」

 

「んなこと言ってるから味が分かんねぇんだよ! とにかく食いまくれよ」

 

「あー、ごめんなさい。もういいわ。その話は、もういい」

 

 この男と会話していても、支離滅裂な方向にしか進まない。

 

 そう悟ったクローナは、無理に会話をすることもなく、話題を振られても軽くあしらうようになった。

 

 吊り橋効果、なるものがある。

 

 危機的状況に立たされた男女ならば、自然とお互いがお互いを意識し、惹かれ合う。

そんな効果である。

 一方は敵国に攫われそうになり、一方は箱に閉じ込められ異国から連れられ、そして敵から逃げてすっかり疲労しきった体で荒野を歩くという状況。

まさに吊り橋効果だ。

 

 なのに、いまいち絆が深まらない。

むしろ、言葉を交わすたびにお互いの悪い部分ばかりが露わになる。

これは、仲間と呼べるものではない。

 

 もっとも、リンセンは気にしておらず、クローナはすでに諦めているが。

 

「ここよ」

 

 吊り橋効果は無残に砕け散り、町に到着。

 

 すでに荒野は抜け、短い草が生い茂るエリアに突入している。

町の中も例外ではない。

 

 高めの壁に囲まれ、立派な門が訪問者を迎える。

レンガ造りの建物は、まさに最新式、最先端の技術だ。

人も多く活気にあふれ、人々も笑顔だ。

この町が良い街である証拠だ。

 

「おお! でっけぇ町じゃねぇか! で、なんて町だっけか?」

 

「パタカよ。あなたみたいな荒くれものが騒ぐと追い出されるから、注意してね」

 

「はは! 冗談も言えるじゃねぇか! いいからさっさとメシ食おうぜ! なぁ!」

 

 リンセンはガハハと笑い、クローナの細い腕を鷲掴みにして歩き出した。

どこがどんな店なのか把握していないが、とりあえずガンガン進む。

 

「ちょ、ちょっと! 痛いでしょ! 引っ張らないで!」

 

「あぁ? いいだろ、別に。さっさとメシ食わせろよ」

 

 いい加減、怒りが限界に達した――いやもう突破しているが――クローナは、リンセンがつかむ腕を強く叩いた。

 

「痛っ! おいクソ女! なにしやがる!」

 

「あら、ごめんなさい。言葉で言っても分からないから、行動で示したの」

 

「て、テメェ。俺がいなかったら、列車で攫われてただろうが! それにさっき悪党どもから助けてやったんだからその態度はねぇだろ!」

 

「だから、それはさっきの食事で返してあげたでしょう。あなたこそ、その態度は非道よ」

 

「へっ! そうかいそうかい! そうかいそうかいそうですかい!」

 

「なに、怒ったの? あなた、怒ったの?」

 

「俺はなぁ、腹が減ると機嫌が悪くなるんだ。悪ぃな。機嫌が悪くて」

 

「そう。じゃあ、私がいなくてもその機嫌を直せるのね」

 

「あぁ? どういうこった」

 

「あなた、お金ないんでしょう。ニッポンでもエンギルダ国でも、お金がないと食事はできないはずだけど」

 

「ぐぐ、て、てめぇクソ女。金があるからって調子に乗りやがって」

 

「そんなつもりはないわ。あなたが乱暴に引っ張ったりしなければ、私も同行したっていいの。私だって、あなたを抜きにして進むのは危険だと思うわ」

 

「へっ、金とメシで釣って、用心棒として雇うってか? いいご身分だな」

 

「互いに利益のある話だと思うけど?」

 

 

 

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