日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(1)暴風荒ミスティ・ミラージュ ラスティ

お題「マイブーム」

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一章 ハイスピードスローモーション

 

 彼女は、まさにピンチと呼べる状況だった。

人生における、最大のピンチとも言える。

 

 ある能力を有する少女、クローナエスクードの額には無骨で冷たい銃口が突き付けられていた。

額にゼロ距離で密着しクローナを焦らせる。

 

 金髪ロングヘアーで碧眼のクローナの瞳は、それでもなお強く輝いている。

純白のドレスに、風さえ吹けば優雅になびくロングスカートは華奢な体にマッチしている。

戦いには向かない格好だが。

 

 何両も連なるこの列車は、山岳地帯に敷かれたレールを進むせいで不規則な揺れを繰り返していた。

この部屋にある木箱も微妙な振動を繰り返し、カギのかかった鉄の扉もガタガタと軋んでいる。

 

 だがクローナに逃げる隙などない。

 

「ラッツ、あなたスパイだったのね?」

 

 クローナは目の前にいる“元”秘書の男にそう言い放った。

長髪で黒いスーツを纏った細身の男だ。

 

「あなたの能力はとても危険だ。イメージ次第でなんでもできるからな。やろうと思えばできるのではないか? この銃口を瞬時に溶かすことも」

 

 クローナの能力、それは目で見たものに限り、イメージ次第で様々なことが可能となる能力だった。

 

 当然、金属をひしゃげることは簡単で、列車を空に飛ばすことも可能だった。

だがその能力を使えば凄まじく体力を消耗してしまうため、今ここで使用すれば隙だらけになってしまうだろう。

能力の規模などによっても体力の消耗具合は変わる。

 

 仮にラッツを能力で封じたとしても、別の場所に仲間がいる可能性もある。

能力があるとはいえ迂闊に行動するのは危険だ。

 

「恐ろしい小娘だ。まだ十七そこらの年齢なのに、そんな悪魔のような能力があるとは」

 

「ラッツ、なにが目的なの? 一週間前に新しく秘書になったと思ったら、いきなり裏切るなんて、なにが目的なの?」

 

「決まっているでしょう。我々ナイラ国は、あなたの能力が欲しい」

 

「この能力でなにをするつもり? まさか、戦争に使うだなんて」

 

「そのまさか、だ。ナイラ国はあなたを奪い、あなたたちのいるエンギルダ国を滅ぼすのが目的さ」

 

「そう……分かりやすくて助かるような理由ね」

 

「あなたたちエンギルダ国の地下には、豊富な資源がたくさんある。油や金属、温泉も湧き出るそうじゃないか」

 

「そう。そこまで私の能力が欲しいなら、その拳銃で脅して連れて行けばいいでしょう?」

 

 クローナはあくまで強気だった。

 もしも足を撃たれるようなことがあれば、能力で反撃するつもりだったからだ。

 

「それとも、私の足を撃って弱らせてから連れて行く?」

 

「そんなことをしてもムダでしょう。あなたが強いことは知っている。一週間も秘書をやっていたのだから」

 

「じゃあ、どうするつもりなの?」

 

「こうするつもりさ」

 

 ラッツがパチンと指を鳴らすと、カギのかかった鉄の扉が外側から突き破られた

その向こうには斧を持った大男がいて、もう一人の男が十歳くらいの少年を人質にとっていた。

 

 卑劣な手口に唇を噛むクローナ

 

「さぁ、どうするクローナエスクード?」

 

「こ、こうなったら……」

 

「能力、使いますか? 使っちゃいますか? いいんですかぁ?」

 

 まず能力でラッツを弾き飛ばし、その後に二人の大男を行動不能にさせる。

強引な手段ではあるが、それがクローナのイメージだった。

 

 たとえ相手が敵であっても、クローナは殺害をしない。

人を殺めてしまえば、それはもう悪魔と変わりない存在だと考えているから。

 

 殺害するかはともかく、ここで事態を好転させるには、他に策がない。 

 

 だがクローナは動かなかった。

 

 ここまで能力を使わせたがるには、なにか目的がある、と。

 

「おっと、気づいたかクローナエスクード

 

「ま、まさか……」

 

「ほうほう、二度目のま・さ・か。ですね。そのまさかだよ。この列車内には爆弾を仕掛けた。もしあなたが能力で俺達を始末したら、さてどうやって逃げる気かな?」

 

「せ、戦争なんかで私の能力が使われるくらいなら、ここで死んだ方がっ……!」

 

「あなたはよくてもね、この列車にはたくさんの乗客がいることをお忘れなく。しかも、数十メートル後方には別の列車もある。ここが爆弾でふっ飛ばされたら、後ろの列車も巻き込まれるでしょうなぁ」

 

 成すすべは、ない。

 

 クローナの能力は、目に見えるものにしか使えない。

 

 どこにいくつ爆弾がセットされているのか不明ならば、爆弾を消滅させるという荒業も不可能である。

 

「どうするクローナエスクード。抵抗するなら大歓迎だが?」

 

 諦めたクローナは、両手を上げたままゆっくりと立ち上がった。

人質にされた少年は、涙目でクローナを見つめることしかできない。

 

「ラッツ、その前に、一つだけ質問が」

 

「おおう? なにかね」

 

「そこの子供と、この列車と後ろの列車、全てに手を出さないという保証は? 爆弾を解除するという保証は?」

 

「うーん。なかなかいい。なかなかいい考えだクローナ。そこまで周囲を優先するか。自分よりも他人を守るか、実にいい」

 

「いいから、はやく答えなさい」

 

「我々は戦争に勝ちたいだけであって、テロリストではないんだ。無益な殺傷はしないし、無意味に目立つつもりもない」

 

「そう。じゃあ手錠でもなんでもかけて、それで満足したらそこの子供を解放して、すぐに爆弾を止めなさい」

 

 クローナが後ろに手を回すと、大男の一人が細いロープで手を縛った。

 

「よし、約束だ。そのガキを解放しろ」

 

 ラッツに命令された斧の男は少年を解放した。

泣き叫ばないだけ、勇気があると言えようか。

 

「意外と素直なのねラッツ。この一週間、あなたのことは気に食わなかったけど、初めて感心したわ」

 

 それはクローナの僅かな反撃だった。

 

 だがラッツの怒りの導火線には小さな火がついた。

自由を奪われたクローナの細い首にラッツの手が伸びる。

 

 首を絞めたっ!

 

「貴様なんぞ、能力さえなければただの細腕だ。戦争に勝って用済みになったら適当なところに売り飛ばしてやる。お前のような上玉は高く売れるからな。調子に乗れるのは今のうちだぞ」

 

「……ぐ……そ、そう。楽しみね」

 

「貴様っ」

 

 クローナの頬にビンタが叩き込まれた。

鋭い痛みと共に、破裂音が響く。

 

 手でバランスを取れないクローナは、床に尻餅をついた。

口からは一筋の血が真っ赤な線を描いている。

それでもなおクローナは、ラッツを睨み続ける。

 

 そのとき、部屋にあった木箱の隅から、一匹の小動物が現れた。

 

 ネズミほどの大きさだが、背中に無数のトゲをはやした、ハリネズミだ。

 

「ピアストル、ここにいたのね……」

 

 ピアストルと呼ばれたハリネズミは、クローナの背中を器用に走り、頭上へ到達した。

 

「なんだその小動物は」

 

ハリネズミ、知らないの? 私の大事な仲間よ」

 

「ふん。ネズミが仲間か」

 

「いいでしょ、ハリネズミの一匹くらい」

 

「好きにしろ。はやく立ち上がれ」

 

 強気の姿勢を崩さぬまま、クローナは立ち上がった。

 

「それで、どこに連れて行くつもりなの? まだ列車は動いているようだけど」

 

「心配するな。次で停まる。あとは仲間と合流して、我がナイラ国に連れて行って、戦争をおっ始めれば目的は果たせる」

 

「そう」

 

 表面上は冷静さを失っていなかったが、心臓の鼓動は破裂しそうな勢いだった。

 

 おそらく、護衛などはすでに殺されている。

この先いつ能力を使われても良いように、きっと手も打ってある。

このままでは、思惑通りに戦争が始まってしまう。

 

 本当は、泣き叫びたいほど恐怖していた。

 

 けれども涙の一つでも落とせば、完璧に負けを認めることになると思っている。

それがクローナの心境だった。

 

「でも、列車が停まるまではまだ時間がある。だからクローナ、あなたには見てもらいたいものがあるんだ」

 

「見てもらいたい、もの? それは?」

 

 後ろにラッツが立ち、クローナの背中にピタリと銃口を合わせたまま場所を指示する。

 

 能力があるとはいえ、手を縛られていればただの少女だ。

拳銃には勝てない。

 

「後ろから見てるとよ、なかなか綺麗な髪の毛してるじゃないか。知っているか? 髪の毛ってのは綺麗なら売ることもできるんだ」

 

「やっぱり能力を使うだけ使って用積みになったら売るのね」

 

「俺はあなたのような子供には興味ないが、な。ほれ、そこを右だ、その扉に入れ」

 

 銃口を向けたまま通路を歩くと、右手にひと際大きな扉があった。

客室の扉に比べて大きなカギがついている。

 

 異質! そういった雰囲気を、クローナは感じざるを得ない!

 

「それを開けろ」

 

「開けろって、カギがかかってるけど」

 

「あなたならできるだろう。能力で、な」

 

 確かに、クローナにならカギの一つや二つくらい造作もないことだった。

開けるだけでなく、完全に消し去ることもできる。

 

「いいの? この能力であなたを消すこともできるのよ」

 

「脅したって無駄だぞ。その能力は目に見えるものにしか効果がないんだろう」

 

 それに、能力を発動すると凄まじく体力を消耗する。

 

 そう。

抵抗し辛いように、ラッツはあらかじめ体力を削らせるつもりでいたのだ。

 

「……今後は秘書にも能力について秘密にしておくべきね」

 

「今後があれば、な。はやく開けろ。はやくだ」

 

 クローナは目の前にある頑強なカギを見据えた。

 

 クローナの目が黄金に輝き、能力を発動する。

 

 触れてもいないはずだが、カギは生きているかのように“痙攣”している。

 

「ほほう。これが能力か。面白いじゃないか。戦争に使うのもいいが、サーカスに出すのも面白いな」

 

 砂にでも生まれ変わらせたかのように、カギはその場に零れ落ちる。

 

「うっ……」

 

 クローナの息が切れ、その場にへたりこんだ。

三百メートルほどを全力疾走したのとそう変わらないほどの消耗だ。

 

「ど、どう……はぁはぁ……これで、分かった? 能力が」

 

「うんうんうんうんうん。面白いね。面白いね。しかし困ったな、あんなカギ程度を消すだけでこれほど消耗するのなら、敵の兵隊を一度に消し飛ばすほどとなると、死ぬのか?」

 

「ば、場合によっては、気絶するかもね」

 

 これくらいの消耗なら数分で回復できるが、酷ければ何日も休息を要するときがある。

強力すぎるほどの能力だが、もちろんそれ相応の消耗もするのだ。

 

「そろそろ立てるだろ、ほら開けろ」

 

 拳銃で背中を小突かれ、クローナは扉に能力を使い開いた。

 

 念のため、そっと開く。

重苦しい鉄の扉が、口を開けた。

 

「なに、これ」

 

 そこにはクローナの想像を絶するものがあった。

 

 時代や世界観を越えたような、SF小説にでも登場しそうな――。

 

「驚いたかね。こいつはニッポンという小さな国で見つけたのさ」

 

「み、見つけたって……」

 

 そこには紫色の液体が詰まった透明な箱があり、中で上半身裸の男が横たわっていた。

 

 歳はクローナとほぼ同じでまだ若いが、逞しい体つきであり、誰が見ても納得する屈強な身体だ。

 

「あ、あなたたちは人を、こんな風にっ!」

 

「こいつはね、あなたと一緒に兵器になってもらうのだ。見ろ、こいつの手を」

 

「手?」

 

 男の手には、複雑な模様が彫られた手袋があった。

紫色の液体につけられているためクローナには確認し辛いが、その模様は気高き獅子の模様であった。

 

「この手袋が……なに?」

 

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