日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(27 最終回)技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア

http://blog.hatena.ne.jp/-/odai/9247541947915157485:title=お題「マイブーム」]

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 バンに問われた言葉がそのまま重くのしかかる。

自分だけでは答えを出せない。

 

「靴……アスンシオンは……」

 

 自分へのいら立ちや迷いを隠すため、ベルンは拳を強く握った。

 

 こうなれば、正直に話すほかない。

 

 ベルンは得た情報をアピアに伝えた。

 

 数千年前にアスンシオンの装着者が反乱を起こして大量に命を奪ったらしいこと。

 

 しかしそれがなければ戦う力がなくなってしまうこと。

 

 そして、ベルンは今アスンシオンについて迷っていること。

 

「僕は、この靴を使っちゃいけない。もう、血で汚れた右手は見たくないんだ」

 

「だから、私は助けられないって?」

 

「そうだ。僕には、アピアを助ける権利なんてないんだ」

 

「本気で言ってるの?」

 

 アピアはベルンの頬に触れた。少し身長差があってベルンを見上げる形になる。

 

「過去の人が何かしたからなに? それって、ベルンが悪いことしたわけじゃないでしょ? 右手に血が見えたからってなに? それって、ベルンが誰かを殺しちゃったの?」

 

「違う、けど」

 

「じゃあ、気にしなくていいんじゃない? 私がベルンだったら、ふーん。で済ませるけど」

 

「え、そんな軽い?」

 

「考えすぎだって。ベルンは、なにも心配しなくていいと思うよ」

 

 その説得だけで、ベルンの心に巣くっていたモヤモヤが一気に消え去った。

さっきまで悩んでいたのがバカバカしくなるほど、意外にもあっさりと解決できたことにベルンも驚いている。

 

「そ、そうか。心配しすぎなんだ……」

 

「うん、だから進もう? 私を、助けてくれるんでしょ?」

 

「ああ……もちろん」

 

 ベルンは拳を強く握り、再び勇気を取り戻した。

あとは進むのみ、そしてアピアを助ける手段を見つけて帰るのみ、簡単なことだ。

 

 ベルンは出口を塞ぐバンに視線を向けた。

 

 ――しかし。

 

「いない?」

 

 アピアも同時に視線を向けたが、やはりそこには誰も立っていない。

 

 バンの背後にあった鉄格子も開いており、ここの試練は乗り越えたのだと確信し、前に進んだ。

 

 今度は、アピアと共に歩きながら。

 

 と意気込んで進んだものの、さっそく行き止まりに当たってしまった。

 

 アピアは壁の一部が出っ張っているのを見つけた。

 

「これかな?」

 

 触れる――すると、ゴゴゴと重い音を響かせながら、壁がスライドして道が出来上がった。

 

 そこには、マセルとナウルが剣と剣を交えながら死闘を繰り広げていた。

 

「おいベルン! こっち手伝え!」

 

 呆気にとられるベルンに無茶な要求が投げつけられる。

 

 だが放ってもおけないベルンはナウルに狙いを定めてはね上がり、空中でアスンシオンに変身。

剣を構えて斬りかかった。

 

 ナウルは不意打ちを巧みにかわし、ベルンはマセルと並んだ。

 

「マセルさん、大丈夫ですか?」

 

「へっ……俺を誰だと思ってやがる。この程度でくたばるわけないだろ」

 

 マセルには勝機しかない。

体は傷だらけでも、動きさえすればどこにも問題はない。

 

「マセルさん、察しましたよ、こいつを倒せばいいんでしょう?」

 

「分かってんじゃねぇか!」

 

 二人の戦士。

剣を向ける対象はただ一つ。

ただ一つを崩せば、それで決まりだ。

 

「貴様らは、靴がなければここに辿り着けなかった弱者だ。だがその努力は認めよう」

 

 マセルたちとナウルは、ジリジリと距離を保ちつつ円を描く形で歩く。

だが目は離さない。

 

 僅かに変わる間合い。

継続する睨み合い。

 

その隙にマセルは作戦を立てる。

 

「ベルン、よく聞け。一度だけ言うぞ」

 

「……?」

 

 マセルはナウルの耳には入らない程度の声で言った。

 

「目標はお前のガールフレンドを助けることだが、あのナウルの口ぶりからしても助ける方法はここにあるみたいだ」

 

「えぇ。僕のほうにいた男からもそう聞いています」

 

「最初の試練、黒い影を思い出せ」

 

 槍と盾を持った、霧のように消える敵のことだ。

 

「あいつの弱点は背中だった。おそらく、あいつも同じだ」

 

「そこを狙えば……」

 

「保証はない。俺の勘だがな」

 

「あなたは本当に、勘や運任せですね……分かりました。行きますっ――!」

 

 ベルンは踏み込んだ。

背後を取るためスピード重視に動く。

 

 だが普通に背後を取りに行っても、防がれるのは目に見えている。

ならば、多少の変化球を交えて動かなければ一筋縄ではいかない。

 

 そして、跳躍。

体全てをバネに変え、ベルンはナウルの頭上を飛び背後に回った。

直後にナウルが水平に斬り、すかさずベルンは剣で防ぐ。

 

 マセルとベルンで挟み撃ちしている状況だが、ナウルはマセルに背中を向けているわけではなく、両者を左右に置いている状況だ。

これでは完全に背後を取ったことにはならない。

 

 ナウルが剣を持つ右手はベルンの攻撃を防いではいるが、押し負けることなく余裕の表情だ。

 

「マセルさん! こいつは左に武器を持ってません! はやく!」

 

「あぁ。そのまま押さえてろ!」

 

 たとえ背中を向けていなくても、一人が押さえている間に背中を攻めればいいだけのことだ。

 

 大きくステップを踏み込んで距離を詰める。

剣を持つ手に力が入る。

 

「そのナウルの皮、はいでやる!」

 

 今なら空いている左から攻められる。

左右なら正面よりは勝機がある。

 

 マセルが高く飛ぶ。

ベルンのように背後に回らず、ナウルに向かって飛び掛かるようにだ。

 

 だが、やはり甘くない。

 

 渾身の一撃はナウルの刀身を滑って受け流され、そしてマセルの鼻先に剣先が突き付けられた。

 

「お前たち、命を欲しているんだろう。なら差し出そう、アピアニコシアのために」

 

ナウル、どういうつもりだ」

 

「俺はこの遺跡の試練。人の記憶から姿を借りて試練を与えるんだ。もちろん、それ相応の褒美も用意している」

 

「お前、まさか命があるのか?」

 

「命はない。だが、人に命を与えることはできる」

 

 その言葉を耳にし、ベルンの腕に力が溢れる。

 

「本当なのか……?」

 

「お前らがそれにふさわしい強さを持っていればな」

 

「そうか……じゃあ……!」

 

 ベルンの持つ剣が光を放った。

闇すらも切り裂けるほどの強烈な光だ。

当然、ただの光ではない。

剣の威力、斬れ味が格段に増している。

 

「はぁぁぁああああ!」

 

 ベルンが疾風の如き敏速で一歩後退し、ナウルに破壊的威力を誇る突きを繰り出した。

 

 ギィィィィィン!

 

 剣と剣が火花を散らし、甲高い金属の音が周囲を揺らす。

 

しかしナウルは剣で払い、いともたやすく突きを防いだ。

 

「マセルさん!」

 

「分かってる!」

 

 マセルが懐に飛び込む。

バットのスイングのように、ナウルの腹に剣を叩き込んだ。

 

 が――。

 

「だから甘いと言っている!」

 

 確かに攻撃は命中した。

だが、キャビクレイに変身していることもありそう簡単には貫けない。

 

「どうしたマセル? 背中を狙うんじゃないのか?」

 

「なに言ってやがる? 背中を狙ってんだろーが」

 

 マセルはメットの下で不敵に笑った。

 

「お前ら二人は動けない。誰が背中を狙うつもりだ?」

 

「俺にはな、まだ一緒に冒険に来てる相棒がいるんだよ」

 

「――なんだと」

 

 そのとき、その場に新たな人物が乱入した。

マセルでもベルンでもソフィアでもアピアでもない、ずっとそこにいた、あいつが――。

 

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 駆けてきたその人物は、大きな金属の破片を手にし、隙が出来たナウルの背中を強打した。

弱点である背中をやられ、ナウルの体から力が抜ける。

 

「マセルさん! 今です!」

 

「あぁ!」

 

 マセルは背後に剣を放り投げ、ナウルの正面から正拳突きを打ち込んだ。

 

「ぐあっ!」

 

 拳を叩き込んだ部分からバチバチと電撃が迸り、纏っていた鎧が徐々に消滅していく。

キャビクレイの変身が解除されたのだ。

 

 ナウル本来の姿が露わになり、マセルたちとまともに戦う力は失われた。

 

「ぐ……なんだ、背中を攻撃した、お前は……」

 

 ナウルの背後、そこにいた人物は――。

 

「私のこと圧倒的にナメてもらっちゃ困ります!」

 

 そこにいたのは、紛れもなくバレッタ

圧倒的に、バレッタウェリントンだ!

 

 手にはかつてアテネ号の一部だった金属片がある。

フルパワーで振ったせいで肩が痛んではいたが、バレッタにとっては些細なことだ。

 

ナウルさんの皮を被った幻、気づかなかったの? 私、ずっっとみんなの後ろにいたの!」

 

「俺は気づいてたぜ」

 

 マセルは胸を張って言った。

 

「まぁ気づいたのはついさっきだがな。結果的になんとかなったならヨシとするか」

 

「適当ですねマセルさんは」

 

「その適当でなんとかなったのも、お前のおかげだけどな」

 

 二人はハイタッチをした。

 

 アピアもソフィアも駆け寄り、マセルたちの後ろに隠れる。

 

ナウルがキャビクレイに変身できない以上、脅威は去ったと見てもいいが、まだ油断はできない。

 

「素晴らしいな。試練を突破し、ついに俺を打ち倒した。その功績は誉めてやる。約束は守る」

 

 ナウルは光の粒子のようなものを空中から出現させ、そこからペンダントを出現させた。

金のように輝いていて美しい。

金の鎖の先には月と太陽のマークが刻まれたメダルがついていて、首から下げられるようになっている。

それを、アピアの目を見据えながら差し出した。

 

「これは俺の命の結晶。肌身離さず首にかけていれば病気なんてどうってことないさ」

 

 アピアとしては半信半疑ではあったが、疑うのは今さらだな、とも思った。

 

 変身できる靴に空飛ぶ遺跡、そこまで不思議なことがあるなら病気くらいなら治せるはず。

そう期待しつつ、アピアはペンダントを受け取った。

 

「本当に、これでソウル病が治るの? 二十歳まで……生きられるの……?」

 

「厳密には、きみの生命力を高めることで病気を消滅させることができる。このマジュロ遺跡の力を甘く見るなよ」

 

 ペンダントに力を与えて渡したことにより、ナウルは存在を保つ力を失ってしまった。

そのせいか、体から小さな光の粒子が溢れ出てきた。

 

「すまない。これでおわかれだ」

 

 ナウルの足先が消え、幽霊のような姿になった。

時間切れということだ。

 

スコピエ文明のためにソフィア王が戻ってきてくれなかったのは残念ではあったが、まぁ君たちのように強い人間がいれば王も必要ないか」

 

 溢れた光の粒子が頭の先にまで到達し、ナウルの体は完全に消滅。

物理的な姿は失われた。

 

 二人は変身を解除する。

訪れたのは静寂――アピアについてもソフィアについても、得る物は得た。全て解決だ。

 

 と思われたが、まだ大きな問題は残っている。

 

「ところでバレッタ、質問だ」

 

 マセルが背伸びをしながら言う。

 

「帰る方法、見つかったか?」

 

「あっ」

 

 ベルン、アピア、ソフィア、六つの目がバレッタに集中した。

 

「ここは空の上。飛行機もなしじゃ帰れない。お前は方法を考えると言って残ったはずだが」

 

「そ、そう言われても……でもほら、結果的に私がいたから勝てたじゃないですか!」

 

「そうなんだが、そうなんだが……どうする?」

 

 飛行機は大破。

遺跡が海に落ちる気配もない。

変身して落ちるにしても高さがありすぎる。

 

 まさに、打つ手がない。

 ソフィアはブンブンと首を横に振るばかり。

取り戻した記憶の中には答えはなかったようだ。

 

 さて、どうしようか。

みんなで答えを考えあぐねているとき、またトラブルが増えた。

 

 ドン! という音と地響きがやってくる。

音の位置は、上だ。

 上――すなわち、地上から何かが来るということだ。

 

「上……? まさか、こんなところに人が来るっていうのか?」

 

 マセルの疑問にバレッタが答える。

 

「いや、実際に私たちが来てるじゃないですか。他にも誰か来てたっておかしくないですよ。でも、誰かって、誰でしょう?」

 

 いつもいつも色々な場所に出現する相手。

なぜマセルたちのいる場所が分かるのか、なぜそこにタイミングよく現れるのか、いつも意味不明な敵。

 

 ――ここに来るとすれば、あいつらしかいない。

 

「まさか!」

 

 天井を破って現れたそいつらは、例によって例の如く、

 

「っほほほほほほほほ! このバンダル様を忘れてもらっちゃ困るわよぉぉぉ!」

 

 マジュロ遺跡の手前でマセルに撃墜されたはずのキングストン連中だ。

なぜそこにいるのか、どうやって襲来したのか、なぜ場所が分かるのか、細かいことは気にしてはいけない。

 

 とにかく、そこにヤツらはいるのだ!

 

 プロペラのついたヘリコプターのような小型のマシンに、窮屈そうに三人で乗っている。

 

 コクピットの下に武器らしきものはない。

どうやって天井を壊したのか考えてはいけない。

 

「お前ら! また懲りずに来やがったな!」

 

「懲りないのは悪党の専売特許よ! スリブ! ガワン! アレを用意しなさいな!」

 

「「承知でガッテン!」」

 

 スリブとガワンのコンビが意味ありげなレバーを引いた。

コクピットの下から巨大な大砲のような筒が現れる。

 

 それだけでマセルたちは察した。

 

「これでも食らいなさい! マセル坊やとその他のお嬢さん方!」

 

 バンダルはレバーの横にあった意味ありげな真っ赤なボタンを叩いた。

 

 そこからの展開はお察しの通り。

 

 大砲が火を噴く。

イカほどの鋼鉄の弾丸が放たれ、マセルたちのいる地面に、命中。

 

「や」「や」「や」「や」「や」

 

「「「「「ヤバい!」」」」」

 

 五人の声が重なる。

弾丸は爆発、周囲に爆風と熱をまき散らし、壁を破壊してマセルたちを吹き飛ばす。

 

 地から足が離れ、空に放り出されてしまった。

 

 下一面は海。

ただの海ではない、雲とほぼ同じ高さにあるマジュロ遺跡から落ちる海だ。

生身で落ちようものならまず命があると思わないほうがいい。

 

 マセルとベルンは変身。

マセルはメット左からワイヤーを取り出して四人に巻き付けた。

 

 バラバラに落ちていた四人はワイヤーに絡み取られて纏まった。

纏められていれば身動きをとることはできないが、海に落ちたときに離れ離れになることはない。

そこからはベルンがワイヤーを外して陸まで上がってもらう。

そういった計画をすぐに構築したうえでの判断だった。

 

「ベルン! そっちは任せた!」

 

「は、はい!」

 

 風向きも不安定な状況でベルンたちとの距離が離れ、すぐに豆粒のように小さくなる。

下からの風圧に耐えるだけでもやっとの状況に、お互いに場所を捉えることができない。

 

 バラバラに飛ぶという一つの問題は、まぁなんとなくではあるが片付いた。

 

 だが大きな問題は残っている。

 

「マセル坊やぁぁぁぁぁ! 逃がさないよぉ!」

 

 キングストン連中は落ちるマセルに狙いを定めた。

謎の乗り物で降下し、無防備に落ちるマセルを追撃する。

 

「お前ら! よくもやってくれたな!」

 

「やるに決まってるでしょ! そら、もう一発食らいなさいな!」

 

 コクピット下の大砲が再び火を噴く。

落ちるマセルに、無慈悲な弾丸が直進する。

 

 ダイレクトに命中すればひとたまりもないが、マセルはこの程度では怯まない!

 

「おらぁっぁぁぁ!」

 

 寸前、剣を垂直に振り下ろし、弾丸を真っ二つに切り裂いた。

切り裂かれた弾丸は左右を通り過ぎ、背後で爆発。

爆風で背中を押され、キングストン連中の乗り物へ前進しコクピットの下に張り付いた状況になる。

 

「コシャクなマセル坊や! これだからトレジャーハンターは!」

 

「うるせぇ!」

 

 剣を逆手に握りなおし、コクピットのど真ん中に下から突き刺して貫通させる。

電撃が迸り、乗り物のプロペラは活動を停止した。

 

「ひぃぃ! スリブとガワン、なんとかなさいな!」

 

「ムリですぜ! 下から剣が飛び出してますし、計器類は動かないですぜ!」

 

「もう落ちるっちょ! 終わりっちょ!」

 

 プロペラの付け根が爆発。

コクピットも火を噴き、ただの鉄の塊と化す。

 

 だがマセルは離れない。

離れれば、海に落ちたときに浮上しづらくなるからだ。

 

「離れなさいなマセル坊や!」

 

「お前らが粉々に爆発したって絶対に離れねぇ! だって俺は泳げねぇからな!」

 

 無力になった四人は、ただ落下を続けることしかできない。

海へ真っ逆さま――下に落ちたところで、助かる確率は絶望的だ。

 

 ――あの日から水と空に恐怖を抱くようになった。

 

 飛行機が燃料切れを起こし、友人のナウル・アルマトゥイが死んだあの日。

それでも遺跡を見つけ、冒険をした。

でも結局は海への落下という結末になってしまうのは、呪いなのか。

 

 見てたか、ナウル

 

 俺は、伝説って言ってもいいくらいのトレジャーハンターになったよ。

 

 

 

 それから三日後。

 

 ソフィアはバレッタとともに暮らしている。

だんだんといつものような笑顔も取り戻してきた。

 

度々海のほうを確認しているが、まだマセルは帰ってこない。

 

 ベルンもアピアも同じ気持ちだ。

命の恩人を放っておけるわけもなく、いつもバレッタの家の前に来ては海を見ていた。

 

 帰還を願うように、ベルンはバイオリンを奏でた。

 

 美しい音色が夕日の光る海に寂しく響き、どこまでも広がった。

 

「ねぇ、ベルン。私さ、なんだか前より元気になった気がした」

 

「元気? 薬は飲まなくていいの?」

 

「うん。目眩もしないし、薬を飲まなくても平気。きっと、このペンダントのおかげだと思う」

 

 ナウルから貰ったペンダントが夕日を受けて輝いた。

生命力を高めるという話はウソではなかったようだ。

 

 二人の間に、ソフィアがやっ

てきた。

 

 記憶を取り戻したソフィアは前のような無邪気さはなかったが、王という立場に縛られることなく、少なくとも安心した生活を送れていた。

 

「マセル、帰ってこないね」

 

 それに答えたのは後ろから入って来たバレッタ

 

「帰ってくるよ、渡り鳥だもん」

 

 渡り鳥。

 

 無鉄砲に突き進み、お宝を探す冒険バカのことである。

 

 脱出方法なんて後回し。

高いところが苦手でカナヅチで、トレジャーハンターになんて向かないような男。

だが勇敢で、困っている人は助ける、ちょっと不器用だけど根は優しい人。

 

「それって、俺のことか」

 

 どこからか声がした。

帰ってきた彼の声だ。

 

 バレッタは駆け寄り、どこからか帰って来た渡り鳥の胸に飛び込んだ。

 

 涙が夕日に輝き、頬を伝った。

 

「まだ、恩を返してもらってませんよマセルさん、圧倒的に……」

 

「じゃあ、また冒険にでも行くか」

 

 彼がどこから帰って来たのか、これからどこに行くのか、それはどこでもいい。

 

 お宝があって仲間がいれば、そこが冒険の舞台になるから。

 

 渡り鳥――という男をご存じだろうか?

 

 空から空へ飛びまわり、遺跡から洞窟から縦横無尽に駆け回って宝を集める、いわゆるトレジャーハンターである。

 

 そんな彼の名は「マセル・エレバン

 

 ということでマセルたちの冒険の幕は、まだまだ閉じることはないのである。

 

 技巧鎧 ミスティ・ミラージュ ギア 完

 

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