日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア22

お題「マイブーム」

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距離があるおかげでアテネ号には直撃しないものの、弾丸を受けて無傷とはいかない。

 

「二人とも! 頭を下げてください!」

 

 バレッタは視線を逸らすことなくアピアとソフィアに指示を出す。

 

 それでも操縦は怠らず、速度も高度も落ちることはない。

 

 だがそれも時間の問題だ。

 

 もし燃料タンクや羽が破壊されれば、五人も乗った飛行機は耐え切れず墜落は間違いない。

 

 しばらく耐えるとバルカンは止んだ。

だが弾切れというわけではなく、オーバーヒート防止のために長時間の発射を控えただけだ。

 

 マセルは、ここから追撃する決断をする。

やられる前にやるしか、助かる道はない。

 

「ベルン! 俺らであいつらを落とすぞ!」

 

「どうやるんですか!? こっちには銃も爆弾もないんですよ!」

 

「銃も爆弾もないが、ウイントフックとアスンシオンがあるだろが!」

 

「でも、どうやってあんな距離にいる敵を倒すっていうんですか!? まさか、飛んで戻ってくるなんて、言わないですよね」

 

「勘が良いじゃないかベルン。その、まさかだ」

 

「無茶だ……ここはあなたの嫌いな空中ですよ。正気ですか!」

 

「だったら、お前のガールフレンドを守る作戦がなにかあるのか?」

 

「それは、ないですけど!」

 

「なにもないのか? そりゃ名案だな!」

 

 マセルは軽く準備運動をし、背後から迫るキングストン連中へ向く。

 

「俺が落ちたらバレッタたちを頼む」

 

「なにを……?」

 

 迷いもせず、マセルは陸上のようなクラウチングスタートの体勢になる。

 

 心の中で数字を数え、

 

 一――。

 

 二――。

 

 三――。

 

 蹴る。

 

 アテネ号の上を全速力で駆けだした。

かなりの短距離で助走を作り、飛行機の端に到達したところで両足をバネにする。

 

 下を見ない下を見ない下を見ない下を見ない下を見ない。

 

 下を見た瞬間、失神する。

それだけ注意し、とにかく前へ前へと突き進むことだけを考える。

 

「とどけぇえっぇぇ!」

 

 手を伸ばし、足を伸ばし、それでもまだ距離はある。

 

 だが相手の飛行機も前進を続けているため、確実に距離は詰められているが。

 

「無駄なあがきよマセル坊や!」

 

 冷却が終わったバルカンを連射し、空中にいるマセルを問答無用で襲う。

 

 それが幸か不幸か、マセルのおかげでアテネ号に命中しないのも事実だが、ウイントフックも無敵というわけではない。

 

「ぐおおおお!」

 

 生身ならハチの巣は間違いない威力と命中率――。

 

 だがこんなところで止まるわけにもいかない。

 

 マセルはメットから剣を抜き、弾丸を弾きつつ目標へ突き進む。

 

 剣を掲げ、弾丸などなんのそのと速度は落とさず、飛行機に片足が到達した。

プロペラと操縦席のギリギリのラインを足場にして踏ん張る。着地の勢いと組み合わせ、マセルは大きく振りかぶった。

 

「食らええええ!」

 

 真下に剣を突き刺して船体を貫通させると、破裂音とともに煙と火が噴き出す。

 

「やめなさいよマセル坊やぁぁぁぁ!」

 

 涙目になるバンダルに「じゃあな」と手を振り背を向けた。

 

 墜落前に飛行機を蹴り、アテネ号へ戻るための跳躍を試みた。

 

 だが行きと違い、アテネ号は前進をし続けてぐんぐん距離が離れてゆく。

 

 その差、約十メートル。

 

 一度のジャンプだけで届くのか――否、届かなければならない。

 

 ――爆発。

 

 背後では不規則な爆発とともにキングストン連中の飛行機が海へ墜落していく。

 

 それが助力となったのかマセルの背中は爆風で押し出され、それこそ爆発的な加速を見せた。

 

「届きやがれぇぇぇぇぇ!」

 

 ウイントフックのジャンプでもまだ届かない。

それでも容赦なく距離は離れてゆく。どうすればいい、どうすれば、アテネ号に辿り着ける……?

 

「こうなったら、一瞬の賭けだ……!」

 

 メットの右に剣を戻し、今度は左の歯車を外す。

ベオグラード遺跡の脱出の際に見たワイヤーを思い出したのだ。

 

「おりゃぁぁぁぁぁ!」

 

 鉄球を投げんとする勢いで歯車を振ると、フックのついた細いワイヤーが飛び出す。

 

 伸びる、伸びる、伸びる――。

 

 だが届かない――。

 

 あと数センチ、というところでワイヤーは終わり、マセルの頭の中が真っ白になった。

 

 これ以上の策は、ない。

 

 ――もしも仲間がいなければ、の話だが。

 

「落ちないでっ!」

 

 ベルンが手を伸ばし、ワイヤーを掴んだ。

 

 急に重力が逆流したように感じたマセルは、何事かと見上げる。

 

「こ、ここで落ちるような人なんですかあなたは! 引っ張り上げます! だからくれぐれも下を見ないで!」

 

 ワイヤーを掴んだベルンは、綱引きの要領で引き始める。

 

 アスンシオンのおかげで幾分は力に余裕があるものの、前方から吹く風で押し出されてしまい一筋縄ではいかない。

 

「うおおお! だから高いところは嫌なんだぁ!」

 

 マセルの叫びなど、大空では風に流されて空しく消えるのみである。

いくら叫んだところで前進するわけもなく、マセルはただ耐えるのが精々だ。

すぐ目の前に陸地があれば別だったが、あいにくとそんなものはない。

しかも高所だと、どうしてもマセルは本気を出せない。

 

「弱音を吐いている場合ですか!」

 

 ベルンは引きながら、マセルの行動力を尊敬していた。

 

 帰り道の算段は立てていなかったにしろ、アテネ号を死守するためにキングストン連中の飛行機を自ら接近戦で落としに行くという勇気に。

 

「うぉりゃぁ!」

 

 大型魚の釣りの如く、マセルを空中から救い出した。

 

 綺麗な線を描きながらマセルは天高く舞い上がり、アテネ号に背中から叩きつけられる。

 

 ジャンプ、落下、停止、急上昇の空中コンボを体験したマセルの目はグルグルと回転し、もはや地上なのか把握できていない。

 

「マセルさん、マセルさん」

 

「おおお……どこだここは……」

 

アテネ号の上ですよ。もう空中じゃありません」

 

 マセルは辺りをキョロキョロと見回し、直後に口を押さえ、頬が膨れ上がる。

 

「うう……気分が悪い……」

 

「マセルさん、あなたは凄いですよ」

 

「えぇ? なにが?」

 

「さっきのです。おかげでみんな助かりました。マセルさんがいなかったら、あいつらに撃たれて堕ちていましたよ」

 

「あ、あぁ……」

 

 無我夢中で飛び出し、今は体調不良の四文字が頭の中を支配している。

ベルンの言葉などまともに耳に入らず、その場にぐったり気絶するように仰向けになった。

 

 

 

「マズいですよこれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 バレッタの悲痛な叫びによってマセルは叩き起こされる。

 

ただならぬことを察したマセルは、すぐ前方を確認した。

 

「マセルさん! 見えましたよ!」

 

 前方数十メートル先には、不自然にも空中に浮遊した地面が見えた。

すでにアルジェ遺跡よりも高度は高く、目視だけでも地表が確認できる。

 

バレッタ! 速度を下げて着陸だ!」

 

 下にいるバレッタへ向けて叫ぶ。

 

「そ、それが! さっきの攻撃でダメになったみたいで……」

 

「ま、まさか……!」

 

「速度と高度の調節がうまくいかないから着陸できません!」

 

 慌ててマセルがチェックをすると、羽の付け根から細い煙が噴き出している。

 

 まだ火が出ていないだけマシではあったが、とても安全と言える状態でもない。

 

「おいバレッタ! とにかく突き進め! とにかく地面に到達することだけを考えるんだ!」

 

「分かってますけど! 分かってはいますけど!」

 

 羽の煙は次第に大きくなり、やがて火を吹き始めた。

 

 もうシャレにならないところまで来てしまい、マセルはがむしゃらモードに入る。

 

 満身創痍のアテネ号は確実に高度を落とし、しかし速度は不規則に上下している。

もしアルジェ遺跡に到達できたとしても、胴体着陸できれば運が良いほうだろう。

 

「おいベルン、俺に作戦がある」

 

 崩れ落ちそうな心を無理やり引っ張り、そう提案する。

 

「どうするつもりですか」

 

「あと一分と何秒かで着陸――いや、地面に突っ込むだろう。俺は羽の下に行ってバレッタとソフィアを抱える。お前は」

 

アピア、ですよね」

 

 ベオグラード遺跡の脱出の際も同じ構図だったのをベルンは思い出し、素早く理解する。

 

 抱えて着地して無事かどうかの保証などないが、アテネ号ごと爆発されるよりかはマシと判断し、二人はその作戦で行くことにした。

 

 もう時間はない――。

 

 マセルは下の羽に下り、説明することなく、有無を言わせずソフィアとバレッタの首根っこを掴んだ。

 

 ベルンは、丁寧にアピアの手をとってからお姫様抱っこの体勢になる。

 

 少々乱暴ではあったが、できるだけ安全に状況を打破するにはこれしかない。

 

「マセルさん! なにを!」

 

「黙れバレッタ! 覚悟しとけよぉぉっぉ!」

 

 真下にはアルジェ遺跡の陸地がある。

だが操縦者を失ったアテネ号は止まることを知らず進み続ける。

羽から噴き出した煙も手が付けられないレベルまで炎上し、もはや飛行機と呼べない鉄クズになり果てていた。

 

「ベルン、三、二、一、で飛ぶぞ!」

 

「はい!」

 

 アテネ号――だった鉄クズが直進する先には大きな岩。

 

 激突すれば大爆発することくらい、子供にでも分かる状況だった。

 

 三――。

 

 二――。

 

 一――。

 

「飛べっ!」

 

 マセルを合図に、二人は斜め前方に飛んだ。

 

 うまく着地できたとしても、抱えているバレッタアピアを死守できなければ無意味だ。

しかし、ただ落ちる他に選択肢はない。

 

 ――直後に爆発。

 

 アテネ号だったものは岩に激突し、火炎と砕けた岩の粒をまき散らしその役目を終えた。

 

これでまたもや帰る道は消え去った。

 

 Y字に枝分かれた二人はなんとか着地したが、足を滑らせてしまいお世辞にも成功とは言えない着地をする。

 

抱えていたバレッタたちは腕から離れ、二、三回は転がって、ようやくまともに立つことができた。

 

「おい、大丈夫か」

 

 マセルはウイントフックを解除し、倒れたバレッタとソフィアを揺り起こす。

 

「う、ううう」

 

 軽く頭と肩を打ったバレッタは、頭を押さえながら立ち上がった。

 

 ソフィアも足を負傷したが、めげずに立ち上がる。

 

「大丈夫、みたいだな」

 

「はい」

 

「うん」

 

「それで、ベルンは?」

 

 マセルはバレッタたちを残して、爆発を挟んだ反対側へ向かうことに。

 

 黒い煙が立ち上る残骸――もはやアテネ号は原型を留めていないが、ここまで連れてきたことを考えればかなりの功績だ。

 

 だがお別れの挨拶をしている暇はない。

 

 煙を潜り抜け、マセルはベルンの下へ急いだ。

 

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