日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(21)技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア

お題「マイブーム」

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 マセルの予想通り、バレッタは港にある車を回収しに行っていた。

 

バレッタもマセルのことを忘れていたわけではなく、ちゃんと心の隅では心配をしている。

 

 しかし、まだバレッタはマセルのアジトなど知らないため探すこともできず、トレジャーハンターならそこまで心配する必要もないだろう、と考えていた。

 

 車のカギを開き、扉に手をかけた。

後は家に戻り、危険な冒険とは無縁の生活をするだけ。

 

 だがバレッタの冒険は、まだ終わらない。

 

バレッタさーん!」

 

「ん? アピアちゃん?」

 

 アピアとベルンは大急ぎで走り、ようやくバレッタに追いついた。

車に乗られていたらアウトだった。

 

「どうしたの? そんなに急いで」

 

「よかった……まだ、帰ってなかった……」

 

「何か用事?」

 

「その、実はお願いがあって来たんです」

 

 ベルンが言った。

 

「え? 私に?」

 

「たしかトレジャーハンターと知り合いでしたよね、あの人はどこです?」

 

「どこ? どこって言われても。だって、遺跡から流されたから、無事かどうかも分からないし……大丈夫、だとは思うけど。あの、それでどんな用事なの?」

 

「いえ、トレジャーハンターと知り合いなら、アピアの病気を治せるお宝とか知ってるかなって思ったんですけど」

 

「うーん。分かんないけど……もしかしたら、マセルさんなら何か知ってるかもしれないなぁ」

 

「せめてその人の家が分かれば――」

 

 ベルンたちが立ち尽くしていると、遠くからバレッタを呼ぶ声がした。

 

 まさに噂をしていたマセルの声だった。

 

「おーい! バレッタ!」

 

「もしかして、ま、マセルさん?」

 

 マセルはソフィアと一緒に走り、バレッタの下へ到達した。

 

 息を整えるより早くバレッタの肩を掴む。

 

バレッタ! 無事、無事だったんだな」

 

「マセルさんもソフィアちゃんも、無事だったんですね。大丈夫だとは信じてましたけど」

 

「当たり前だろ……あれ、お前もいたのか」

 

 マセルに視線を向けられ、ベルンは顔を背ける。

先ほどまで剣を交えていたのだから無理もない。

 

「それときみ、アピアだったかな。こいつと知り合いだったとはな」

 

 アピアは悠長にあいさつなどせず、堂々とマセルの前に立って手を取った。

 

 マセルも困惑するほど輝かしい瞳で目を見据える。

 

「お願いがあります、マセルさん」

 

「ああ? なんだよ急に」

 

「不老不死の、いえ、病気を治せるようなお宝って知りませんか?」

 

「いや、さすがにそこまでの物は分からないが……」

 

「もしあるのなら、私だけ連れて行ってください。どんな危険な場所でも必ず行きますから」

 

「いや、落ち着けよ。なにを焦っているかは知らないが、心あたりならある」

 

「ホントですか!?」

 

 一番驚いていたのはアピアだったが、ベルンとバレッタも目を丸くする。

 

「そこでバレッタ、お前の出番だ」

 

「え、私ですか?」

 

「新しい冒険に出発する。飛行機を用意してくれ」

 

 

 

「ちょっと古いですけど、こんな飛行機です」

 

 マセルたち五人はバレッタのガレージへやってきた。

 

 車を収納するガレージの下にはリモコンで上下する別のリフトがあった。

 

 ハイテク機能で隠されていた飛行機は、少し塗装が剥げていたがオンボロとまではいかない。

 

 六年前の写真のように歯車がむき出しではなく、しっかりとボディが出来上がっていてプロペラも健在。

羽は左右と、その上にも細い柱を挟んでもう二枚つけられているため上に乗ることも不可能ではない。

 

 白とオレンジのツートンカラーで、大きな席が二つという、トレジャーハンターにはたまらない逸品である。

 

 高いところが苦手でなければ。

 

「なぁバレッタ、この飛行機は乗ったことあるのか?」

 

「いえ、まだちゃんと乗ったことはないですけど」

 

「操縦はできるか?」

 

「まぁ、少しなら大丈夫ですよ。必ず、たぶん、きっと、おそらく、多少は」

 

 少しづつ失われていく自信の無さに、他の四人の表情が曇り始める。

そんな薄暗くなった空気を割いたのはベルンだった。

 

「そもそも、これに五人も乗れるんですか?」

 

 席は大きめなのが二つで、かなりムリをして乗っても三人が限界だろう。

 

 しかしメンバーはマセル、バレッタ、ベルン、アピア、ソフィアの五人。

どう考えても席は二人分足りていない。

 

「いや、問題はない」

 

 マセルはキッパリと言い切った。

 

「俺とベルンは変身して羽の上に立つ。落ちても、まぁ死にはしないだろう」

 

 その言葉にアピアは黙っていなかった。

 

「ちょっと待ってくださいよ! ベルンをそんな危険なところに立たせるなんて!」

 

「僕は大丈夫。僕は盗賊団と遺跡に行ったんだ。飛行機の上くらいがなんだ」

 

「……」

 

「俺がトレジャーハンターとして訊きたいのは一つ。ベルン、行くのか? 行かないのか?」

 

「もちろん行きますよ……それはいいんですけど、そもそもどこに行くんですか?」

 

 まだアルジェ遺跡について説明していなかったことにマセルは気づき、四人に説明をした。

 

 空の上に島があるらしいとのこと。

出現時期がソフィアと関係しているらしいこと。

もしかしたら、そこに病気を治療できる何かがあるかもしれないということ。

 遺跡に疎いベルンたちでも、さすがに空の島には驚愕した。

ましてやそこに行くとなると、ますますアピアの不安は膨れ上がる。

 

「俺はトレジャーハンターとしての好奇心で行くんじゃない。ソフィアのため、アピアのため、それと……」

 

 マセルはバレッタの頭にポンと手を置いた。

 

 といっても帽子越しではあったが、唐突のことに上目使いになって頬が赤く染まった。

 

「まだバレッタに、助けてもらった恩返しをしてない」

 

「そ、そうですよ! 安物のバッチじゃなくて、本物の金銀財宝じゃないと許しませんから!」

 

 恥ずかしさを隠すように、バレッタは叫んだ。

 

「そ、それより問題なのはどうやって乗るかですよ。大きい席が二つなら私たち女子メンバーが乗るのは……まぁムリをすればいけますけど。マセルさんは本当に羽の上でいいんですか?」

 

「俺らはさっき大丈夫って言ったはずだぞ」

 

「いや、私が言ってるのは高さのことですよ」

 

 高所恐怖症+カナヅチのマセルに、海の上を飛んでいけるのか、ということである。

 

「俺だって平気ではないがな。やるしかないだろ」

 

「じゃあ、これから整備を始めますから、ちょっと待っててください」

 

 マセルたちの手伝いもあり、飛行機の整備はすぐに終わった。

 

 六年もまともに起動していなかったが、特に目立った異常はなくパーツの不足もなかった。

 

 さて出発、というとき、マセルはどうしても確認しておきたかったことを質問する。

 

「なぁバレッタ、この飛行機、燃料である水はちゃんと入っているか?」

 

「はい。燃料の重さとかも考えてマックスではありませんけど」

 

 マセルは安心した顔もせず、「そうか」とだけ返した。

 

「どうしたんですか? 神妙な顔で」

 

「いや、重要なことだろ。燃料切れで落ちたらシャレにならないし」

 

「そう、ですけど」

 

「それともう一つ、この飛行機、名前はなんという?」

 

「ないですけど、飛行機に名前なんて必要ですか?」

 

 マセルは「男のロマンだ」と言わんばかりに頷く。

 

「こいつの名前は、アテネ号だ」

 

 

 

 アテネ号による飛行は順調だった。

 

 天気や風についてもこれといった問題はなく、故障なども見られない。

 

 ただ、やはり問題になったのは搭乗に関してだ。

 

 大きな席とはいえ、二つの席に女子メンバーが三人は快適とは言えない。

前で操縦しているバレッタは一人だが、後ろにはアピアとソフィアが密着しながら無理やり乗っている。

 

 それでも二人は文句一つも言わない。

それよりも問題なのはマセルである。

 

 飛行機は左右の羽の他に、細い柱を挟んでさらに上に二枚がつけられており、マセルとベルンはそこに立っていた。

 

 意気込んで出発したものの、下を覗きこむだけで失神寸前だ。

トレジャーハンターの素人であるベルンに心配されるほどである。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 お互いが靴で変身しているとはいえ、怖いものは怖い。

 

「うう、大丈夫だ。到着すれば陸地そのものだし」

 

「それについて訊きたかったんですが、空の島だなんてどういうことですか?」

 

「どういうこともなにも、行ってみなきゃ詳しくは分からないよ」

 

「まったく……盗賊団といいトレジャーハンターといい、どうしてこう無計画なんだか」

 

 両手をあげて、やれやれ、といったポーズを取るベルン。

 

「調べようにも下からじゃ見えないんだ。お前のガールフレンドの病気を治せる保証もないし」

 

「分かってますよ。僕らだって、ほぼ賭けみたいなものですから」

 

「お前はしっかりガールフレンドを守れ。バレッタとソフィアは任せろ」

 

「ガールフレンドって……またそれか。言われなくても守りますよ」

 

 マセルは無言で肩に手を置く。

頼んだぞ、という意味だ。

 

 しかし。

 

「うっ……すまん。気分が悪くなってきた」

 

 顔色も悪くなり、マセルは口を押さえて空を仰ぐ。

このまま下を覗きこめば嘔吐は間違いない。

 

「ちょっと! 大丈夫なんですか? そんな調子で」

 

「大丈夫だ! 男はお宝を目の前にしたら目の色が変わるんだ」

 

「目の色より顔の色をなんとかしてくださいよ!」

 

 それでも無事に到着できれば誰も文句はなかったのだが、やはりトレジャーハンターたちの冒険はそう一筋縄にはいかない。

 

「マセルさぁぁぁん!」

 

 バレッタが飛行機の音に負けないくらいに叫ぶ。

 

「どうしたバレッタ!」

 

「う、後ろから別の飛行機が接近してます!」

 

「なななななにぃ!?」

 

 すかさず振り向く。

 

 そこには、マセルに見覚えのある連中がいた。

 

「おほほほほほほ! 久しぶりね、マセル坊やとその他大勢!」

 

「久しぶりっちょ!」

 

「久しぶりですぜ!」

 

「お前らは、キングストン連中!」

 

 どこから用意したのか、小型のプロペラ機に無理やり三人で乗ったキングストン連中が、悪魔のような形相で追跡をしていた。

 

 アテネ号よりも数メートル後ろから同じくらいのスピードで接近中である。

 

「マセルさん、だ、誰ですかあれは?」

 

「あいつらはお宝を悪用する悪党どもだ。俺にしつこく付きまとってきやがる」

 

「盗賊団みたいなものですか?」

 

「まぁ似たようなもんだ」

 

 危機を察し、マセルはキングストン連中を観察した。

その飛行機には、明らかに危険な物がぶらさがっていた。

 

「おい、あれはまさか、バルカンか?」

 

 遠くてマセルたちにはよく見えていないが、キングストン連中の飛行機の羽の下からは小型のバルカンが現れていた。

 

 バンダルは大きく口を開け、高く手を挙げる。

 

「落ちなさい! マセル坊やとその他大勢!」

 

 バンダルの手が発射スイッチを叩く。

直後に豆粒のような弾丸がバルカンから連続で吐き出された。

 

「あいつら! 撃って来やがった!」

 

 

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