日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア20

お題「マイブーム」

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急にやってきた重い話を受け止めきれず、バレッタは押し黙る。

 

「ソウル病って言って。あと五年もしないで死んでしまうんです。薬も治し方もよく分からないらしくって」

 

「そ、そうなんだ」

 

 バレッタには慰める言葉も見つからない。

 

 すでに二十歳まで生きることができたバレッタには、どうにもリアリティがない話だった。

 

「あ、しんみりする話なんて聞いても面白くないですよね。すみません、話題を変えます」

 

「うん」

 

「ベルンの靴について、なにか知ってますか?」

 

「靴? と言うと」

 

 バレッタベオグラード遺跡でのことを思い出した。

 

 ベルンが靴を使ってマセルのように変身し、そしてマセルのウイントフックと戦う一部始終。

 

 そしてウイントフックの剣とぶつかり、ソフィアの頬にある太陽と三日月のマークが光って地下への道が出現した。

ベルンの靴はウイントフックとは無関係とも思えず、両者はベオグラード遺跡とソフィアとの関連性も濃厚だ。

 

 そう推理したバレッタは、即座に質問の意図を理解した。

 

 アピアはあの靴に感づいている、と。

 

 だが安全なお宝という保証もないため、アピアを危険に巻き込む可能性もある。

そこまで深く考えたうえで、バレッタは「知らないよ」と首を横に振った。

 

「そうですか。いえ、知らないならいいんです」

 

 アピアはポットを手に取り、バレッタの空のカップへ紅茶を注いだ。

 

「あの、これから、どうするつもりですか?」

 

「そうだなぁ。北のキトに帰りたい。もうトレジャーハンターと遺跡探検はコリゴリだからさ。そういえば、ここはどこの島なの?」

「ここは東のアクラです」

 

 北のキトとは正反対の南のミンスクではないことにバレッタは安堵する。

 

「そっか。じゃあ、私は帰ろうかな」

 

「え、もう行っちゃうんですか?」

 

 アピアはせっかくの話相手を帰らせたくなかった。

 

「うん。私は冒険なんかじゃなくて平穏な日々が欲しいからさ」

 

「あの、紅茶なら出しますから。もう少しだけ」

 

「えー? 紅茶はもうお腹いっぱいだからいいよ。じゃあごちそうさま。機会があったらまた会おうねぇ」

 

 バレッタはすぐにでも自宅に戻りたくて、この家を出た。

 

 車はベオグラード遺跡に入る前、アクラの港に停めていたため移動は苦ではない。

 

 あっさり帰ってしまったバレッタに拍子抜けし、ゆっくり閉まる入口をぼうっと眺めていた。

 

「行っちゃった……」

 

 風のように去っていったバレッタともっと仲良くなりたいと思っていた。

 

 憧れの二十歳(ハタチ)は、もうそこにはいない。

 

「あー……友達になりたかったなぁ」

 

 アピアは紅茶の片づけをするためソファの前に戻った。

トレイを台所へ運び、ため息をつきながらカップを洗い始める。

 

 すると、背後に気配を感じた。

 

「バレッ――」

 

 そこには起きたばかりのベルンがいた。

急なことに驚き、一瞬だけ心臓が跳ね上がる。

 

「ベ、ベルン。もう大丈夫なの? ケガはない?」

 

「あぁ、ちょっと頭が痛いけど大丈夫」

 

 二人きりの空間。

 

 静寂からは二人の鼓動と蛇口から流れる水音だけが響く。

 

 その静寂を破ったのは。

 

「アピ――」「ベル――」

 

 同時だった。

 

さらに気まずい空気が濃くなる。

 

「さ、先にいいよベルン」

 

「その、助けてくれてありがとう。あそこにいた理由は……ちょっと答えたくない。ごめん」

 

「そっか。言いたくないなら訊かないけど」

 

「……僕、アピアに言わなくちゃいけないことがある」

 

「え?」

 

ベルンは急に床に膝をつき、俯いた。

 

「どうしたの、ベルン?」

 

「ごめん……僕は、アピアを助けられなかった……」

 

 手に入らなった――存在しなかった不老不死の歯車。

 

 アピアを助けられなかったことに責任を感じて、ベルンは精一杯の謝罪をする。

 

「助けられなかった?」

 

「ごめん……ごめん……ごめんよ……」

 

 ベルンは泣き崩れ、床に額を押し付けた。

 

「ねぇベルン。その靴のせいでしょ?」

 

「こ、この靴は」

 

「急にスリジャたちに強気になって、なにかあったんでしょ? わたし港の近くで見たんだよ、一瞬で鎧の姿に変身した人を。ベルンのも、あれと似た靴なんでしょ?」

 

 マセルたちがベオグラード遺跡に行く直前、アピアの目の前で変身したときのことだ。

 

「分かった……分かったよ。アピアに説明する」

 

 ベルンはついに観念し、アピアに全てを打ち明ける決心を固めた。

 

 浜辺で拾ったアスンシオンで変身できること。

盗賊団に誘われて危険な遺跡に向かったこと。

トレジャーハンターの連れていたバレッタと流されて一緒に辿り着いたこと。

アピアが港で見たのは、おそらくその時のトレジャーハンター――マセルではないか、ということ。

 

「盗賊団? 盗賊団なんて、なんでそんなのと一緒に……」

 

「それは、その……アピアを助けるためだよ」

 

 なるべく隠し事はしようと思わず、ベルンは正直に答えた。

 

「私を? 助けるため? どういうこと?」

 

「その遺跡、ベオグラード遺跡っていうんだけど。そこに不老不死になれる歯車があったんだ」

 

「不老不死……」

 

「でも盗賊団の人がそれに触れて、死んだ」

 

「死んだって……?」

 

「そうだ。不老不死の歯車なんてニセモノだったんだ。だから一つも持ち帰れなかった」

 

「あの、ベルン」

 

「ごめん。盗賊団なんて信じたのがバカだったんだ」

 

「ベルン、そうじゃなくて」

 

「違う方法を見つけるから、アスンシオンだってあるし、僕は頼りないかも――」

 

「そうじゃなくて!」

 

 アピアはめいっぱいに声を張り上げた。

 

 言葉だけでなく、しっかり感情を伝えるように。

 

「ベルンは、私なんかのためにそんな危険なことをしちゃ

ダメなんだよ……」

 

「でも、ソウル病だってなんとかなるかもしれないじゃないか」

 

「それは、それは私自身がなんとかすることだよ。ベルンが命がけでするようなことじゃない」

 

「僕は命をかけるよ。だって、アピアに死んでほしくないから!」

 

「私は! 生きたいよ……二十歳になって、立派な大人になって……」

 

 アピアの目に涙が浮かぶ。

 

「もっと私のピアノをたくさんの人に聴いてもらって……いつか、ベルンのバイオリンと一緒に演奏したいよ! でも、でも……私のためにベルンが死んじゃったら、もっと悲しいよ!」

 

「……」

 

「ごめん……私のために不老不死の歯車を探してきてくれたことは、嬉しいよ。ありがとう」

 

「いや、それはいいんだけど……」

 

 その言葉を境に、二人の間に長い沈黙が訪れる。

 

 世間話に繋げるわけにも、楽しい話をするわけにもいかず、ベルンは話題探しに奮闘する。

 

 ベルンはふと右の手の平を見た。

 

 ベオグラード遺跡で見た、付着していた血のことを思い出してしまった。

 

 頭の隅に追いやっていたはずなのに、よりによってこのタイミングで思い出してしまった。

 

 あの時の血は、アピアが死んでしまう未来を示唆していたのか、自分ではアピアを助けるのに力不足だということを伝えるためだったのか。

血がどういった意味を持つのか整理できない。

 

 がむしゃらにでも答えを見つけるため、アピアに相談することにした。

 

「なぁ、アピア

 

「うん?」

 

「僕の右手が、血で汚れていたら、どうする?」 

 

 “血”というワードに、アピアは一歩後退する。

客観的に見れば、おかしくなったと思われても不思議ではない質問だ。

 

「も、もしかして、誰かの命を……?」

 

「ち、ちがうよ。あの……ええと……」

 

 ベルンはアピアに妙な質問をしたことを後悔した。

当然、そんな質問を投げられて冷静に答えられるのは、それこそ血で汚れた人間くらいだろう。

 

「ごめん、なんか、頭がぼうっとしてて……変な夢を見たからかな」

 

 不気味に思われないよう、なるべくそれっぽい言い訳で引っ張った。

 

血のことは一旦忘れ――るのは難しいが――血の話から遠ざけられる話題を探した。

 

「そういえばアピア、さっきの人はどこ? 少しだけ起きたときに隣のベッドで見かけたけど」

 

「えっと、北のキトに帰るって言ってたけど」

 

「キトか」

 

バレッタさんがどうかしたの?」

 

「いや、あのバレッタって人、トレジャーハンターと一緒にいたから、なにかソウル病を治せるようなお宝を知らないかなって思ってさ」

 

「歩いて帰ったはずだから、今から追いかければなんとかなるかも」

 

「よし、じゃあちょっと聞いてみよう。行ってくる」

 

 バレッタを追いかけるために玄関に走り、扉に手をかけた。

 

 だがすぐにその足が前進することはなかった。

アピアがその裾を掴んで止めたからだ。

 

「待ってよベルン。今度はバレッタさんを巻き込んで冒険に行くつもりなの?」

 

「い、いや、そういうつもりじゃ」

 

「そういうつもり、なんでしょ?」

 

「……いや、ただ話を聞くだけだよ」

 

 だが本当は協力してくれるのなら頼むつもり――ということは、アピアにはお見通しだった。

 

今それを言って止めたところで、また誤魔化して進むつもり、ということも見透かしている。

 

「ベルンを信用しないわけじゃないけど、私も一緒に行く」

 

アピアも? どうして」

 

「だって、元はと言えば私の病気のせいなんだから。それに、ベルンがまた危険なことをするようなら、私はすぐに止めるから」

 

「あぁ。じゃあすぐに行こう」

 

 話を終え、二人は外に出た。

 

それでもアピアは完全に納得したわけではない。

 

 自ら危険に走るベルンを止めることもできず、そして自身も危険に踏み込もうとしている。

 

 アピアは今なにを優先すべきなのか、頭がパンク寸前であった。

 

 

 ――マセルサイド――。

 

 

 空の島――アルジェ遺跡に行くため、マセルたちはバレッタの家に向かった。

 

 バンの死亡によってリーダーになったリンベルの指示で船を動かせば目的地はすぐだった。

 

 マセルは自分とソフィアの無事を伝えるためにも、バレッタの家の扉をノックする。

 

 しかし何度ノックしても返事はない。

 

「まさか、いないのか?」

 

 むしろ海を流されて無事に辿り着く可能性のほうが低い。

家に戻っていないほうが自然だ。

 

バレッタと、あとあの制服の少年。あいつら、まさか死んだんじゃないよな?」

 

 マセルに嫌な予感が過る。

 

「おいソフィア、バレッタを探しに行くぞ」

 

「えぇ? 探すって、どこ?」

 

「いや、もしかしたら偶然にも浜辺に打ち上げられて、偶然にも誰かに助けられているってことがあるかもしれないだろ。ソフィアだって俺と一緒じゃなかったのに助かってたし」

 

「んー? じゃあ、どこ探しに行くの?」

 

「そうだな……もしかしたら、港に停めた車を回収しに行っているかもしれない」

 

「と、いうことは?」

 

「東のアクラだ。すれ違ったら面倒だな。行くぞ!」

 

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