日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア19

お題「マイブーム」

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「えー? 普通の子だと思うけどなぁ」

 

 ソフィアは首を傾げる。

 

「頬っぺに太陽と三日月のマークがある子は普通じゃないわ」

 

 

「たしかに普通じゃないけど、何か心当りが?」

 

「実は、マセルくんやバンたちがベオグラード遺跡で遊んでいる間、空に凄い物を見つけたの」

 

「凄いもの? それって、まさか」

 

「そう、そのまさか。空に島があったの」

 

「そんなもの、どうやって見つけたの?」

 

「ここカストリーズ盗賊団の船には巨大な望遠鏡があるの。それで、おかしな雲があると思ったら、真っ白な島だったってわけ」

 

「真っ白な島? 大きさは?」

 

「大きな山が一つ分くらい。表面は平らな形っぽいけど、下からしか確認してないからよく分からない。でもかなり大きい」

 

「どこにあった?」

 

 トレジャーハンターとして、そんな遺跡を逃すわけにもいかない。

 

「このトキョー島の中心にある海のど真ん中の上空。雲のずっと上で雲に紛れてた。望遠鏡でよく見なかったら発見はできなかったわね」

 

「おかしいな。そんなところにあったらさすがに誰かが気づいているはずだろう?」

 

「確かにその通り。おそらく何かが引き金になって出現したと考えられる。つい最近ね」

 

「引き金か……そういえばあのとき」

 

 そこでマセルは、バレッタと始めて会ったときのことを思い出した。

 

 空に見えた、微かな異常。

マセルはその時の記憶を脳の隅から引っ張りだした。

 

「もしかして、ソフィアが関係するのか?」

 

「タイミング的にはピッタリだと思わない?」

 

「俺が空に異常な雰囲気を感じたのもソフィアに会った後だし、偶然にしてはできすぎか」

 

「ソフィアちゃんはジャメナン遺跡で見つけたんでしょ? ソフィアちゃんと大きく関係する島だと思う」

 

「うーん。なるほどそういうことか」

 

「どうするの? マセルくん。いや、渡り鳥」

 

 空にある島なら、前人未到のお宝が眠っていてもおかしくはない。

ソフィアについても同じことが言える。

遺跡から出現した少女など、並大抵のことではない。

 

 マセルはソフィアと空の島について、頭が痒くなるほど追求したくなったが、それでも空の上となると簡単に決断はできない。

 

 すでに海で三回は流されている。

雲の上から落ちれば、ウイントフックがあっても無事だという保証はない。

それでも、行かないわけにもいかない。

 

「ぐ、ぐぐぐ。どうしよう。参ったぞ。い、行きたいけどさ。やっぱり、空は……」

 

「空は嫌? 凄いお宝があったとしても?」

 

「う、ううう」

 

 悩みに悩み、頭をかきむしる。

行くかどうかというより、精神的に行けるかどうかの問題だ。

 

 そんなマセルの悩みを吹き飛ばすため、リンベルはある一撃を放った。

 

「マセルくん。少し話を戻すわ。訊かせたい話のことよ」

 

「空の島のことじゃないのか?」

 

ナウルのことよ」

 

 かきむしっていた手を止め、マセルは神妙な顔になる。

 

ナウルはね、いつか空にある島に行きたいって言ってたの」

 

「あ、あぁ。その話なら少しだけ聞いた」

 

「でも、ナウルは夢を語ってただけだったし、あの時はあの島のことなんて知っているはずもなかった。それでも、空に島があるなら行きたいって言ってた」

 

「……俺が代わりにナウルの夢を叶えればいいのか?」

 

「行くかどうかはマセルくんに任せる。ナウルのことがなくても、ソフィアちゃんの謎を解明するためにも行くべきだとは思うけど」

 

 「うーん」と腕を組み、マセルは立ち上がる。

 

 決心ができたわけではないが、リンベルに確認することはあった。

 

「リンベルさん。そういえば、バレッタと知り合いだったよね」

 

「そうだけど、バレッタちゃんに会ったの?」

 

 バレッタの家にあった六年前の写真。

 

 そこにはバレッタと一緒にナウルやリンベルも写っていた。

そしてバレッタはリンベルとも仲が良かったと言っていた。

 

「北のキトで偶然にもね。そこで六年前の写真を見つけた。造りかけの飛行機が写った写真だ」

 

「マセルくんは飛行機造りに関わっていなかったからバレッタちゃんと面識はなかったけど、まさか偶然会ってたとは思わなかったわ」

 

「けっきょく、あの写真にあった飛行機ってどうなったの?」

 

ナウルが死んでからも少しづつ造り続けて、今はたしか、えーと……そうだ」

 

 記憶を引っ張り出し、リンベルはポンと手を打った。

 

「そうだ。バレッタちゃんが持ってる」

 

「やっぱりな」

 

「まさか、あの飛行機で行くつもり?」

 

「その“まさか”さ。バレッタとソフィアを連れて、空の島に行く」

 

「無茶なこと言わないでよ。危険すぎるわ」

 

 マセルは口元を緩めながらウイントフックを指さした。

まるで「これがあれば大丈夫」とでも言うように。

しかし慎重なリンベルは、その意見には猛反対した。

 

「バカなこと言わないで。確かにマセルくんはベオグラード遺跡で生き残ったかもしれない。でもそれは運が良かっただけ。私たちが引き上げなければもう死んでいたのよ」

 

「それは、そうだけど」

 

「さっき言ってた中学生ってバレッタちゃんでしょ? ベオグラード遺跡に連れてったの?」

 

「いや、連れていくつもりはなかったんだが……」

 

バレッタちゃんに言われなかった? 無計画って」

 

 図星を突かれたマセルはその場で仰け反る。

 

「そ、それはそうだけど、じゃあどうやって空の島に行く?」

 

 リンベルは答えられず唇を噛む。

 

「でもバレッタちゃんを連れて行くのは反対。あの飛行機も古いからちゃんと動くかどうか」

 

バレッタが断ったら断ったでいい。無理に連れていくつもりはない。でもナウルのためにも行くべきだって言ったのはリンベルさんでしょう?」

 

 行ってほしい気持ちと行ってほしくない気持ち。

リンベルの中で相反する二つの感情がぶつかり、やがてそれは言葉として出ることはなかった。

 

「決まりだ。まずはバレッタを見つけて、飛行機を調達して、ソフィアを連れて空の島に行く。ソフィアはどうする? 無理して危険なところに連れていくつもりはないが」

 

「んー? でも、自分のことがちゃんと分かるんなら、行ってもいいかなぁ」

 

「分かった。じゃあ、助けてくれてありがとうリンベルさん。俺たちは外に出る」

 

 お礼を言い捨て、マセルはソフィアを連れて医務室を出た。

 

 だがマセルには、トレジャーハンターとしてどうしても訊かなくてはならないことがあった。

何も言えず俯くリンベルにマセルはふり返る。

 

「そういえば、その空の島には名前がないんだよね?」

 

「えぇ。まだ誰も見たことないからね」

 

「じゃあ俺が名づける。そこは今から“アルジェ遺跡”だ」

 

 

 ――ベルンサイド――。

 

 

 一方、運よく浜辺に流れ着いたベルンとバレッタアピアに発見され、家の中で休んでいた。

 

 二人は柔らかいベッドの中で、ぐっすりと寝息をたてている。

 

「う、ううん?」

 

 起きたバレッタは目を擦り、背伸びをして周囲を見渡した。

 

 四角い部屋にベッドが二つ。

隣のベッドにはベルンが眠っている。

 

「で、ここはどこ?」

 

 見知らぬ部屋。カーテンが閉じられ、シンプルなタンスが一つと扉が一つ。

 

 誘拐や監禁のような扱いではないことにほっとして、バレッタは部屋を出ることにした。

しかしそれより早く部屋に入ってきた者がいた。

ベルンとバレッタを助けたアピアだった。

 

 白いワイシャツに赤リボンという制服姿で、バレッタは少し前の高校時代を懐かしんだ。

 

「あっ、あの、起きたの?」

 

 アピアバレッタが年上だとは気づかず、ナチュラルにタメ口で話す。

 

「う、うん。なんとか、大丈夫だけど」

 

「よかった。浜辺に倒れていたからびっくりしたの。本当に無事でよかった」

 

 アピアはまるで自分のことのように喜んだ。

 

「ねぇ、ちょっと訊きたいことがあるから、下に来てくれるかな?」

 

「う、うん」

 

 バレッタアピアに事情を説明するため下の階へ下りた。

 

 純白のカーペットが敷かれた白い部屋。

暖かい雪原にでも来たかと勘違いしそうなほど白かった。

隅の大きなガラス棚には陶器のティーカップが並べられている。

その隣には、反抗するかのように真っ黒なピアノが鎮座していた。

 

「そこ、座ってて。すぐにお茶を出すから」

 

 アピアが台所の奥へ消えると、バレッタは「うん」と返事をし、白いソファーへ腰かけた。

 

 しばらくするとアピアは、トレイに湯気の立つティーカップを二つ載せて現れた。

 

「はいどうぞ、けっこう味には自信があるんだよ」

 

 テーブルに載せられたティーカップは花の香りを放っていた。

 

 普段は飲んだことのない香りに、思わずバレッタの顔が微笑みに変わる。

 

 その香りに背中を押され、勢いで一気に飲み干し、バレッタは幸福に包まれた。

 

「こ、こんなに美味しいものが存在したなんて……知らなかった」

 

「喜んでもらえてよかった。知り合いから頂いた茶葉を混ぜて作ったの。最近は紅茶の研究をするのが好きで。いいよね紅茶って」

 

 紅茶のことなど理解していないが、とりあえずバレッタは三回ほど頷いた。

 

「あ、ごめん。紅茶の話になると熱くなっちゃって」

 

「いいけど。それより、訊きたいことって?」

 

「その前にきみの名前を教えてもらってもいいかな? 名前が分からないと呼びづらいから」

 

「私はバレッタウェリントン。先に言っておくけど二十歳(ハタチ)だからねハタチ」

 

 自己紹介を聞いたアピアは急に立ち上がって口を押さえた。

 

「ご、ごめんなさい! 年下だと思って……ましたから。二十歳だったなんて」

 

「い、いくつに見えた?」

 

「え、えと。失礼ですけど、中学生、かと。敬語も使わなくてごめんなさい」

 

 いつもなら怒るところだが、そこまで申し訳なくされるとバレッタも怒りづらい。

 

「いやいや、よく間違われるから別にいいよ。敬語もいらないし。それより、あなたは?」

 

「私はアピアニコシアです。高校生になったばかりです」

 

「そっか。助けてくれてありがとうアピアちゃん」

 

「二人とも運ぶのは大変でしたけど、ちょうど両親がいないので頑張って両親の使っているベッドまで行きました。でもごめんなさい、年下だと思ってしまうなんて」

 

「もういいよ」

 

 バレッタは笑みを浮かべながら仕切りなおす。

 

「それで、訊きたいことってなに?」

 

「あの、上に寝てる人、ベルンって言うんですけど、私の友人なんです。どうしてバレッタさんはベルンと一緒にいたんですか?」

 

「え? ええと、なんでだろう」

 

 バレッタの最後の記憶はマセルに抱えられて海に飛び込んだときだ。

 

 運よく浜辺までたどり着けても、マセルと一緒なのが自然である。

水中で入れ替わったのか、一緒に倒れていたのがベルンだったのが意味不明だ。

 

「ごめん。よく分かんないや」

 

「じゃあ次の質問です。そもそも、どうして浜辺なんかにいたんですか?」

 

「ええ? それは、その。トレジャーハンターと一緒に遺跡に行ったから、かな。行くつもりはなかったんだけどね。生きて帰れただけでも吉かなぁ」

 

「すごいなぁ……私は、バレッタさんみたいに強くないから」

 

「そう? 私は強いわけではないと思うけどねぇ」

 

「いえ。二十歳ってだけで凄いですよ。憧れますから」

 

「憧れる?」

 

「はい。その、私は病気で、二十歳までは生きられないんです」 

 

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