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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア10

 

お題「自作小説」

 

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盗賊団なのだから向かうべき道は遺跡だろうと予想はできたが、具体的な情報はない。

 

「どこですか?」

 

ベオグラード遺跡って、知っているかい?」

 

「いえ」

 

「この国、プライアランドの遺跡たちの中でも最大級の大きさと危険度を誇っている遺跡だ。“ある困難”さえ潜り抜けてしまえば、入口そのものに入るのは簡単だ。だが入り口以外は海に沈んでいるから具体的な大きさは分からない。ただ、中に入った者は皆が帰らぬ人となり、並の実力では無駄死にする。外壁は黒く、ところどころ死者たちの血を吸ったように赤くなっているらしい。そう、きみがその靴で変身した姿と同じような色だね」

 

「……それで、中にはなにが? トレジャーハンターたちの骨でも拾うんですか?」

 

「並のトレジャーハンターでも進めないような難攻不落の先に、凄い物が眠っている。なんでも、無限の生命力を持つ歯車だとか。それが二つもあるらしい」

 

 と言われても、ベルンにはピンと来ない。

 

「手にした者は不老不死になれるらしいが、僕様は興味がない。人間は朽るからこそ美しい」

 

「じゃあ、死なせたくない人でもいるんですか?」

 

「いいや、言っただろう? 盗賊団はお宝を売るのがビジネスなんだ。不老不死の歯車だなんて、それこそ命を賭けても欲しい人はたくさんいる」

 

「それを、手伝えと?」

 

 バンが目を付けたのはベルン自身よりも、アスンシオンだった。

カストリーズ盗賊団の技術とアスンシオンがあれば、遺跡の最奥に到達できるとバンは踏んでいるのだ。

 

「無理にとは言わない。……が、きみの友人に欲しい人がいるのでは?」

 

「それって、まさか」

 

 ベルンには一人だけ心当りがあった。

 

 二十歳まで生きられないというソウル病を患っている、アピアのことだ。

 

「歯車は二つあるらしい。一つは僕様がお金に代える。もう一つはきみのものだ」

 

「知っているんですか」

 

アピアちゃんだっけ? いいのかなぁ、彼女は病気のせいで十代で一生を終える。もう余命は五年もないのか。可愛そうに、大人になればもっと素敵な女性になれただろうに」

 

「……なぜ、アピアのことを?」

 

「僕様は大抵のことは知っている。この島々のことは大体ね」

 

 カストリーズは東西南北どの島についても大体のことは把握している。

 

 一千万人に一人だけが発症するソウル病のアピアについても“珍しい”という理由だけで、バンが大まかな調査をしていた。

 

「どうする? 僕様が遺跡のトラップを見極め、きみはその靴で僕様と進む。そして奥にある二つの歯車を手にして帰る。きみはガールフレンドに一つを渡す。僕は稼ぐ。お互いが命を賭ければ得をする見事な話だろう?」

 

「……たしかに、そうですね」

 

「僕様が気に食わないことその三、それはハッキリしないヤツだ。ハッキリしないやつは道しるべを与える価値もない。きみのその言葉は行くという意味でいいのかな?」

 

 ベルンは迷いながらもコクりと頷く。

 

 承諾を得たバンは、五人のうち真ん中に座っているリンベルを呼んだ。

 

「リンベル、ちょっとこっちに」

 

 「はい」と返事をして、バンとベルンが立つ場所へやってきた。

 

「リンベル。ベルンくんに船内を案内してやってくれ。といっても食堂とトイレくらいしか案内するところはないかな」

 

「分かりました」

 

 リンベルはベルンの手を引き、操縦席を出た。

 

 肩にかかる程度の金のセミロングに引き締まった細身の体。

スラっとした足でジーンズを履きこなしている。

 

 アピアとは違う大人の魅力溢れる年上の女性に手を握られ、ベルンの頬が赤く染まる。

 

「私はリンベル・アルマトゥイ。よろしくね」

 

 そう――リンベルは、マセルの親友であるナウルの姉。

リンベル・アルマトゥイである。

 

 リンベルは掴んでいた手を引っ込め、代わりに握手のための手を突き出した。

ベルンの緊張していた顔が戻り、むっとした表情に切り替わる。

 

「僕は協力はしますが、盗賊団は信用しません。不老不死だって信じたわけでもないです」

 

「あら、そう。握手もしてくれないのね。でもあなたの気持ちは分かるわ。私も盗賊団なんて信用してないもの。弟のナウルの名に賭けてもね」

 

「信用していない? あなただって盗賊団の一人でしょう」

 

「そうね。でも私だって不老不死の歯車なんてものは信じていない。興味もない。あなたのガールフレンドのようにまだ生きている人間になら意味はあるけど、すでにいない人間にとっては歯車なんかより花の方が価値がある」

 

「じゃあ、あなたはどうして盗賊団なんかに?」

 

「吹っ切れたいから、かな」

 

 あまりにも小さな理由に、ベルンは肩を落とす。

 

「もっと崇高な理由かと思いました。そういう人もいるんですね」

 

「そうね。自分がバンの犯罪に加担しているのも自覚しているけど、もう、どうでもいいの」

 

 自分の思いを吐き出したリンベルは、シリアスな顔を取っ払って表情を切り替えた。

 

「じゃあ、船の案内をしましょうか。バンも言ったとおり大した設備はないんだけどね」

 

 

二章 ベオグラード

 

 

 ――マセルサイド――。

 

 車で南のミンスクまで戻ろうとしたマセルとバレッタ

だがマセルは行き先を変更した。

 

「どこに行くんですか?」

 

ベオグラード遺跡だ」

 

 キングストン連中と、カストリーズ盗賊団が向かおうとしている遺跡だ。

 

 不老不死の歯車が眠り、トレジャーハンターの間では昔から伝説となっている場所だ。

 

ベオグラード遺跡には不老不死の歯車があるらしい。で、キングストンのヤツらもそれを狙って港まで行く予定だったらしいな」

 

「ふ、不老不死って。マセルさんはそんなもの手に入れてどうするんですか?」

 

「俺か? 俺は不老不死なんて興味ないよ。俺が興味あるのは、その歯車がどんな形と色なのか、それだけよ。できれば家に飾ったりしたいけど、危なくて触りたくない」

 

 改めてトレジャーハンターは理解できない、とバレッタは首を傾げる。

 

「遺跡ってトラップがいっぱいあるんですよね? 圧倒的に危険じゃないですか?」

 

「俺をナメるなよ。渡り鳥だぞ。それにウイントフックもあるんだ。見たろこいつのパワー」

 

 バレッタは浜辺での出来事を思い出す。

 

 アームによるパンチをかわす速度。

鋼鉄のアームを一撃で切り落とした剣。

キングストン連中の乗るソフィア号を剣一本で空の彼方まで吹き飛ばす怪力――機械好きのバレッタとしては、デザインなども気になっていた。

ここでウイントフックについて訊かずにはいられない。

 

「あの、マセルさん、その靴って、いったいなんなんでしょう」

 

「ジャメナン遺跡で見つけたとしか。でも、やっぱりソフィアと関係はあると思う」

 

「もしかして、あの剣に刻まれていた模様ですか?」

 

 メットの歯車を外して出した茶色と青の剣。

そこには太陽のマーク――ソフィアの右頬にあった赤いマークと同じ――があり、同じ遺跡に存在したのも偶然ではないだろう、と推測する。

 

「さぁな……細かいことはソフィアに直接訊くしかないな。そのためにも、キングストン連中をとっちめてソフィアを助けないといけないしな」

 

「じゃあ次にすることは……」

 

ベオグラード遺跡に行こうか。……といきたいところだが、問題がある」

 

「問題?」

 

「もし船が沈んだら、俺を助けてくれ」

 

 港に到着したマセルたちは、車を停めて船を借りることにした。

 

 遺跡にはトレジャーハンターしか行かないため、個人で船を借りて行くしかない。

カナヅチ+高所恐怖症であるマセルからすれば、どんなに一級の船でも笹船と大して変わらないが。

 

「なぁバレッタ、船って沈むと思うか?」

 

「まぁ穴が開いたり壊れたりしたら沈むと思いますけど」

 

 マセルはカナヅチだということをバレッタに明かしていないが、察しはついていた。

 

 マセルはお金を出し、船を借りる。

歯車とスクリューで動く小さくて安っぽいモーターボートだったが、マセルにとっては大きくても小さくても同じようなものだ。

 

 バレッタが先に乗り込み、小刻みに震えるマセルを待っている。

 

「あのーマセルさん、乗らないんですか?」

 

「乗るよ。乗るさ。乗ってやる。乗ってやるとも」

 

 なんということか。

マセルにとって、船に乗るだけでも一世一代のアドベンチャーなのだ。

 

 慎重につま先を乗せる。

絶妙な揺れがマセルの緊張を加速させ、乗船を拒む。

 

「あーあ、嘘はつくし恩を返さないで遺跡探索になんか来るし、口も性格も悪いし、トレジャーハンターなのに水が苦手なんて、マセルさんってどーしよーもない人なんですねぇ」

 

 バレッタは目を細め、大きなため息をつく。

 

「お、お、お、オーライ。わ、わ、わ、わ、分かったよ。乗らないなんて言ってないだろ」

 

 幾度も躊躇を繰り返し、ようやっと船に乗った。

 

「じゃあマセルさん、そろそろ行きましょうか」

 

「行く? 行くって、もしかして一緒に行くつもりなのか?」

 

「いえ、中には入りませんよ。トラップで串刺しとかペチャンコになるのはイヤですから。行くのは入口あたりまでです。船を放置して流されていったらゴミになっちゃうじゃないですか」

 

「なるほど、船を戻す役か」

 

「圧倒的にエコな女子ですから私」

 

 マセルは船のエンジンを作動させ、ベオグラード遺跡へ向かうことに。

 

 ベオグラード遺跡は島々よりも外側にあるため、かなりの距離がある。

安っぽいモーターボートでは、二時間はかかってしまうだろう。

 

 だが問題なのはベオグラード遺跡の周辺だ。

 

 “ある困難”さえ潜り抜けてベオグラード遺跡の前に辿り着いてしまえば、素人でも中に入ることができる。

しかし、遺跡の中に入って生きて脱出した者はいない。

マセルも、ウイントフックを手に入れなければ近づこうとも思わなかった。

 

「そうか。じゃあ一緒に来い。ただし遺跡をナメるな。入口も甘く見るな」

 

「波で船が転覆したり?」

 

「そういう不吉なことを言うんじゃないよ」

 

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