日々を駆け巡るoyayubiSANのブログだよ。

日々を駆け巡るoyayubiSANのブログ

親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

水曜ラノベ 技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア5

 

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――マセルサイド――。

 

 波の音――。ザラザラした砂の感触。

 

 無残にも海に落っこち、カナヅチらしく流されて運よく浜辺に辿り着いたのは、トレジャーハンターのマセルである。

 

 薄く目を開き、太陽を取り込む。

なんとかメガネは無事だった。

 

「マジかよ……」

 

 海へ落ちる直前までは、天国へ飛び上がるか、海の底から地獄に直行かどちらかを心配していたものの、中間であるどこかの浜辺に流れついた。

 

「まさか、海に落ちて助かるとはな」

 

 きょろきょろとあたりを見回す。

見えるのは浜辺と植物。

それだけでは東西南北どの島なのか判別できない。

背後にはさっき落ちてきたジャメナン遺跡がある。

 

 しかしその上には、なにか違和感。

 

 マセルは空にある微かな異常が気になっていた。

いつもと少し違うような、そんな感覚。

 

「いや気のせいだ」

 

 マセルは疲れのせいだと決めて空にある違和感を振り払った――。

 

「しょうがない。少し歩くとするか」

 

 海水でぐちょぐちょな靴――ウイントフック――を箱に戻し、浜辺から離れた。

 

 マセルの目の前には横一本に道路が伸び、正面にはレンガ造りの小さな建物があって、周囲にはいくつかの木が適当に生えていた。

建物にはガレージのようなシャッターが付けられ、車かなにかが収容されているのだろう、と推測する。

 

 周囲に人の影はなく、いるのは空を渡るカモメらしき鳥たち。

道路を進んで町に出ればもう少し人はいるのだろうが、そこまで進む気力はない。

 

「とりあえず、ここでいいか」

 

 妥協し、建物の扉をノックする。

すると、住人らしき少女が扉を開いた。

 

「はい? どなたですか?」

 

 まん丸と大きな瞳。

低い身長を誤魔化すための大きな帽子が黒髪に乗っかっている。

クロスした二本のベルトに歯車型のバックルは、なぜだか都会っぽさを漂わせていた。

水色のジャケットを羽織り、黒いショートパンツの下には黒いタイツでキめ、大人っぽく見せようとする努力が伺える。

 

「女子中学生?」

 

 マセルはつい思ったことを口にした。

 

「二十歳(ハタチ)です! それより、あなた誰ですか?」

 

「オーライ、俺はマセル・エレバン遺跡から飛び出して海に落ちてとっても楽しい目にあったトレジャーハンターだ。よろしくな」

 

 まだ海水でベタベタする握手を突き出すと、少女は一歩後退して警戒する。

 

「本当にトレジャーハンター? まぁいいですけど。具体的にどう助けてほしいんです?」

 

「服を乾かして、できれば風呂に入って、遺跡で見つけた妙な靴を調べて、南のミンスクのアジトに戻って次の遺跡にアタックする」

 

ミンスク? だったら正反対じゃないですか? ここは北のキトですけど」

 

「オーライ……マジかよ」

 

 東がアクラ、西がチュニス、南がミンスク、北がキト。

 

 橋を渡れば徒歩でチュニスかアクラに行けないこともないが、その頃には太陽は姿を消しているだろう。

 

「まぁいい。それより、頼むから助けてくれ」

 

「って言われても、うら若き乙女の家に初対面の男性(オトコ)を入れるのはちょっと」

 

「そうだな、仕方ないな。まだ中学生だもんな」

 

「二十歳(ハタチ)ですってば!」

 

「仕方ない。じゃあこうしよう。俺のジャケットの胸元を見てくれ」

 

「へっ?」

 

 少女は胸元を見る。金の歯車のバッチが輝いていた。

 

「いつだったか、遺跡で見つけた。助けてくれたらこいつをプレゼントしてやる。特別だぞ」

 

「それって、もしかして圧倒的なお値打ちで?」

 

 少女の目の色が変わる。

 

「まぁ遺跡のお宝は売ることはできないが、もしお金に換算するんだとしたら、ざっと五十万エンはいくだろうな」

 

 ちなみに五十万エンとは、宝くじでも結構な額である。

 

 少女は数秒だけ迷い、決断した。

 

「……部屋はあんまり荒らさないでくださいよ」

 

 マセルはバッチを外して指ではじき、少女の家に入った――そこで、マセルはふり返って少女を指さした。

 

「ところでお前、名前はなんという?」

 

「バ、バレッタウェリントンです」

 

 歯車のバッチをうっとり眺めながらバレッタは言う。

お宝の魔力に魅入られて命を落とす人間も、こういう目をしている。

 

「そうか」

 

 バレッタの部屋の中は非常に散らかっていた。

 

 棚には歯車仕掛けの妙な機械が乱雑に置かれ“あらゆる衣服”が適当に干されていた。

床にもテーブルの上にも下にも、洗濯機ほどの大きな機械から炊飯器ほどの機械まで、マセルの理解の範疇を越えた機械が散らばっている。

 

「これ、お前が全部作ったのか?」

 

「そうですけど」

 

「じゃあ、ちょっと見てほしいものがあるんだが」

 

 箱から例の靴、ウイントフックを取り出す。

 

「なぁバレッタ、この靴、なにか知らないか? ウイントフックっていうらしいんだが」

 

「ウイントフック……」

 

 顎に手をあて、バレッタは「うーん」と唸る。

 

「ちょっと聞いたことないですね。ごめんなさい」

 

「そうか。まぁここに置いとくから好きに調べてくれ」

 

 テーブルの上の機械の上の機械の上に、ウイントフックの箱が乗っけられた。

 

 マセルはキョロキョロと辺りを見回す。

 

「それより、風呂はどこだ」

 

「え? えーと、そこ入って右です。ほとんど掃除してないですけど」

 

 右――というものがマセルの目に入らず、壁にあった冷蔵庫らしき機械の箱をずらしてようやく扉を見つけた。

まるで隠し扉だ。

 

「じゃあ俺はここで脱ぐ」

 

「はい!?」

 

「言っただろ。服を乾かすんだ。そこの壁から伸びてる変なロープに干す。いいだろ」

 

「じゃ、じゃあ後ろ向いてますから、圧倒的に急いでください」

 

「はいはい」

 

 マセルはベタベタで脱ぎにくくなった服を脱ぎ、壁から伸びているロープに服をかける。

 

「ん? なんだこれ」

 

 全てを脱ぎ終わったところで、マセルはふと床に落ちていた一枚の写真を手に取った。

 

 歯車がむき出しの小型プロペラ飛行機を背景に、大勢の人間が映った写真。

その中には、今は亡きマセルの友人であるナウル・アルマトゥイと、帽子を被っていないバレッタが含まれていた。

 

「あの中学生……あいつの知り合いだったのか。これ、ナウルが生きている頃に撮った写真か? いつのだろう」

 

 バレッタの容姿もそう変化がなかったため、古い写真ではないのか、それとも今も昔もバレッタの容姿に変化が見られないのか、どちらにせよ正確なことは分からない。

 

「なぁバレッ――」

 

 重要なことなのですぐに質問しようとしたが、質問は中断された。

 

「あの! まだですか? あの、早くしてほしいんですけど」

 

「あぁ、今から入るよ」

 

 とりあえず写真はその辺の機械の上に置いておき、マセルは風呂に入ることにした。

 

 その頃、バレッタは外でウイントフックを調べていた。と言っても、分解や改造などはできないため、ただ観察するだけである。

 

「なにもないなぁ。普通の靴っぽいし」

 

 ボタンを押してみても、それっぽい反応はない。

靴を履こうにも、サイズが合わない。

 

 やっぱり中で調べたほうが確実かもしれない。

そう思い、扉に手をかけた瞬間――。

 

「おほほほほ! お嬢さん、その靴をこっちに渡しなさいな!」

 バレッタの背後に、さきほどと同じ機械に乗ったキングストン連中が現れた。

 

「だ、だれ!?」

 

「名乗る必要は、ない! そーれスリブ、ガワン、あの小娘から靴を奪いなさいな!」

 

「「承知でガッテン!」」

 

 あまりに唐突な事態に、バレッタは状況をうまく呑み込めない。

 

 性格の曲がった突然の来訪者に渡された靴を狙って、マセルを上回る妙な三人組に狙われてしまう散々な今日。

 

 体中のエネルギーを脳に総動員させ、小さな頭を回転させる。

 

 ここで、バレッタに一つの作戦が浮かび上がった。

 

 ――ベルンサイド――。

 

 そんなバレッタのピンチはいったん置いておき、ところ変わって東のアクラ。

 

 マセルが海に落っことした靴の箱――アスンシオン――を東のアクラの浜辺で拾ったベルン・ロゾーのその後である。

 

 高校入学祝いに買ってもらった靴を、イジめっ子のリーダーであるスリジャに奪われ“いつものところ”へ三万エンを持って来いと命令されてしまった。

 

 命令通りにお金を渡すつもりもなく、用意もできない。嫌なことを忘れるために向かった浜辺で拾った靴の力を開放させ、偶然にも赤と黒の鎧、アスンシオンを装着することに。

 

 それは、常人を遥かに上回るパワーを誇っていた。

石を握って粉々にできるほどのパワーを使い、三人組への復讐を決意する――。

 

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