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親指に関すること(関しないことも)を追求するブログ。親指はあんまり出ません。 毎週日曜に更新!

ブログ小説(4)技巧鎧ミスティ・ミラージュ ギア

 

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 どこからともなく鎧などが現れ、サイズもピッタリに身に纏うことができた。

これは、どんな技術を用いても成しえないことだ。

 

 もう一度箱を開き、アスンシオンを取り出す。

 

 ゴクリ。

唾を飲み込み、足を入れる。

右のボタンを押すと、声は鳴らなかったが、また全身を鎧が覆った。

 

「やっぱりそうだ。凄い力を感じる」

 

 試しに近くにあった手のひらサイズの石を手に取る。

もし握っただけで粉々にできれば、アスンシオンは本物だ。

 

 思いのほか、あっさりだった。

多少の力を加えただけで、石は粉々にはじけ飛んだ。

 

「……本物だ。これが、あれば……」

 

 アスンシオンがあれば、スリジャたちを三人纏めて相手にしても勝機がある。

もう、アピアに余計に心配されなくて済む。

もう、大事な靴を奪われることなく、スリジャたちに怯えることもなく平穏な日々を過ごせる。

 

「やってやる……! こいつで、あいつらを、叩きのめしてやる!」

 

 ――マセルサイド――。

 一方、窮地に立たされたマセルは。

 

「ど、どうするっ!? どうすりゃいいんだ俺は!」

 

 少女と穴から落ちて泳げもしない海を渡るか。

見知らぬ少女を守りつつ二人を倒すか。

 カバンの中には、お宝とは縁遠いような靴があった。

もしお宝だとすれば、そして凄まじい力が隠されているのだとすれば、イチかバチかそれに賭けてみるのもトレジャーハンターとしてはアリかもしれない。

 

 マセルはそう考え、海を泳ぐよりも“勘”を頼ることを選んだ。

 

 カバンから、例の靴を取り出す。

 

「く、靴? なんで靴だっちょ?」

 

「さぁな。俺には分からんよ。俺には価値が理解できないからな。お前らのリーダーに任せる。そうだ、一応安全だってことを証明するために履いてやるよ」

 

 マセルは二人の様子を窺いながら、靴に足を入れた。

 

 ――で、これからどうすれば?

 

 履いてから何をするべきかまでは、計算していなかった。

 

ほ、ほら。安全だろ」

 

 誤魔化しつつも靴を調べる。

よく見ると右の踝(くるぶし)あたりにボタンが付いている。

 

 マセルはそのボタンに触れようと手を伸ばす――。

 

「待つですぜ! お前、なにかするつもりですぜ!?」

 

 異変に気付いたガワンが、マセルに飛びついた。

釣られてスリブも飛びつく。

 

 作戦が見破られたマセルは巧みに回避するものの、すぐさま二人の標的は少女へ移った。

 

 不気味な笑みを浮かべ、二人は少女の腕を掴む。

絵面だけ見れば犯罪そのものだ。

 

「いっひひひ、捕まえたですぜぇ」

 

「靴は後で頂くっちょ」

 

 少女はこれといって抵抗はせず、表情も出していない。まるで感情がないようだ。

 

「動くなっちょ。その靴に触れたら、このガキんちょは海の底に落ちることになるっちょ!」

 

 壁に空いた大穴から海に落ちれば、連中はともかく、少女は無事では済まないだろう。

 

「お、お前ら、その子がお宝とか言ってたじゃないか! 命はどうでもいいのか!」

 

「どれくらいケガをするかは保障はしないですぜな!」

 

「でもこいつはお宝だっちょ、なるべくなら傷つけたくはないっちょ!」

 

「どっちだよお前ら! 相当なバカだが卑怯な連中だ……」

 

 状況は打破できない……が、さらに拍車をかける事態が発生してしまう。

 

「おほほほほ! 水はチャージ完了、今度こそ追い詰めたわよマセル坊や!」

 

 機械に搭乗したバンダルが現れた。もう力づくで突破するのも厳しい状況だ。

 

「その笑い方、やめとけよ。ババ臭いぞお前」

 

「黙らっしゃいな! まだ十代の前半だわ!」

 

「リーダー! ホントは二十代の後半だってことは黙っておきますぜ!」

 

「黙れバカ! 二十代前半じゃい!」

 

 キングストン連中のコントに苦笑いしつつも、マセルは諦めずに作戦を練っていた。

 

 靴のボタンに触れれば、少女は海へドボンされる。

 

 靴の凄まじい力――未知数だが――それさえ解放できれば勝機はあるだろう。

が、少女が人質になっている以上は失敗は許されない。

ならば、相手に隙を作るしかない。

 

「おいバンダル、そーいやお前、なんかこの前より太ったんじゃないか? パンケーキの食いすぎか? それとも体がパンケーキで出来てるのか?」

 

 マセルの単純な挑発によって、バンダルの怒りの導火線に火が点いた。

 

「な、ななな――」

 

「ホラ、来いよ。その自慢の機械(おもちゃ)で、俺を倒してみな」

 

「ななななな! なぜパンケーキのヤケ食いのことをぉぉ!」

 

仕掛けた挑発に乗った……というより乗りこなしたバンダルは、機械のボディに収納されていた腕を出現させた。

 

 長く伸びる細い腕。

ドラム缶くらいなら余裕で掴めるサイズの五本指のアーム。

その指で握りこぶしを作り、真上からマセルを殴りつけた。

 

「おっと!」

 

 素早い身のこなしで垂直にジャンプし、見事にアームの上に乗っかる。

 

 アームの上でしゃがんだマセルは、着地と同時に右の靴に触れていた。

 

【ウイントフック キドウ キドウシャ カクニン】

【ウイントフック キドウ キドウシャ カクニン】

【ウイントフック キドウ キドウシャ カクニン】

 

 靴から謎の男の声が響き軽く動揺する。

しかし引き下がるわけにもいかない。

 

 マセルはバンダルに背を向け、少女に向かって一直線に飛んだ。

少女を抱きかかえて、あとはもうどうにでもなれ。

一緒に海へドボンだ。

 

「「「逃げたっ!」」」

 

 キングストン連中が目を丸くし、口をあんぐり開く。

豆鉄砲で撃ち抜かれたハトの状態だ。

 

 要するに、以外すぎる行動に驚いたのである。

 

「俺は泳げねぇ! けど、この変な靴のパワーに頼ってやる!」

 

 すでに遺跡からは飛び出し、マセルと少女は落下している。

だが高所恐怖症のマセルは落下中にもかかわらず失神寸前だ。

 

「あぁあぁぁあぁぁああぁああああああ!!!」

 

 なんとかしろ、なんとかしろ、なんとかしろ、変な靴!

 

 必死の願いは虚しく届かず、代わりにバンダルが上からアームを伸ばしてきた。

 

 落下中に少女を奪い取る算段だ。

だが失神寸前のマセルに少女を守る曲芸はできない。

 

 腕が迫る。

五本指のアームが開き、高速でマセルたちを狙う。

 

「も、もうダメだぁ……」

 

 失神五秒前。

不意に、少女が口を開く。

 

「ソフィア」

 

「あ?」

 

 微かに、マセルの耳に声が届く。

 

「名前は、ソフィア」

 

 その自己紹介を合図にしたのか否か定かではないが、マセルの足を始点に全身を鎧のようなものが覆い始めた。

 

 指先から肘にかけて、茶と青のツートンカラーの手袋。腰までは青いラインの入ったウェットスーツのような茶色いスーツ。

 

ヘソの下あたりには青い宝石が光り、胸は青を基調として茶色いラインの入ったプロテクターが付けられていた。

 

 極め付けに、頭には全体を覆うヘルメットがある。

頭の形に合わせた茶色いメットで、口元は銀、鼻先から後頭部にかけて青い一本のツノが付けられていた。

メットの左右には、ベルンと同じく半分に切った茶色い歯車。

 

 まさにベルンと同じ状況である。

 

 急にコスプレ衣装のようなものを身にまとい、さすがのマセルも驚きを隠せない。

 

 全身にパワーがみなぎる。

起死回生のチャンスだ。

マセルは心の中でガッツポーズを取る。

それでも容赦なくバンダルの腕は伸び続け、少女に迫る。

 

「こいつで、こいつでこの子を守る! ソフィアを! うぉぉぉぉおおお!」

 

 気合の入った雄たけびを残し、マセルは落下しながら失神した。

むしろ気合を入れたからこそ、マセルは限界に達して失神してしまった。

 

 ソフィアはバンダルの腕に捕らえられ、マセルとは正反対に徐々に高度を上げていく。

 

 糸の切れた人形のように、マセルは真っ逆さまに深い海へ消えていった……。

 

 

 さて、ここでひとまず世界観の説明をしておきます。

面倒だっていう方は、無視しても問題はありませんよ。

 

 まずこの国のことをプライアランドと言い、大きく分けて四つの地域に分かれています。

 

 東がアクラ、西がチュニス、南がミンスク、北がキトです。

全部まとめてトキョー島という名前になっています。

 

 それらはそれぞれ二本の大きな橋で繋がっていて、中心には海があり、トレジャーハンターがウズウズするような遺跡がたくさん存在します。

島の外側にも海の中にも島の上にも遺跡はたくさんあります。

 

 まぁほとんどは古代の人が仕掛けたトラップだらけで危ないんですけどね。

 

 次に技術に関してです。

火や光や電気は存在していますが、火力や工学や電気技術といった類の技術はあまり発達していません。

が、車や飛行機やカメラや携帯は普通に存在します。

 

 じゃあ、それらはどうやって動かすのか。

それはズバリ、水をエネルギーにしています。

 

 液晶だとか電波なんかは電気とかを使っているらしいですが、電池やバッテリーは水を利用し、乗り物にも水を入れて動かすのです。

おかげで悪いガスが出ることなく、海に変なオイルが漏れることもありません。

 

 建物などに関しては、現代ヨーロッパあたりをイメージしてくれたらいいと思います。

 

 あ、最後になりますが、トレジャーハンターに関してです。

 ハッキリ言って泥棒です。

狙いが人の物か、遺跡の中か、が違うだけで。

遺跡は侵入するだけでも危ないですし、お宝は手に入れたとしてもお金には代えられないらしいのです。

どれだけ値打ちがあっても法律で禁止されていて、合法的には裁けないようになっています。

 

 でも裏でお宝を流す組織もいるようで……。

 

 美術館とかお金持ちのマニアとかに依頼されれば、お宝を持ってきた報酬を出すこともあるそうですが、それはあくまで“依頼の報酬”なのでギリセーフらしいです。

それにもいろいろな面倒な手続きが必要みたいですけどね。

 

 とまぁ大まかに説明はしておきましたが、どうでしょうか?

街並みもなかなか綺麗で空気も美味しくていいところだと思います。

 

 ……あ、そろそろ長くなってきたのでヤメにしましょうか。

 

 え? 私が誰だって? しがない地の文です。

忘れてください。

 

さて続きは、海に落ちたカナヅチのマセルがどうなったのか・・・。

 

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